トム・ハンクスがソ連という国名をソビエト社会主義共和国連邦といちいち正式に呼び、「あなたの国名は長すぎます」と言うのが笑わせるとともに、相手の名前を正確に呼ぶという礼儀を守る姿勢にもなっている。
前半で描かれる冷戦時代の核兵器に対する無知と見当はずれの恐怖がないまぜになった図というのが、今見ると滑稽にもグロテスクに映る。無知と思い込みから「敵」に対する敵意と排斥が多数派として力を持つのは、まさに今に世界中で繰り返されているモチーフだろう。
ハンクスが電車の中からどこの誰ともわからない人が壁を乗り越えるさまをベルリンとニューヨークとで二度見せるのが印象的。
ソ連のスパイ役のマーク・ライランスがしおたれたオヤジ風の風貌で出てきてあまり表情も動かさないのに味方も信用していない腹に一物ある感じから主人公のドノヴァンとの友情まできっちり表現しているのに感嘆する。脇のキャスティングは比較的地味だがみんな上手い。
ネゴシエーションを民間の弁護士に丸投げするというのは国が太っ腹なのか単に無責任なのか、両方だろうがアメリカらしい話。
壁が築かれる当時のベルリンを再現している技術的な見事さもだが、崩壊した後に見るとなんでこんなものが築かれたのか異様な感慨がある。冬のベルリンの荒涼とした雰囲気と寒さが見事に出ている。
(☆☆☆★★★)
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映画『ブリッジ・オブ・スパイ』 - シネマトゥデイ