身近な知り合いで飲もうという事になり、予定をしていたところ、新幹線フォーラムの基調講演で釧路へ来てくれた北大の田村亨先生が、「僕、夜予定ないんだよね」とのこと。
せっかく釧路へ泊ってくれるのに、だれもアテンドしないのは失礼だ、と思って、自分の予定していた飲み会へ急きょお誘い。
「いいんですか?」と言うので、「日中会っていた方たちも来ますから大丈夫ですよ。連絡もしてありますので」と飲み会に参加してもらいました。
◆ ◆ ◆
会合のお店に着くと、席が一つ空いています。
「おや、あと一人は誰ですか?」と訊くと、「急きょ、鶴居村で自然ガイドをしている安藤誠さんという方を誘いました。ご存じありませんか?」
「いえ、存じ上げません」
「そうですか、アラスカにも詳しくて、現地のガイドもしたりして、すごい方ですよ」
「へえ、楽しみです」
そうこうするうちに、安藤さんが到着。
「初めまして」
「あ、どうも初めまして」
…と挨拶をするうちに、どこかで会ったことがあるような気がしてきました。
(うーん…、あ!)
「あのう、10月上旬に阿寒のひょうたん沼へカヌーガイドをしておられませんでしたか?」
「え?」
「あのときカメムシフライの話題になって、ちょうど私が持っていたので盛り上がりましたよね」
「ああ!あのときの!ええ、覚えていますよ。なんだ、あの時の方でしたか。これは不思議な再会ですね」
周りが「ええ?どこかで会ったことがあったんですか?」と訊くので、「ええ、ひょうたん沼で釣りをしていた時に、ちょうど霧の向こうからカヌーが二艇やってきて、そこに乗っていたガイドさんが、安藤さんだったんです」
「そうでした。ちょうど季節が秋だったので、『カメムシのフライなんて言うのもあるんですよ』と言ったら、小松さんが『そうなんです、ちょうど作ったばかりのがあるんです』と言って出してくれたので、内地からのお客さんも大いに盛り上がったんです」
「そう、内地からのお客さんも楽しそうでしたよね」
「ええ、私もガイドをしていて、釣りをしている方の邪魔をしてはいけないと思うので、あまり話しかけるようなことはないのですが、あのときはバイブレーションが合うというか、『あ、この人なら話しかけても大丈夫だな』という雰囲気が伝わってきたのでつい声をかけたんです。そうしたらフライフィッシングの話を楽しそうに教えてくれたので、帰りのカヌーの中でもお客さんたちは『楽しかった』と言って、大喜びでしたよ」
「そうですか、そういっていただけると嬉しいですね。こちらも内地からのお客さんだと分かったので、この地域の楽しさをせいぜい伝えたいと思ったので」
「素晴らしい思い出になったと思いますよ。あのときはありがとうございました」
◆ ◆ ◆
なんと不思議な再会です。
帰り際に、「鶴居村で××というコテージとガイドをしている△△です」と言われたのですが、よく聞き取れなくて、(そうか、鶴居村にいるガイドの方か)とは覚えていたのですが、今日あらためてしっかりと名刺も交換できました。
人間、その瞬間を誠実に応対しておくものだ、と痛感しました。
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安藤さんは、若くして自然ガイドを職業にしようと、アラスカへ渡って実際にガイド修行をしながら腕を磨き、プロのガイドとしての道を実践している方です。
また多才で、自然ガイドかと思えば、ギター演奏家だったり、写真家、アウトドアウェアのアドバイザーなど多方面の顔を持つ方です。
今ではガイド業でも、名指しで指名してくれる外国のお客さんも増えて、認知が増してきたとのこと。
この4月には、アラスカへオーロラハンティングのツアーガイドとして行くそうですが、この場にちょうどアラスカに三年いたという方がいて、現地での話題で大いに盛り上がっていました。
今度はアラスカツアーの壮行会で飲もうか、という話も盛り上がりましたが、現場で様々な経験をしている方の話は実に魅力的です。
田村先生も「いやあ、来てよかった、楽しかった!」と喜んでくれました。よかった。
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不思議な再会でしたが、会えるべくして会えたのかなという運命的なものも感じます。
「バイブレーションが合う」というのは面白い表現ですね。今度使って見ようっと。
【安藤誠の世界】 http://bit.ly/XS4UL6