安倍総理は11日午前に、緊急経済対策に関する記者会見を行って、「長引くデフレ・円高からの脱却が決定的に重要だ」として、縮小均衡の再配分から富の創出による政策に転換を図り、強い経済を目指す強い意志を示しました。
今回の緊急経済対策としての補正予算は、三つの重点分野によって構成されています。それは、「復興・防災対策」、「成長による富の創出」、「暮らしの安全と地域活性化」の三つです。
規模の面では、補正予算による財政支出は13兆円となり、地方負担などを合わせた事業規模は20兆円を超える見込みです。
この起爆剤を好感して、円安と共に株価も急上昇し、国民の間にも気持ちの中に前向きで明るい兆しが生まれつつあるように感じます。
◆ ◆ ◆
市行政においても補正予算での事業は、本来ならば自分たちだけの税金(これを地方単独費と言います)だけでやるしかない、と覚悟していた道路の維持補修費などが交付金で半額補助されるのでありがたいお話。
おまけに、当初は予定していない財政支出であるために地方の負担を軽くするという観点で、補助の残りの半額についても後で交付税でお金が返ってくる補正予算債という制度が使えて非常に有利に事業が行えるのです。
こうした制度を十分に使って、市民生活にしっかりと還元したいものです。
◆ ◆ ◆
さて、今回の補正予算は上で述べた三つの重点分野によって構成されていますが、その一番目は「復興・防災対策」です。
目次をみると、「事前防災・減災のための国土強靭(じん)化の推進、
災害への対応体制の強化等」として、(1)命と暮らしを守るインフラ再構築(老朽化対策、事前防災・減災対策)という記載があります。
このことは、従来の公共事業にあまり見られなかったテーマです。
ともすると、二番目に上げられた「成長による富の創出」にくくられて、新しい公共インフラの完成によって経済を成長させるという視点で、繋がっていない道路整備を促進する、などというのがこれまでの補正予算に多かったやり方でした。
しかし今回は、すでにあるインフラの強化という視点がくわえられ、「国土強靭化」という単語が使われました。もちろん中央自動車道の笹子トンネルの事故など、老朽化するインフラ施設に対する危機感が大きく反映された結果です。
しかしいずれにしても、この単語が政府の中でしっかりと位置付けられたということで、今回の補正予算は将来にわたってエポックメイキングだったと記憶されることでしょう。
◆ ◆ ◆
さて、では強靭な国土とはなにか、ということに思いが至ります。
トンネル事故を教訓にして橋やトンネルなどの老朽化対策は取られるでしょうが、これがこうした老朽化したハードを新しく更新することだけにとらわれていて良いとは思いません。
ソフト面や社会を維持し保全する体制なども強靭でなくてはいけない、と思うからです。
例えば除雪の問題です。
高度経済成長時代で夏の間の公共事業による仕事が十分にあった時代には、業者さんたちも余裕があったので、冬の間の除雪などは、「ボランティアみたいなものですよ」として、非常に格安でサービスしてくれていました。
ところが公共事業が全体に少なくなってきた今日、そうした余裕が失われてきました。
そうしたことは機械力に端的に表れてきて、除雪機械を持ち続ける余裕のない業者さんが増えて除雪の機械が不足する心配が年々歳々増しています。
業者さんが機械を持てないのであれば市が所有して貸すということもありえますが、そのための予算の余裕は市にもありません。
実は昨年の秋に、開発局でグレーダーという地面や雪を削る機械が入札で払い下げになるということを聞きつけて、なんとかこれを落札することができたということがあります。
開発局で15年使った中古ですが、市の中では最新でしかもまだまだ高性能だと道路維持部隊は大喜びの一台となりました。ことほど左様に、地方の除雪に備える力は企業の力も含めて非常に脆弱です。
国土が強靭だ、ということは、災害に強いインフラだけではなく、災害が起こってしまった後も即応できる地域の対応力があればこその表現であるはずです。
国の国土強靭化は大いに結構なことです。やっとそこに目が向く時代になりました。
だからこそ、強靭化された施設を強靭に維持できる力も持ち続けたいものですし、この両者がそろってこそ初めて「強靭な国土」が完成すると思うのです。。
強い国家を支えているのは健全で強い地方の生活です。
このことをより多くの皆さんとぜひ共有させてください。
地方ももっと声を挙げようではありませんか。