北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

行政も褒めて伸ばしてあげましょう

2023-10-18 21:52:43 | Weblog

 

 先日道内のある自治体を訪問して、道路管理の実態についてのヒアリング・意見交換を行いました。

 こちらの趣旨としては、「道路の維持管理を行政が頑張りすぎずにもっと民間に委託してはどうか」、「やり方としては、様々な業務を一本化して民間に委託する『包括的民間委託』という形がある」というものでしたが、その自治体では「うちでは既にそれに近い形でやっています」という回答でした。

 話を聞くと、業界の受け皿として地元の業者さんが集まって道路維持協同組合を形成していて、パトロールや夏の維持管理、冬の除雪まで様々な業務を一本化して随意契約をしているとのこと。

 しかも一期3年間の契約で、年度ごとにお互いに課題を持ち寄って意見交換を行い改善しているとも。

 自治体の中には、市町村合併による経過措置として、合併前の自治体の管理形態をそのまま引き継いで、契約も旧自治体単位というようなところがあるのですが、こちらは「合併後の全域を対象とした契約で一本化しています」と言います。

 まあ合併した自治体はそれぞれ中心集落が離れているということもあって、それぞれに地域性のある地域業者さんが支えていたという歴史があるのですが、そうした地域業者さんも協同組合の名の下に一本化されているというのは立派なものです。

 いくつもの自治体を巡って、道路管理の課題をヒアリングしてきた私の目から見ても、この自治体の管理水準はかなり高いものがあると高く評価しています。

 除雪に関しても住宅地の細い街路まで効率的に回っていますし、年に一度は路肩に貯まった雪を運搬排雪してくれるのですがそれも余計な地元負担はなく、税金による予算の範囲で施工してくれます。

 札幌市などは「パートナーシップ除雪」という名称で道路脇に貯まった雪を運搬排雪する制度を作りました。

 これは「地域・札幌市・受託業者が、それぞれの役割を分担しながら連携し、生活道路の排雪を行う制度」とされていますが、要はこれを利用したいという町内会に一定の金銭的負担を求めるもので、住民の少ない町内会などからは「負担が重い」という声が上がり始めています。

 現状の市民税だけでは市民が満足するレベルの除雪水準を保てないという行政判断で、市民に負担を求める制度ですが、今回訪問した自治体では「そういう負担を住民に求めずに運搬排雪もしていますので頑張っている自負はあります」とのこと。

 繰り返しますが、私から見ても冬に雪の降る北海道での暮らしを守る自治体としてはかなり高いレベルの道路管理サービスをしているようにみえます。


 ところが担当者は「それでも最近は住民からの道路管理に対する苦情は増えていて頭が痛いです」と言います。

「そういう方は自分たちが他の都市と比べてもより高いサービスを受けているという実感や感謝の気持ちがないということでしょうか」と訊ねると、「クレームをつける方も二極化している」と言います。

 それは「お年寄りでは高齢で『体が動かないのでもっとちゃんとやってほしい』という声や注文で、一方で若い方は他から転入してきた方が『税金を払っているのだからもっとちゃんとやってほしい』というクレームが多いです」とのこと。

「そういう方は他の市でこちらよりはレベルの低い水準の管理も知っているわけですよね?」
「そうだと思うのですが、感じるのは他から移って来られた方には今の地元に対する愛着が少ないのかな、ということです」

「ほう」
「札幌でも古い住宅地ではまだ除雪へのニーズが少ない頃から『自分たちで頑張って支えよう』という機運があるように思えますが、新しいところほど行政に依存する意識が高まっているようです。こちらには割と若い人が移転してくる方が多いので余計にそういうことなのかな、と感じてしまいます」


    ◆


 行政に対してというよりも、地元への愛着が薄いから自ら協力して支えようという気風が生まれない/育たないというのは面白い視点でした。

 そういうことは国全体を見ても、国民が国を/行政を支えようと思うか、もっと貪ろうと思うかによって振る舞いが代わってくるようにも思えます。

 より多くの行政サービスを受けようと思うと、適切な負担も甘受しなくてはならないところですが、そのバランスを社会全体がどう考えようとしているのか。

 今はあまりにも議論が不足しているか、あるいは支えようとしている人たちとむさぼろうとしている人たちのバランスが悪いようにも思えます。

 二宮尊徳は「推譲せよ(自分の余剰を他に譲れ)」と言いましたが、改めてそうした気風の確立が求められるように思います。


 最後に「私は他の都市も数多く回ってお話を聞いていますが、こちらは非常に頑張っているように感じます」というと、担当の方は「褒めていただく話ってほとんど聞きませんので、励みになります」と嬉しそうでした。

 地域を愛して良いところを見つけ出す方が明るい社会になりますよ。

 

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