prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「ザ・トライブ」

2016年12月19日 | 映画
全34シーンをワンシーン・ワンカットで撮られていて、こういう超長回しの映画は今までもいくつかあったが、デジタルシネマ時代になって長回しも移動もずいぶん楽になった成果と思しい。Arri Alexaというデジタルカメラを使っているというが、移動はステディカム風(使っているのかどうか調べがつかず)にすこぶるスムースで、しかも固定するところでぴたっと固定している。

全編手話で一言のセリフもなく、字幕で意味を説明することもない。サイレント映画の表現に回帰したようで、手話がまったくわからなくてもだいたい何が言いたいのかわかる気がするし、言葉がわからないことが気にならなくなってくるのが不思議なところ。
またわずかな音がすごい雄弁に多くのことを語っている。

登場人物、また出演者がみな聴覚障碍者なのだが、きれいごとでないどころか殺伐として暴力沙汰や売春が当たり前になっているのが強烈。タイトルのトライブというのは「時計じかけのオレンジ」のアレックスたちのような集団。

セリフがないのはもちろん、呻き声や悲鳴や叫び声といった意味をなさない声そのものがほとんどない。そのため、中絶シーンの苦痛の声が耳に残る。撲殺する場面であんなに大きな音を出していいのかと思いかけて、あ、周囲はみんな耳がきこえないのかと思ってどきりとする。
(☆☆☆☆)






12月18日(日)のつぶやき

2016年12月19日 | Weblog