幼いころ、小学校2~3年生の冬休みに家の前の道路に落とし穴を作りました。
当時は稚内に住んでいたのですが、当時は家の前の道路を除雪してくれるようなサービスはなく、道路は雪が降るたびにうず高くなってゆきました。
自動車交通がそれほど頻繁でもなかったので、家の前には車は入ってこなかったのでしょう。
だから、道路に雪が数十センチ以上も厚く残っていても誰も何も問題にしなかったのです。
落とし穴は、その熱く積もった道路の雪を掘って作りました。
スコップで直径7~80センチで深さは50センチくらいの穴を掘り、新聞紙をぴんと張って雪で押さえ、その上に粉雪を薄く振りかけて新聞紙を隠します。
片方の長靴を脱いで、そっと振りまいた雪の上において足跡までつけました。これならまず落とし穴とはわかりません。
するとちょうど折よく近くの官舎の遊び友達がやってきました。
落とし穴を挟んだ対角線上に立って「おおい、ちょっとこっちへ来て」と言っておびき寄せます。
「なあに~」
そう言って近寄ってきた友達は、「わっ!」と叫びながら、見事に落とし穴に引っかかりました。
今なら怪我でもしたら大変な騒ぎになったかもしれませんし、下手をすれば親が家まで怒鳴り込んでくるかもしれません。
しかしあの落とし穴にはまるかどうかをわくわくドキドキしながら見つめていた瞬間は今でもはっきりと頭に浮かぶ、強烈な印象があったのです。
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なぜそんなことを思い出したかというと、今はそんな落とし穴を作れるような道路自体がないんだな、と思ったからです。
そもそも最近の機械除雪では、雪を黒い舗装が見えるくらいまで掻いて行くので、厚い雪を道路に残すような維持管理などしていません。
それが効率的な車社会の求める道路維持管理水準であり、公共サービスとしては社会のニーズに応えることへのプレッシャーがかかっているからです。
考えてみれば昔は冬に雪が降り積もるのは当たり前で、それを何とかかんとかやりくりしながら暮らすのが冬の生活だったのです。
物置の屋根から滑って飛び降りたり、一番強くてかたいつららを見つけては友達のつららと勝負したりもしました。
北海道の冬は、その冬を遊びましょう。
今はもうできなくなったことも多いかもしれませんが、今できる冬の遊びを存分に遊び、そして子供には遊ばせましょう。
そしていくつになってもはっきり覚えているような強烈な思い出を作ってあげましょう。
冬は子供にとって、思い出作りのチャンスの季節です。