稼プロの関係者の皆様。18期の市原です。
18期の一年も終わろうとしています。どこかで調査を一度テーマに、と考えていたため、今回のテーマは「調査」です。
調査設計は、対象者、手法、内容の3つの要素から成ります。ここから対象者についてご紹介します。
どのような調査でも、何を聞くのか?の内容よりも、誰に聞くのか?が重要です。適切な相手から話が聞けなければ、望む情報は得られません。適切な対象者以外から得られた回答は、有意でないばかりか混乱も生みます。調査設計は、この誰に聞くのかから始まります。
対象者の選定では、考える視点は三つです。
商品開発を例にすると、対象者はその商品のターゲット層ということになります。一つ目は、この「ターゲットの明確化」です。男性や女性、子育て世帯といった属性、ビール好き、ウィスキー好きなどの嗜好性など、どのような人にアプローチしたいのか、です。明確にするからこそ、ターゲットのニーズのヒントが得られるのです。
次の視点は、そのターゲットへの「アクセスのしやすさ(招集のしやすさ)」です。性年代などのデモグラはわかりやすいですし、身体的な特徴として左利きも、10%程度出現すると言われています。このような条件であれば、周りの人に声をかければ、対象者は見つかります。では、LGBTの方に話を聞きたいとき、周囲に声掛けをしたらどうでしょうか。恐らく対象者は現れません。カミングアウトをしている方自体が少数派です。このように公にしづらいものは、招集方法の検討が必要です。そもそも価値観や性格、新しいものが好きな人や明るい人などは、具体的な定義がしづらいものもあり、それらはアクセスが難しいといえます。
最後は、「聞くの順序」です。上記は生活者に直接聞く想定の二つ。しかし、生活者に直接聞くだけが調査ではありません。商品の改良のヒントを知りたいとき、消費者団体へのヒアリングで代替できるかもしれません。新商品のアイディアが欲しいなら、メディア編集長へのヒアリングや、研究論文の探索して研究機関に問い合わせても良い。生活者に聞くのは、仮説を作った後です。ヘンリーフォードは「顧客に望むものを聞いていたら、『もっと速い馬が欲しい』と答えただろう。」と言ったように、生活者がイノベーションを予見することは、恐らくないでしょう。もちろん、課題につながるヒントは隠れています。ただし、そのヒントを解釈する目が調査側に備わっていなければ、多くは見逃されてしまいます。そのため、情報が集まり、その解釈を考えている専門家へのアプローチは当然に効率的なのです。
調査周りの面白い話は、いろいろあります。手法なら、生理反応などを使って人々のバイアスをあぶり出すものや脳波の活用など。内容なら、設問順序等と回答時間の関係や回答傾向の国際比較など。他には生活者の行動分析とその限界など。いずれどこかでご紹介の機会があると考え、今回はここまでとさせていただきます。
調査設計でお困りのことがあればご相談ください。