今日は某団体が行った「人材育成パートナーシップ研修」の講師を行いました。
全部で三日間の研修では、道内のワイン普及活動に携わる方やシーニックバイウェイの担当者、観光業の方、地域の情報発信を行っている方など様々な方たちが講師としてお話をされたようです。
私はそんな三日間の研修の最終日の最後のコマを担当。
テーマとして「人間力」を掲げました。
「人間力」が何かというのは漠然としたイメージのようですが、実はすでに内閣府がこれに関するレポートを出していて、人間力とは、①知的能力的要素、②社会対人関係力的要素、③自己制御的要素、という三つの要素があるとしています。
※2003年 内閣府「人間力戦略研究会報告書」
このうち、①の知的能力的要素とは、基礎学力、専門的知識、創造力などが挙げられています。
②の社会対人関係力的要素としては、コミュニケーション力、リーダーシップ、公共心、規範意識などがあります。
また③の自己制御的要素としては、意欲、忍耐力、成功を追求する力などが掲げられています。
いずれも社会を生きていくうえで高く評価される徳目と言え、これらを伸ばすためにはどうするかという事がテーマです。
しかしながら、矛盾するようですが、そもそも人材育成などという言葉自信がおこがましい話で、「人材を育成することなどできない」というのが私の考えです。
人材として周りから認められるような人になるためには、自分自身で何かに気づき、人生のテーマを追求するような情熱/パッションが必要です。
それを他者が与えようなどと言うのは到底無理なこと。
そうしたテーマに自分自身が前向きに取り組むようになるきっかけは本人自身の中にしかないからです。
ただ、なにかに気づくためのヒントの提供くらいならできるかもしれません。
私の講義はせいぜいそこまでと割り切ったうえで、講義の形態は、グループ討議でお互いに話し合う形にすることにしました。
他の講師の授業の進め方を聞くと、講師のお話を聞くという座学の講義が多いようなので、ただ黙ってお話を聞くよりも、たまにはおしゃべりをして隣の人と意見を交わすという場がある方が良いだろうという判断です。
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さて、講義は全部で1時間30分。
まずは道徳的な心に響く読み物(400文字~1000文字程度)を4編選び、後半は二宮尊徳の伝記的な人となりを示す「二宮翁夜話」から4編を選んで受講生に事前に配布しました。
そのうえでそれぞれを読んで、まずは前半の4編について意見を交わしてグループの代表者が発表、後半は二宮尊徳の人となりや業績・思想などについて軽く触れた後に、二宮翁夜話からの物語を読んでまた意見交換・発表をしてもらいました。
それぞれがどれだけ心の琴線に触れたのかどうかもわかりませんが、熱い人生を送った人の物語を読んで自分事として考えることを繰り返すことで、自分の中に何かの気づきなどが起きることを期待するものです。
まあ受講生の皆さんは笑い合ったり経験を語り合ったりして熱心に話し合ってくれ、またそれぞれが要領を得たまとめを発表してくれました。
人との会話を楽しみながら、読んだ文章の中に、あるいはグループの仲間の一言になにか気づきはあったでしょうか。
それは自分でも読書や前向きに生きようとする訓練でできるようになるものなので、今後の受講生の人間力向上に期待したいところです。
ちなみに報徳仕法では、こうした各人がお互いに話し合うことで何かに気づくようなやり方を「芋こじ」と呼んでいます。
里芋を大きな桶に入れて棒をさしてかき混ぜることで、里芋同士がこすれ合って汚れが落ちるということを指していますが、何かに気づくのは対話の中での自分自身の問題だ、ということを尊徳先生は看破していたのだと思います。
今日のワークショップも芋こじになったでしょうか。
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