一応実話(?)ということになっているのだが、ホントかいと思うところ多々あり。
原題は、Colour Me Kubrick: A True...ish Story。ishというのは…辞書を引くとに「属する」「のような」「じみた」とある。
主体になっている製作会社がColour Me K Productions Limitedというのだから、これ一本だけ作るための会社と思われ、実際他には作っていない。
半分ホラ話みたいなのだが、これがキューブリックというところが作風といい、人前に出ない生活態度といい、妙にもっともらしい。これがスピルバーグだったらこうはいかない。
主演がジョン・マルコヴィッチというのは、「マルコヴィッチの穴」の虚実皮膜ぶりとだぶらせる効果を狙っているのだろう。
監督はブライアン・W・クック。長年キューブリックの第一助監督を務めてきた人。「チキ・チキ・バン・バン」('68)では第二助監督をつとめていたというから、映画生活は長い。他にマイケル・チミノの助監督を何度も務めている。
至る所にキューブリック作品のサウンドトラックを流しているのがパロディ風の雰囲気を出す。元助監督ではなくては許されないのではないか。
それにしてもあんなにだらしのない酔いどれがキューブリックだといって信じてしまう人間がいたらしいのだから不思議なもの。外観が似ていないのはもちろん、言動も一向にそれらしくないのだから。だまされやすさの心理というのか、特殊詐欺にひっかかってしまう人間が一定数いるのとどこか通じているのかもしれない。