天才高校生作家としてデビューした榛名忍は、三作目を過ぎたあたりからスランプに陥った。
そんな時、通りかかった自分が通う大学のラウンジのテレビで競歩の大会が放送されていた。
何の気なしに見た忍だったが、背後で運動部の風体の男が静かに滂沱の涙を流していた。
どうやら本人は、泣いている自覚がなかったらしく、忍と一緒にいた同級生の石原亜希子の声で我に返り、速足で歩き去った。
あまりにも印象的だったためか、その後の出版編集者の百地さんとの打ち合わせで、思わず「競歩」という言葉がでてしまい、いつの間にか出版社からの取材費も出る事になってしまった。
初めは遠くから眺めるだけのつもりだったのに、後輩で新聞部学生記者の福本愛理が、彼、八千代篤彦の出場する大会に連れまわすのだ。
八千代は本来、長距離ランナーを目指し箱根が目標だったところを断念して競歩に転向したという。
そんな彼に自分を重ねて苛立ちも覚えつつ、やがて忍は練習にも同行するようになった。
忍が書いた小説のラストが、王道を狙わなくて良かったと思いますし、この物語の着地点も同様に良かったと感じました。
競歩は、本当に傍目からも地味で過酷なスポーツですが、選手の視点から見るとなおさら厳しい世界だという事が分かります。究極の、自分との闘いの競技ですよね?
額賀さんご自身も、ご自分と重ねて思うところがあったのか、無かったのか。
それは分かりませんが、安易な感動物語にならなかったのも素晴らしいと思いました。
そんな時、通りかかった自分が通う大学のラウンジのテレビで競歩の大会が放送されていた。
何の気なしに見た忍だったが、背後で運動部の風体の男が静かに滂沱の涙を流していた。
どうやら本人は、泣いている自覚がなかったらしく、忍と一緒にいた同級生の石原亜希子の声で我に返り、速足で歩き去った。
あまりにも印象的だったためか、その後の出版編集者の百地さんとの打ち合わせで、思わず「競歩」という言葉がでてしまい、いつの間にか出版社からの取材費も出る事になってしまった。
初めは遠くから眺めるだけのつもりだったのに、後輩で新聞部学生記者の福本愛理が、彼、八千代篤彦の出場する大会に連れまわすのだ。
八千代は本来、長距離ランナーを目指し箱根が目標だったところを断念して競歩に転向したという。
そんな彼に自分を重ねて苛立ちも覚えつつ、やがて忍は練習にも同行するようになった。
忍が書いた小説のラストが、王道を狙わなくて良かったと思いますし、この物語の着地点も同様に良かったと感じました。
競歩は、本当に傍目からも地味で過酷なスポーツですが、選手の視点から見るとなおさら厳しい世界だという事が分かります。究極の、自分との闘いの競技ですよね?
額賀さんご自身も、ご自分と重ねて思うところがあったのか、無かったのか。
それは分かりませんが、安易な感動物語にならなかったのも素晴らしいと思いました。