many books 参考文献

好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

ゴングまであと30秒

2014-07-24 22:29:25 | 読んだ本
高橋秀実 2013年 草思社文庫版
(著者名はホントは「」の字なんだけど、環境依存文字なので、「高」つかってます。)
著者の書いたものは「からくり民主主義」ひとつしか読んだことなかったんだけど、たいそう面白かったので、この文庫を書店で見かけたとき、ふらふらと買った。
ノンフィクションだそうで。
え?ノンフィクションって、事実にもとづくってことでしょ、おもしろすぎるぞ、これ。
川崎市高津区にあるボクシングジムで、トレーナーをしてたときに見聞きした話から構成されてる。
しかし、妙なボクサーばかりだ、ふつうにもってるボクシングのフィクションの印象からは程遠い内容。
まあ、出てくるプロといっても、みんな四回戦ボーイだし、大工とか貯水槽清掃人とか郵便配達とか、生活のための職業はほかにあるし。
プロテストまでいかない練習生たちは、もっとボクシングに対しての厳しさのようなものが欠けてるし。
拳の握りが弱くて、芯のないパンチは「ヤカンのよう」だと言われたり、「しだれ柳に触れたよう」だと言われたり、手首が弱くてヒットしないパンチは「粘土のように当たるとぐにゃりと曲がる」と言われたり、とにかく弱そうなひとばっかり。
防御にまわって相手のパンチをもらったときだって、とにかく腰が引けてるから、そのさまは、「一発でもパンチをもらうと呉服屋の若旦那のように両手を前に差し出して腰をさらに深く引く」とか、「一見気弱そうに見えてお本当に気弱である」とか、遠慮なく弱弱しく描かれてる。
そんな会員ばかりだから、「私の見たかぎり、ボクシングを志す若者はほとんどが運動音痴である」なんて断言しちゃってるんだけど、ジムに通うのをやめられちゃっても困るんで、なだめたりすかしたりするし、新しい入会希望者はおだてたりする。
コメント
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