釧路新聞「巷論」欄に、安倍政権の国土強靭化路線に期待する文章を載せました。
真に力強い、強靭な国とは何か。それは施設と共にそれを使いこなせる人間の力、地域の力なのではないか、という問いかけです。
国は強くありたいもので、国民一人一人がそれを目指して力を尽くしたいものです。
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安倍政権は15日に、緊急経済対策の閣議決定を行った。
今回の緊急経済対策による補正予算は、「復興・防災対策」、「成長による富の創出」、「暮らしの安全と地域活性化」という三つの重点分野により構成されているが、重点分野の一番目に掲げられた「復興・防災対策」には、「事前防災・減災のための国土強靭(じん)化の推進、災害への対応体制の強化等」とある。
これは従来の公共事業には見られなかったテーマで、中央自動車道の笹子トンネルの事故など、老朽化するインフラ施設に対する危機感が大きく反映された結果だろうけれど、既存インフラの維持に目が向いたという意味で極めてエポックメイキングな出来事だと評価したい。
さて、では「強靭な国土」とはなにか。トンネル事故を教訓にして橋やトンネルなど老朽化した施設の更新が行われるだろうが、そのことだけにとらわれていては強靭な国土とは言えまい。ソフト面や社会を維持し保全する体制なども強靭でなくてはいけない、と思うからだ。
例えば除雪の問題だ。
かつてのように夏の間の公共事業が十分にあった時代には、業者の皆さんも、冬の間の除雪は、「ボランティアみたいなものだよ」と言ってくれていたが公共事業が全体に少なくなってきた今日、そうした余裕は失われつつある。
そしてそのことは機械力に端的に表れてきて、建設事業者に除雪機械を持つ余裕がなく、市役所でも毎年、機械力が不足する心配をしながら除雪の時期を迎えている。
技術力のある技術者と相応の機械力が地域の中にあって、地域の中で日常の仕事をこなしていればこそ、不測の事態への即応体制も取れる。
しかしそれを維持するためには、補助金のあり方も新しい施設整備だけではなく、既存施設を維持する地方の事業に使われて良いだろう。
強靭な施設とそれを維持する強靭な体制の両者が揃ってこそ初めて「強靭な国土」が完成するはずだ。