CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】爆弾

2022-08-03 21:03:31 | 読書感想文とか読み物レビウー
爆弾  作:呉勝浩

連続爆破事件を描いた作品
個人的には、受け入れがたいというか、そうなってしまってはいけないだろうと
ある種のパニック映画的なものを感じたんだが、これまたそのスリルというか
こんな物語的な、劇場事件が起きてしまうなんてと、
当然小説だからそれでいいんだが、現実だったらたまらんなと思いつつ
その面白さに引き込まれて読んでしまったのでありました
妙な謎解きと、様々に見え隠れ、いや、隠れていないが
立ち上るかのような傲慢さというものが、
敵味方というか、誰彼かまわずにじみでてくるのが
最高にいやらしくて、すごく神経を逆なでしてきて面白かった
嫌すぎるのにやめられない
私にとっては、これがイヤミスだと思ったりしたのである
多分、イヤミスってこういうのじゃないんだろうけどもな

警察を小ばかにした容疑者が、
担当刑事と言葉遊びをして、その言葉遊びの中に爆弾の謎が仕掛けられていてと
そういう謎解きをさせられる、ちょっとしたゲームみたいな話なんだが、
そのゲームをしかけるということの傲慢さ、
そしてそれをやる男の周りを見下しているという様子
それにイライラしながら、それに翻弄されたり、そうではなかったりという刑事、
なによりも、そこにふざけるなと怒りや感情を向けてしまうこと
それが、ある種の敗北のような感じにというやるせなさというか
無敵のそれに対峙するむなしさみたいなのを感じるんだが
事件をなんとか解かなくては
なんなら、それによって、このむかつく男をへこましてくれと
そういう歪んだ願望をもってしまう、持たされてしまうというのがまた
なんとも、言葉遊びの極致というか
それで勝ち負けとなる、実にくだらないそれが
面白くて仕方なかったのでありました

事件の概要もかなり面白くて、
その本当が、なるほどとわかるあたりもかなり楽しいし
虚しさとか、色々とごたまぜになっていく、
結局犯人の目的、その本質的な傲慢さと憎しみみたいなものが
ある種報われてしまったのか、そうではなかったのか
そのあたりに決着をつけていないまま
誰も彼もが、結局、自分のための嘘だったりつくろいだったり、
そして善悪なんて、その範囲が手近なそれでしかないという
露骨な描き方を強烈に叩き込んでくるんだが
それもまた、露悪をグロテスクに見せているだけのようでもあって、
色々と、考えたことを陳腐化しようという強い意志でもないが、
なにか、誰が正しいとかそういうことじゃないといっているような
それではなく、そういうこともあれば、こういうこともあるといった
一つの答え的なものを見せないものだったと思うんだが
どうなんだろうか
かなり面白かったので、よかったと書き残しておく