男性4人での福島・一泊車旅。今回はいわき市、小野町、平田村の辺りを旅した。
前編に続き、この後編では宿泊した小野町「小町温泉 太田屋旅館」からご紹介したい。
上の写真は到着日の太田屋旅館夕食。
料理のメインは、豚肉、野菜、豆腐などがたっぷり入ったチゲ鍋。
写真には写ってないが、手元の料理にプラスして、作り立てのカレイの煮つけとカボチャの煮物が、あとで運ばれてきた。温かいうちに食べてほしいという配慮なのであろう。
ケースに入ったビールの左にあるのは、女将からのプレゼントの酒。
昨年に続き、再び訪れてくれたお礼に、とのことだった。
それは福島県天栄村・松崎酒造の「純米吟醸 廣戸川 銀牡丹」。
酒に詳しい同行者によると、松崎酒造は美酒 “廣戸川(ひろとがわ)” で全国に名をはせた蔵だという。
呑兵衛で酒には詳しいと自負しているわたしではあるが、廣戸川は寡聞にして知らなかった。
その廣戸川のなかでもいちばん高価な「銀牡丹」を、女将はさりげなく準備してくれていたのだ。
飲んでみると、素直でやわらかく、クセのないたいへん美味しい酒であった。
翌日の朝食。
玉子と納豆に塩鮭、漬物。定番の朝ご飯である。
前夜飲み過ぎ、食べ過ぎたのに意外に空腹感があり、ご飯もおかわりして美味しくいただいた。
宿をゆっくり発ち、一泊旅の二日目、最初に行ったのは夏井川渓谷。
夏井川は福島県の南東部を流れる二級河川。
中流部に上の写真のような岩場の渓谷が長く続いている。紅葉時期など山と川の織りなす美しい景観を求めて、たくさんの人が訪れるという。
今回のわれわれの旅では、紅葉の盛りにはまだ少し早かった。
このあと訪れたのはいわき市小川町の、草野心平記念文学館と草野心平生家。
上の写真は草野心平生家。
文学館では、心平の詩の代表作いくつかをパネル展示するとともに、心平の作品世界と85年の生涯、文学者たちとの幅広い交遊関係などが表現されていた。
心平みずからが経営していた居酒屋の復元などもあり、興味深い展示内容であった。
昼食は同じく小川町の「蕎麦 たじま」。
手打ち・出来たての新そばは、コシがあって香りがあって、とても美味しかった。
そばは食べやすいようにという客への配慮からか、あらかじめ短めに切ってあった。
そばは長いのをズルズルズルと、音を立ててすするのが旨いのだ(旨えんだ)、と ‘江戸っ子’ には言われそうだが・・。
次に寄ったのはいわき市の「吉野谷(よしのや)鉱泉」。
古い大きな木造家屋の奥に湯船があって(上の写真)、湯は鉱泉を沸かしていた。
主人と思しき男性がいて、一人でやっているようだった
宿泊もできるということで(素泊まり)、リュウマチや神経痛などによく効くと、遠くから来る常連客もいるとのことだった。
普通の温泉宿とは一味も二味も違う、ユニークな湯場である。
最後に行ったのは、「願成寺(がんじょうじ) 国宝 白水阿弥陀堂(しらみずあみだどう)」。
平安時代後期の代表的な阿弥陀堂建築で、福島県唯一の国宝建造物である。
国宝という先入観があったからかもしれないが、何よりも建物全体のフォルムがシンプルで、非常に美しいと感じた。
屋根がゆるやかで優美な曲線を描いていること以外に、余計な飾りが一切ない。簡素な美そのものである。
ただ、この簡素な美、それ自体がこの白水阿弥陀堂の国宝指定の理由かどうかは、わたしには分からない。
今回も充実した福島旅であった。
写真協力:Y.T.氏
郷土への愛と誇り:福島の旅2024前編 - 興趣つきぬ日々