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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

スプートニクの恋人

2012-10-05 19:26:37 | 村上春樹
村上春樹 1999年 講談社
ひさしぶりに読み返した。どんな物語だったか、まったく忘れてた。
語り部は「ぼく」だけど、二人の女性「すみれ」と「ミュウ」が主人公だと言っていいんぢゃないかと。
「ぼく」の友達で、作家志望のすみれと、すみれより17歳年上でワインとかの貿易をとりあつかっているミュウ。
『ノルウェイの森』の直子とレイコさんを思い起こしちゃったけど。
すみれとミュウが初めて会ったとき、ミュウがジャック・ケルアックって作家なんかを指す「ビートニク」って言葉と間違って、「スプートニク」という人工衛星の名前を挙げちゃったのが、タイトルの由来になる。
(ジャック・ケルアックの「路上」=「オン・ザ・ロード」って代表作らしいけど、私は読んだことがない。)
でも、ただの言葉遊びぢゃなくて、人工衛星ってのは、孤独で、(地球のまわりを回ってて)すれ違っては別れていく、人々の姿の象徴みたいに思えば思える、という物語の中心ともつながってる。
まあ、難しいテーマはどうでもいいとして、読んでて心地よく進んでいけるのは、あいかわらず巧みな比喩的表現が散りばめられてるからだなー、と今回は思った。
たとえば、
>そして微妙な間をおいた。ペテルスブルグ行きの汽車がやってくる前に、年老いた踏み切り番が踏切をかたことと閉めるみたいに。
とか、
>それから一ヵ月ばかり、ふさふさした尻尾を切り取られた動物みたいに、彼女は精神のバランス(略)を失っていた。
とか、
>しかし、その響きは顔のない水夫が夜の海に沈んだ碇をゆっくりとたぐりよせるように、徐々に、しかし確実にぼくを覚醒させた。
とか、長くて、ほかの物語のひとつやふたつ隠れていそうなくらい、イメージをわかせるやつ。
コメント
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