
本書は、森さんの最後の本になったのだろうか。
震災後、思いついて出版社に執筆を申し出たという。
森さんの古代史の中でも、読みやすく、雑誌に連載したそうだから、一話一話の長さも手頃。
最初の方は、半分神話の世界の人を取り扱っているので、ちょっとふわふわした感じもあるが、最後の方は、記紀で深く語られている部分で、古墳発掘の経験も活かして、森さんならではの世界を見事に描いている。
磐井の乱を敗者の側から見ると、中央の乱暴に抵抗した地域の王という姿になる。森さんは、その乱という呼び方を止めさせたが、地元から、たいへん感謝されたそうだ。
記紀は、勝者側が書いたものだから、歴史学者は、それを、鵜呑みにするのではなく、その辺、森さんを見習うべきだろう。
ぼくという言葉がたくさん出てくるのも森さんらしい。
亡くなられる間際まで、少年らしい好奇心を持ち続け、執筆も続けられた。
独自の考えもそこかしこに散りばめ、森さんらしい書になっている。
古代史に興味のある人に、幅広く、お勧めできる。