CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】グリフィスの傷

2024-07-06 21:04:17 | 読書感想文とか読み物レビウー
グリフィスの傷  作:千早茜

血がキーワードなのかしらと感じつつ読んだんだが、
傷の方だったかと改めて思いなおした
観念的な血というワードが、情景や色、痛覚、ある種の象徴として
ありあり目に浮かぶように文章に練り込まれていて、とても鮮烈だった
面白いと軽々にいうことはできない、描写といえばいいのか、
言葉選びがうまく、少ないそれらが組み合わさって、
あらゆる感情をかきたてていくようで、無駄がないというか、
読んで、揺さぶられる感情を知覚するに、読むことで傷つけられているのかとも
思ったりしてしまう読書になった、気取りすぎてる感想だけど、
そうさせられるような、影響力の強い文章の鋭さが満ち満ちている

傷というものを観念的にとらえてもいるけど、
変にひねっていたりせず、まっすぐに傷をとらえているといえばいいのか、
何かの抽象や比喩というのではないところがかっこよくて、
象徴とも異なる、傷と呼ぶものに意味があるような物語ばかりで
ぐいぐい読まされたのでありました

印象的だったのは、犬に噛まれた傷を持つ男と、男に傷つけられた女の話しで
この救いのなさもさることながら、だからこそ分かり合えてしまっているという
悲惨すぎて声もでないような短編が素晴らしくて、
なんというか、ため息がでるほどだった
また、傷が悪いイメージだけではなく、それによって救われたという話しも数点あり、
入れ墨と整形という悲しい救われ方もあれば、治療跡を傷跡と呼ぶといった感じの話しなんかも
透明感あふれてすばらしくて、様々な短編を楽しむことができた

比較的平易な文章なのに、とても深く面白いと思わされる
いい言葉選びと文章運びだと、読むのがすごく楽しかった