*写真はソウル清渓川わきの歩道にある方角案内板。本記事とは関係ありません。
「余白の創作ことわざ」の第5回です。
半兵衛より清兵衛 はんべえよりせいべえ
<意味>
自分のまちがいや失敗は、 「知らぬ顔の半兵衛」 を決めこまず、 「正直清兵衛」 となって、素直に認めたほうがよい。
*正直清兵衛とは、落語 「井戸の茶碗」 に登場する正直者の清兵衛のこと。 名前をちょっと拝借しました。
<さらに一言>
ふた月ほど前に訪れたある居酒屋でのことです。
その店はそのときが二回目。 馴染みの店ではありませんでした。
お店のおねえさんに頼んだ二本目の燗酒が、なかなか手元に来ません。
おねえさんは先ほど、カウンター内にあるお湯の燗つけ器に徳利を入れ、そのまま忘れてしまったようです。
わたしは、ちょっと気位の高そうなそのおねえさんにあえて催促せず、ジッと待っていました。
しばらくして、ようやく持ってきた徳利をわたしの手元に置くと、おねえさんはすました顔でこう言いました。
「熱いの、嫌いかな?」
「・・・?」
徳利を持ってみると、やはり超飛び切りの熱燗です。 マア、飲んで飲めないこともありませんが・・・。
おねえさん、自分が燗(つ)け忘れていたことを言わず、知らぬ顔の半兵衛を決めこんだようです。
「酒、熱過ぎるよ!」
と、わたしがそこで文句を言ったと思いますか? 言わなかったと思いますか?
ハイ、言わなかったのです。
(肴もいいし、酒もわざわざお湯で燗つけてくれる店*なのにナア)
と思いながら、気弱なわたしはその店に今度また行こうという気持ちが、今すっかり萎えてしまっています。
*お湯で燗をすると酒がさめにくく、しかも美味しい
<もう一言>
「コメンナサイ、ちょっと燗け過ぎたみたい」 とでも、ひと言いってくれれば良かったのにねえ・・・。
「商いは正直が第一」 と昔からいうじゃないですか。
*「余白の創作ことわざ」は毎月月初めに掲載します