「にっぽん昆虫記」('63)を作ると時に売春の元締めをしている一人の女性に徹底的に取材してからそれを元にシナリオを作ったというが、その取材の過程自体を改めて取り上げ掘り下げているよう。
ドキュメンタリーとすると、オープニングのやりとりで言葉と口の動きが合っていなかったり、ほとんど間をおかず牛のの実写が入るという調子で、取材対象とジャーナリスティックに客観主義的につきあっているわけではないのを宣言するようなノイズが入る。
このあたり、劇映画でもリアリズムかと思っていると奇妙に象徴的な小動物などのオブジェが入ってくるのと通じる。
このの実写で突起が出た巨きなハンマーで牛の眉間を過たず叩く腕前が明らかに職業的に慣れた感じで、こういう仕事を生業にしていた人たちがいたことをなんとなく隠されていたのをあっさり暴く。
たびたび挿入されるニュース映像でも、戦後史でしばしば使われるようなのとは一線を画して、下山事件で線路上に人間の残骸のようなものが飛び散っているような映像とか、戸田城聖や若き日の池田大作の実写などが入るのが貴重、というよりあまり見られなくなっていて貴重になっているのを気づかされる。
創価学会がどういう層に食い込んで勢力を拡大していったか端的にわかるし、アメリカ兵と
次々と関係してまわる女性というのも日本そのものという感じ。
今村昌平ワールド にっぽん戦後史 マダムおんぼろの生活
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