そんなにヒドいのかな、そうでもないじゃないと思いかけたところでどんと思いもかけない外れ方をするのがたくまずして絶妙で、今でいうおもしろビデオやNG大賞のおかしさの先駆のように思える。
で、そういう狙っていない可笑しさを最初から完全に狙って再現するというのは本質的に矛盾を孕んでいて、技術的に完璧であるだけ(メリル・ストリープですからね)かえってよくできた再現にとどまる。
以前「タモリ倶楽部」の歌ヘタ選手権のトップバッターにこのLPが出てきたわけだけれど、伴奏のピアニストはマダムの歌を聞かされて笑わなかった人が選ばれたというのが裏話として紹介されていたが、ドラマでは唖然したり笑いを堪えたりと相当にリアクションを見せている。それに気づかないのはマダムの人の好さでもあるけれど、無神経には違いない。
海外版のポスターでは左にいるピアニスト氏が日本版のポスターから消されてしまったのはコメディ色を消して感動作にもっていって宣伝する小細工だとネット上で批判されたけれど、このピアニストの視点から描いていったら完全にコメディから始めて感動作にもっていけたかもしれないが、全体にマダムの「寝床」ぶりをどう見ればいいのかつかみにくく建付けがあまり良くない。
夫役のヒュー・グラントがいい加減で調子がよくてそれでもそう悪い人間ではないという十八番の役で好演、これだけ二の線から三にシフトしてうまくいった人も珍しい。
(☆☆☆★)
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