東京から稚内へ帰る朝、羽田空港に来てみると、またまた『稚内空港は天候調査中』という表記。やれやれ、またかよ。
心配させながらもなんとかとりあえず定刻通りに飛び立ったものの、やはり『稚内空港へ降りられない場合は新千歳空港かまたは羽田空港に戻る』という条件付きフライトとなりました。まったく冬は安心できない旅ですねえ。
この時期の平日の稚内行きの飛行機ということで、(きっと機内は空いているだろうな)と思ったのですが、なんとほぼ満員ではありませんか。
乗ってくる乗客をよく見ていると、ツアーのワッペンをつけた方が多く、どうやら団体ツアーが搭乗しているようです。
私の隣には初老のご夫婦が座っていて、荷物の中からツアーの行程表を取り出す姿が見えたので、声をかけてみました。
「今日は稚内方面へのツアーなんですか?」
すると奥様の方が「ええ、流氷を見に行くんです。流氷はもう四回目なんですけどね。フフフ」
「あ、流氷ですか!なるほど」 そうです、この季節の道北と言えばやはり流氷観光が人気なのでした。紋別でガリンコ号に乗るんだそうです。
「紋別では沖合に流氷が来たという報道がありましたから、きっと見られますよ」
「そうですか、なら嬉しいわ」
「ところで紋別で流氷を見た後はどのような行程なんですか?」
すると今度はご主人が、「紋別の後は層雲峡で泊まって、最後は札幌で雪まつりを見て帰ります」
流氷&雪まつり、なるほどものすごく距離を走る旅ですが、冬になれば北海道には行ってみたい強力なコンテンツがありました。
「でも札幌の人って、案外雪まつりに行かないものなんですよ。『あんなに混んでいるところにわざわざ行かなくてもいいよね』って感じで」
「そうですか、私は職場が京都なんですが、私も京都の祇園祭って一回も行ったことがありませんね(笑)。そうか、今度は行ってみようかなあ」
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飛行機は無事に稚内空港に着陸しました。
もしも新千歳や羽田空港に降り立つことになったらこのツアーはどうなっていたのかと心配になりました。
「着いてよかったですね。旅のご無事と素敵な思い出になるようお祈りします」
「ありがとうございます。これから先が楽しみです」
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観光資源って、ただ見るか見ないかじゃないんです。
『旅をする楽しみ』があって、そしてその先に見てみたいものがあるということが嬉しい。だから身近な観光資源は、見慣れているということもありますが、旅にならないので楽しみが膨らまないのです。
そして実は来難いところほど、「はるばるここまで来た!」という喜びは大きいものがあります。
そういうバイアス(考え方の偏り)があるという前提で身近なものを見て歩きましょう。
北海道のそれも地の果て宗谷地域。簡単には来られないところというのも旅の楽しみを増幅させる要素があるかもしれません。
「着きましたよ!いや、奇跡だー!」くらいのことを言って煽っておけばよかったかな(笑)
この土地の他には絶対にない楽しみ要素に自信を持ちましょう。