『トリプル・ゼロの算数事件簿』向井湘吾

算数だけが得意な有明雄天とスポーツ万能な轟恭介は、五年三組のクラスメイトだ。
春の遠足のとき、他のクラスメイトのイジメを目撃したのをきっかけに、学校で困っている人を助ける「トリプル・ゼロ」を結成した。

時にはつまづきながらも３つの問題を解決していくのですが、ラストに暗雲が立ちこめてきます。
そんなわけでシリーズになりそうなこの作品、初めからゼノンのパラドックスが登場して、懐かしくなりました。
先を歩いているカメを後から来たウサギは絶対追い越せない、というあれですね。

これからどんな算数が出てくるのか、少し楽しみです。
忘れていることも多々ありますし、復習になって一石二鳥でしょう。

『美森まんじゃしろのサオリさん』小川一水

大学入試に失敗した岩室猛志は、Ｇ県豊来郡美森町に住んでいる。
祖母が亡くなり空家になった住居に母親が無理矢理住まわせ、こっちでなんとか生計を立てろと言ったため、便利屋を始めた。

そんな仕事のさなかに出会ったのが女子大生であるはずの貫行詐織で、＜竿竹室士＞というユニット名で探偵を始めた。
肝心の事件だが、亡くなった母親の遺体が庭のブランコに座っていたり、隣に庵リ童子が出たりと、美森卍社あらみめいたものが多かった。

オカルトっぽく見せて、ちゃんとしたミステリです。
詐織にもう少し心の余裕があれば、猛志も楽なんでしょうけど。
ここまで来ると、振り回されるのも快感なのでしょうか？
面白かったです。

『花とアリス殺人事件』乙一

有栖川徹子は中学三年生。
両親の離婚により石ノ森学園中学校に転校してきたが、彼女が三年二組であてがわれた席は、クラスで呪われた席と忌み嫌われている席だった。
話によると、そこではユダが毒を盛られて死んだということだった。

その後ろの座席は、一年前から登校拒否を始めた女子生徒で、驚くことに徹子の隣の家の荒井花のものだった。
真相を知りたくなった徹子は花に問い質そうとしたが、実は花自身もユダを殺したかもしれない恐怖におびえ、閉じこもっていたのだった。

果たしてアリスこと徹子は、ユダの生死の真相にたどり着くことができるのか？

ほんのささいなきっかけで引き起こされたことが、思わぬ事態を生むこともあるのですね。
花はずいぶん遠回りしましたが、そのおかげで救われた少女もいて、結果的にはよかったのかもしれないと思う面もありました。

『幽落町 おばけ駄菓子屋』蒼月海里

駄菓子屋‘‘水無月堂’’を営む美男子・水脈さんは、この世と常世の境界にある幽落町で霊のケガレを引き受け、常世へと送り届けていた。
しかし、月に一度の縁日でケガレを祓っているものの、常世の者だけで行う祭祀では祓いきれず、体が弱っていた。

そこで、水脈を崇拝する猫目は、浮世の人間・御城彼方にアパートを世話すると言って、幽落町のアパートを紹介。ついでに一年間は住まざるを得ない状況に追い込んだ。

彼方が現世に思いを残した死者に肩入れしてしまうのは、本当にお人よしと言いますか、水脈さんに近いものがあります。
猫目の人物選択眼に狂いが無いのは、間違いないようですね。

あまり怖くなく、ほのぼのしたオバケ話です。

『カアチャン本舗 ３さいくん育ててます』たかはし みき

たかはしさんの息子さん・のっすんくんの車への愛、と言っても乗るより眺めている方が好きらしいのですが、それに基づく言動や行動、お喋りだけど言っていることが脈絡ないところなど、面白いところがたくさんあります。

この時期なのか、体当たりの甘え方は大変そうですが、微笑ましいです。
男の子が大抵好きな戦隊ものや仮面ライダーに、あまり興味を示さない理由の可愛さにも、微笑んでしまいます。
３～４歳の、のっすんくんの成長が細かく描かれていて、とても楽しめました。