こっぱもちの部屋

主に、読書感想のブログです。他に、日常生活で楽しかったことを書くと思います。

『幽霊絵師 火狂 筆のみが知る』近藤史恵

2022-08-20 20:17:02 | 読書感想
 
元・揚屋の料理屋、しの田の一人娘・真阿は、十二で胸を患い二年間ほとんど自室で過ごしていた。
そんなある日、父が、東京で有名な絵師を店の空いている座敷に居候させると言いだし、母ともめる。

結局、真阿に近づけないという約束で住まわせることになったが、真阿の方が両親の眼を盗んでは、火狂を訪れるようになった。
また、なぜか真阿が同じ夢を毎晩見るようになった。

火狂の絵の才能が、近藤さんの文章の中からあふれ出るように伝わってきます。
さらにそれに同調するように真阿の感性が磨かれていくようで、彼女にもどこか秀でた才能を感じます。

あと火狂の母と姉のエピソード。
現代はここまでは無いにしろ、やはり生きづらさを感じる事も多い世の中ではあります。
さらに、その弱者をあらゆる意味で食いものにする者がいるのも変わらずで・・・やるせない気分になりました。
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『空をこえて七星のかなた』加納朋子

2022-08-16 20:04:37 | 読書感想
 
タイトルからして「ん?アトムか?」なのですが、冒頭の語り手の少女の名前でもあります。
七星は普通の小学生、パパも本気を出せば料理上手の普通のおじさん、しかしてママは・・・宇宙飛行士として単身アメリカに住む、スーパーママなのです☆

というような出だしでして、他にも旅行先の美少年と一緒に宇宙を目指す約束をした美星や、名門一族の生まれで品行方正、成績は常にトップを独走、その上スポーツ万能なのに情に厚い、高校生徒会副会長など、どれも星に関わる人々が出てくる群像劇です。

現代では、このような話も普通の小説なのですが、ひと昔前ならSFよねー?と思ったりもしました。
それにしても七星のママは、どれだけスーパーママなんでしょう?
周りの普通の人々を突風のように巻き込みながらも、巻き込まれた人々の人生をより良きものに変えていく。
もちろん、彼女自身もそれだけ努力をし続けているのではありますが、凡人には何ともはや・・・(^^;)
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『ショートショート実験室』田丸雅智

2022-08-12 20:57:35 | 読書感想
 
実験室・・・何を実験するのかと思いましたが、そう来ましたか。

「レインファイバー」「浜の和菓子屋」「砂モデル」「言の落葉」「風屋」「月光樹脂」
この辺りは、優しかったり美しかったりする物語で、私としては特に「浜の和菓子屋」「風屋」が好みです。

逆にネガティブな面や、考えさせる内容のものは「ネガ発電」「錆」「意識発電」「P申告」「ハラムシ」でしょう。

私の感覚では「ネガ発電」は、星新一さんの「おーいでてこい」を思わせるものでした。
また「火山社長」は、古典落語の「頭山」だなあ、と思ったりしました。

「エネルギー・環境」をテーマに書かれた作品群らしいので、なかなか興味深く読めます。
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『夏休みの空欄探し』似鳥鶏

2022-08-08 20:01:13 | 読書感想
 
小さい頃から知る事が好きだったが、勉強はほどほどだった高校二年生男子、成田頼伸が、夏休みにモスバーガーでオニポテをつまみながら文庫を読んでいると、隣席の女性二人組が暗号らしきものを解いているところに気づく。
ちらっと見た数字の羅列。
二人しかいないクイズ・パズル研究同好会会長だからなのか、割とすぐに答えが分かったものの変な人に思われそうで伝えられず、自分のレシートに解答を書いて彼女たちのテーブルに置いて店を出てきてしまった。

思いがけず彼女たちが後を追ってきて、ある会社の創業者の遺産の一部の場所を探す暗号解読に参加する事となり、クラスの人気者まで加わっての夏休みの冒険になる。

頼伸としては、クラスでは地味な部類で「何か役に立つの?」という知識を得るのを楽しむタイプで、上記の人気者、同姓の清春にコンプレックスを持っていたのが、この謎解きによって清春側にも似たものがあるという気付きも面白く、逆に、頼伸に共感するところがある私自身も、役立つからとさりげなく学べる彼を尊敬できるなと感じました。

あと、こういう物語にありがちな結末にならず、ああいう状況で幕を引いた似鳥さんの書き方にも、とても共感を覚えます。あれがベストですよね?
最後に、きっと夏休みの中高生の読書感想文に使いたがる生徒も多いと思いますが、安易に使って欲しくないなあとも考える複雑な物語です。

追記:あとがきは相変わらずなので、安心しています。

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『残心 凛の弦音』我孫子武丸

2022-08-04 19:54:44 | 読書感想
 
十年以上にわたって翠星学園の弓道部で弓道指導を行っていらした教士六段の棚橋先生が亡くなった。
凛もお世話になっていたが、彼女が高等部に上がった頃から体調を崩され、ほとんを弓を引く事もできなくなっていた。

三年生の本多部長に代わり、部長になった凛だったが、先生の死によって明らかに調子を崩した。
凛はスランプを乗り越えられるのか?

1巻目の「凛の弦音」ではミステリでしたが、2巻目は青春小説です。
最初もミステリと言いつつ、青春小説寄りかな?と思っていましたが、こうなりましたか。
確かにこの方が自然に読めるし、逆に謎にこだわって話の流れを阻害する場合もありますからね。

内容としては、凛を始め、波多野や中田、元部長の本多先輩、教師も様々な理由で悩み、迷い、成長していきます。
一応、ここでは青春小説というくくりで書きましたが、おとなになったからといって、全く迷わない人は少ないと思います。

一生勉強と仰る方もいらっしゃいますが、私は一生成長でもあると考えています。
成長、できるといいな。
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