北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

心が通う森のビジネス~共感が招く経済

2013-01-24 23:45:13 | Weblog

 

 釧路森林資源活用円卓会議シンポジウム「地域資源"森林"をまるごと利用するために!」が市内のホテルで開かれました。

 釧路は合併によって市域約1,060平方キロメートルの約75%が森林地域となりました。

 合併前の旧釧路市にはほとんど森林はなく、林務行政もなかったのですが、それが日本でも指折りの森林を有する自治体になったのです。

 森林はただ管理するだけではなく、間伐や皆伐で木を切り、製材をし、商品として流通させるという何段階もの手を経て最終消費者へと届けられます。

 しかしともすると、木を切る森林組合と、(財)の加工業者と最終的に使う建設事業者同士の連携が悪く、互いのニーズをお互いが知らないままに非効率なことがまかり通ることが多くなります。

 釧路ではそれを川上から川中、川下と川の流れに例えて、上流から下流までが同じテーブルで意見交換することで木材の適切な利用を推進しようという試みを始めましたが、それが釧路森林資源活用円卓会議というわけです。

 今日はその勉強会のシンポジウムとして、岡山県の最も北東部に位置する西粟倉(にしあわくら)村で株式会社西粟倉・森の学校代表取締役、兼株式会社トビムシ取締役の牧大介さんをお招きして、小さな村が森林を資源として地域の生業を立てる試みを紹介していただきました。

 西粟倉村は人口1,700人の小さな村で村域の95%が森林という森林しかないところ。

 ここは2004年に市町村合併をしないという選択をし、それでも生き延びてゆくための方策を真剣に考えて、村のコンセプトを「心産業(しんさんぎょう)」とし、2008年から「百年の森林構想」を立ち上げました。

 誓った言葉は、
①地域は下請けではない
②マーケティングの自前化へ
③丸太を売る村から、最終製品を売る村へ

 森林を産業の源泉と捕え、林野庁長官へ直談判して林野庁からの出向者を貸してもらい、また神奈川県を退職した女性が移住してきて、地元役場プロパー職員も加わっての3名の森林専門職員を有して森林に町の運命を託しています。

 この間、村の中に青年が一人、木工工房「木薫(もっくん)」を立ち上げて地元の木材を使った家具製造を始めます。

 この動きに呼応して若者が少しずつ村に移住してきて森林産業が始まります。

 しかし産業を起こすにも資金がありません。村の事業としてやれば、過疎債など有利な借金ができる道はありました。

 しかしそこで楽をしてしまっては、顧客とのつながりが結局できないままに売り先がなくて苦労をするだろうと予想されます。

 そこでこの村が挑戦したのは、「共有の森ファンド」という名の、小口投資をたくさん集める方法でした。

 

 
 一口5万円で最大でも十口までしか買えないファンドで、とにかく買ってくれる人をたくさん集めなくてはなりません。しかし事前の心配をよそに、実際やってみると、企業や個人などから多くの共感する出資者が現れ、約1億3千万円が集まったと言います。

 お金を出してくれたのは、ただの投資家ではありません。この運動に心底共感して、西粟倉村のファンとして応援してくれる関わりを持った人たちです。

 だから投資をした人たちも、販売先や販売ルートを探しては情報を村に寄せてくれます。

 ここには、木材を媒介として共感の心が繋がっています。

 同じ値段だったら、西粟倉の製品を使ってやろうという気持ちになります。そうやって、商品が売れてくれば仕事が忙しくなり、また新しい若者が村にやってきます。好循環は始まったばかりです。

   ◆   ◆   ◆

 

 木材は建材として使ってくれれば一番量が捌けますが、ライバルも多い世界。そこで、都会で賃貸住宅に住んでいる人が床に自前で敷き詰めて木のフローリング感覚を楽しめる床材を開発してこれを商品化しました。

 単なる床材ではなく、「西粟倉の心のこもった床材」なら買うという人がいる事実。ビジネスには共感の心が必要ということです。

 牧さんの仕事は、こうした仕事が生まれてビジネスになる仕組みづくりをプロデュースすること。

 コストカットやアイデア商品という以前に、共感してくれる人を探して巻き込むという心のビジネス。

 木材にはそうした共感を呼びやすい側面もあります。

 心の故郷で育まれた木材を活用して、経済という形で再び心の故郷に還元してやるビジネス。

 実に先駆的で独創的な取り組みです。

 釧路も、域内循環という表現で、木材も人材も地域の中で循環させて経済を呼び込もうと考えています。

 こうした楽しい事例を学びながら、釧路流の森林まるごと利用術をつくりあげたいものです。

 釧路も森林の町なのですから。
コメント (2)
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