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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

不運のすすめ

2013-02-23 20:53:00 | 読んだ本
米長邦雄 2006年 角川書店・角川oneテーマ21
この新書での著者の肩書は日本将棋連盟会長になっている。現役の棋士ぢゃなく、引退後、連盟の会長になってから書かれた本。
っていうか、毎日新聞との名人戦の契約を打ち切るといって大騒ぎになった時期だあね。
結果は毎日と朝日の共催になったが。騒動の内幕を知りたいひとが多いときに出版するのがビジネスってもんだ。
それはそうと、前の著書を何度も読み返して愛読してた私なんかには、以前触れたネタの繰り返しみたいな部分も確かにあるんだが、まあだからって退屈なわけでもない。
タイトル“不運のすすめ”ってのは、べつに自虐的になれって言ってるわけぢゃなく、「不運は、幸運と表裏一体の関係にある。」って信念による。
負けたあとにどうするか、不運の渦中でどのように動くか、ってあたりがホントのテーマ。
だいたい、勝ち・負けにしたって、最近の日本でそれを分けてるのはおカネだけだってことは変ぢゃないかとか、そのへんから問題提起してんのがいいですね。
>今、巷にあふれている「勝ち・負け」のスケールは、自分ではなく他人が決めたものである。受動的な基準にばかり反応し、自らの価値観に基づいた能動的な幸福が軽視されている。
なんて一節があるんだから、“不運”についても(たとえばただ貧乏してるからってんぢゃなくて)自分自身で判断しろってことだ。
まあ、そのへん、いままでの著書にもあった勝負哲学が語られてるのはいつものとおり。
目新しいとこで、おもしろいのが、自身のホームページの掲示板が荒れたときの対処法。
>管理者である私は実在する人間であり、誹謗中傷してくるほうはデジタルの匿名性に隠れた、いわば“幽霊”にすぎない。実在者が幽霊に負けるわけにはいかない、と私は考えた。
と、出発点は、やっぱ「勝負」なんだけど。
で、その退治法は、逃げないで、実際に会って話をすることだという。
>幽霊たちは、ネット上でそれなりに注目を浴びたりしていても、しょせんは姿が見えず、地に足をつけた存在ではない。だからいつも、匿名から実名に、幽霊から実在になりたいと思っている。
>そこで、こちらのほうから「お目にかかりたい」と切り出すのである。
>「あなたが正体を明かせば、今までのことは全部なしにします。そして、私がビール付きで食事をおごりましょう。どうです、会いませんか?」(略)すると、まず八割は出てくる。(略)それからは、その幽霊は人間になり、私の友達になる。
だそうで。なるほどねえ。
57歳からホームページを開設したんだけど、トラブルへの解決法が若いときからネットの海にいる人とは、全然違う味がある。やっぱ元々の人間の器というか勝負術が違うんだな、これが。
あと、この本は引退して、六十歳過ぎてから書かれたんで、晩年の生き方についても触れられてるんだけど。
今回気になったのは、人生の指南書としての宮本武蔵の『五輪書』に関する次のような一節。
>『五輪書』は、三十歳前に読んでもなかなか理解できない。しかし、難解だけれど若いうちに読んでおく必要はある。やがて五十歳、六十歳になった時に、武蔵はこういうことを言っていたのか、とわかってくるからである。
うーむ、読んだことないけど、そろそろ一度読んでみるかあ。
コメント
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