宗谷総合振興局が主催する観光セミナーを聞いてきました。
今日の海外からの観光客、いわゆるインバウンドを宗谷地域でどう呼び込めばよいか、というもので、講師は阪急交通社でインバウンド誘致一筋にお仕事をしてこられたという、後藤和稔さん。
インバウンドというと、最近では中国からの大量の観光客が頭に浮かびますが、後藤さんが担当してきたのは欧米と豪州だそうで、いわゆる白人層に対する日本の旅の提案で、これまでとはちょっと趣が違います。
インバウンド観光に関しては、阪急交通社でも自分たちの事を昔はランドオペレーターと言っていたのだそう。
これは海外からのツアーの申し込みを受けて、国内で宿やバス、食事処などを手配するのが主な仕事でしたが、十年ほど前から、これをDMC(= destination management companyの略)と言い始めてきたのだとか。
「地域の資源を上手に扱う会社」といったようなイメージですが、ただの旅の手筈の下請けという立場から、日本の地域の観光資源をより魅力的にすることに役割が変わってきたようです。
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後藤さんは、全国及び道内におけるインバウンドの状況や傾向として、『定番から新コースの開拓ステージになりつつある』と言います。
そしてそれは道内も同じで、道央を定番とすれば、新地域の開拓が進むだろうし「大都市+周辺の魅力」という旅が作られるのではないか。
アジアからのインバウンドは、道央、道南が中心で、それに対して欧米系の白人はバードウォッチングのための道東が多い傾向があります。
旅行形態はグループ旅行から個人旅行(FIT)へという流れがあり、またツアー内容は一般的観光からスペシャル・インタレスト・ツアー、つまり特定のテーマを持った旅行が好まれるステージになりつつあるのだと。
アジア人はショッピングと遊園地が入っていれば良いのですが、欧米系は寺社仏閣とか庭園とか植物など、特定の趣味の世界が好まれます。
しかしその一方で、インバウンド人数が爆発的に増えている今日、宿泊料金が法外に高騰する傾向にあって、「これでは不満が募って、リピーターが減ってしまう」と後藤さんは危惧します。
阪急交通社として今後の事業展開は、在外駐在員設置や外国人スタッフを強化しようかと考えていて、それは、日本人だから気づかない魅力の発掘が必要であり、また外国人同士という同朋同士だと理解が早いのだと。
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現状で客観的に評価する宗谷地域のインバウンドの状況と関係する取り組みを伺いました。
そこでの提案は、「自分の自治体だけのため」という狭い料簡ではだめだろうということ。道内他地域との連携は不可欠で、点を線につないで、「うちはこれがある」をつなげる連携のツアーが必要だろう
今が旬の函館だったら青森と繋がるツアー商品があるべきだろう。
スペインとイタリアの旅行博では、「北海道」は認識されていても「宗谷」は誰も分からなかった。
またヨーロッパ人にとっては、「北海道って(風景も雰囲気も)ヨーロッパと一緒だよね」というイメージを持たれている。
あるスイス人、インセンティブツアーで日本を半年に一度、日本大好き、 北海道は自然しかなくてヨーロッパと一緒だね、というイメージだった。先入観だとは思うが、逆に自然を生かすのはありかな、とも思う。
後藤さんからいくつかの提案がありました。
食で言うと、ホンモノ志向が強くなっていて、外国でも食べられるにある和食はホンモノではない。それは輸入規制があって日本と同じ原材料が使えないから。
だから日本へ行ったら本物のラーメンが食べられる、というのは楽しみの一つになる。
また「地域と時期の分散」をすべきだ。地域の分散がないと、大都市だけがぎゅうぎゅうに混雑するだけだ。
訪日旅行でリピート率が高いのは実は日系人のツアーというものがあって、先祖の生まれ故郷を見てみたいという旅は一定の人気がある。
こうした旅をつみ重ねてみてはどうだろうか。
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DMCとしては、海外から求められる旅を国内でアレンジすることが中心ですが、売れる企画をしっかり作れるかどうかが、ポイントです。
しかし実際のことを考えると、宗谷地域のように札幌など大都市から離れたところへの旅を作るのは苦労するだろうな、と思いました。
時間もお金も手間もかかるところまで行きたいという要素を発掘して磨かないといけませんね。インバウンド観光の相手は国籍も文化も宗教も多様です。
いろいろなアプローチがありそうなので、いろいろと挑戦してみるべきでしょう。