興趣つきぬ日々

僅椒亭余白 (きんしょうてい よはく) の美酒・美味探訪 & 世相観察

たけなわ (好きな言葉)

2007-06-20 | 言葉ウォッチング
「物事の一番の盛り。真っ最中」という意味である(広辞苑)。「春たけなわ」「宴たけなわ」というように使う。

 漢字を当てると、「闌」または「酣」。闌には「手すり(欄)、みだりに」という意味もあるようだが、それと「一番の盛り」という意味とどういうつながりがあるのか、2、3の漢和辞典を引いてもよくわからない。
 それに対して酣は、もともと「酒宴のまっさかり。酒を飲んで楽しむ」という意味があり(大修館現代漢和辞典)、わかりやすい。これが、酒を愛するわたしが「たけなわ」を“好きな言葉”にあげた理由である。

 ところで、「盛り」があれば「衰え」があるのが世のならい。ピークがあれば、かならず下りがある。下りがあとに続くからピークという、といってもいい。
 英語のことわざにも、「どんな良いことにも、かならず終わりがある」(All good things must come to an end.)というのがある。
 ドイツには、「一番いい時に帰るべし(Wenn es am schoensten ist, soll man gehen!)」という言葉があるという。例えばパーティなど、長居しすぎないよう気をつけよということであろう。
 ところがわたしなど、楽しく酒を飲んでしまうと、一体いつが「酒宴のまっさかり」なのか見分けがつかなくなる。結局最後までねばり、あとで後悔する。

 広辞苑で「たけなわ」を引くと、もう一つの意味が載っている。それは「少し盛りを過ぎたさま」である。
 ピークとピークを少し過ぎた頃合(たけなわ)を敏感に察知できてこそ、“人生の達人”になれるのかもしれない。

2007.6.20   (ドイツ語協力:北村孝一氏)