【事案】
訴外Aは、本件土地をその所有者であるXから賃借し、当該土地上に本件建物を所有していた。
Y1は、Aから本件建物を本件土地の賃借権とともに買い受け、Y2に賃借した。
しかし、Xは賃借権譲渡を承諾せず、Y1に対して建物収去と土地の明け渡しを、Y2に対して建物退去と土地の明け渡しを、Y1・Y2両名に対して不法占有の損害金の支払を求めて、訴えを提起。
第1審では、Y1・Y2はともに口頭弁論期日に出頭せず、敗訴判決を受けた。
そこで、Y1・Y2が控訴した。
控訴審では、第2回口頭弁論期日以降、本件土地の賃借権譲渡をXが承諾していたか否かが争われていた。
その後、第4回口頭弁論期日と第7回口頭弁論期日とにそれぞれ和解の勧試がなされ、口頭弁論と並行的に和解期日が指定され、和解交渉が行われたものの、それぞれ第5回口頭弁論期日および第8回口頭弁論期日までに交渉が決裂した。
そこで、第8回口頭弁論からは、上記賃借権譲渡に対するXの承認の有無をめぐって審理が続行されていたところ、第11回期日にいたって、Y1が借地借家法14条による建物買取請求権を行使する旨の主張をした。
控訴審は、この主張を却下して、同口頭弁論期日に弁論を集結して、判決を言い渡した。
Yらが上告。
(最高裁判例 昭和46年4月23日 民訴主要判例集366事件、百選4版45事件)
【考え方】
(1)本問における法的問題点。
時期に遅れた攻撃防御方法の却下が法的問題点である。
(2)(1)における問題点の指摘の根拠となる事案の事実。
控訴審において、第4回口頭弁論期日と第7回口頭弁論期日とにそれぞれ和解の勧試がなされ、口頭弁論と並行的に和解期日が指定され、和解交渉が行われたものの、それぞれ第5回口頭弁論期日および第8回口頭弁論期日までに交渉が決裂した。
ところが、第11回期日にいたって、Y1が借地借家法14条による建物買取請求権を行使する旨の主張をした事実。
(3)民事訴訟法の第何条、または、いかなる理論の適用が問題であるか。
民事訴訟法157条1項。
(4)(3)で挙げた条文のどの文言の解釈、あるいは、理論の要件が問題となっているか。
民事訴訟法157条1項で、「当事者が故意又は重大な過失により時機に後れて提出した攻撃又は防御の方法については、これにより訴訟の完結を遅延させることとなると認めたときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、却下の決定をすることができる。」
この条項に言う、三つの要件
1)時期に遅れて提出されたものであること
2)当事者の故意または重大な過失に基づくものであること
3)それの審理によって訴訟の完結が遅延すること
にあてはまるかが問題となっている。
(5)この問題について、自分と反対の結論となり得る考え方。
第11回期日にいたって、Y1が借地借家法14条による建物買取請求権を行使する旨の主張をした事実が、時期に遅れた攻撃防御方法にあたらないとする考え方。
(6)(5)の自分と反対の結論となり得る考え方の問題点。
却下されないとすれば、大幅な訴訟遅延が生じる結果となり、問題解決のための膨大な時間とコストが費やされることとなる。同時に、訴えられた側の精神的苦痛の時間も伸びることになる。
(7)この問題について自分の結論と根拠。
2度の和解の勧告がなされたが、和解の試みが打ち切られたのちも第8回以降口頭弁論期日が重ねられ、9回か10回で提出されるべきところようやく第11回にはじめて建物買取請求権行使の主張がされるにいたった。この主張は、時期に遅れて提出されたものであり、Y1において十分抗弁を提出する機会を有していたことから考えると、Y1の重大な過失により時期に遅れて提出された抗弁と言える。
そして、この抗弁が認められるとすると、買取価格の認定のための証拠調べに相当の期間を有すると考えられ、訴訟の完結が大幅に遅延することが予想される。
よって、第11回口頭弁論にY1が出した建物買取請求権行使の主張は、時期に遅れた攻撃防御方法であり、民事訴訟法157条1項に反し違法であり、却下すべきと解する。
【最高裁判決】上告棄却
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