「天国の日々」でファンになったテレンス・マリックですが、いかになんでも最近の作品はついていくのは難しい。
錚々たるスターが出演するから撮ることはできるのだけれど、逆にどうしてああスターが出るのか不思議ではある。ウディ・アレンの作品が大ヒットするわけではなくギャラは安く抑えられているのにスターが並んでいるのに似ているのかな。
困るのは宇宙の始まりといった時間と空間がまだ出来ていない状態を映像で表現するのは不可能だし、ナレーションがどうも曖昧模糊として、言葉が生成すると同時に世界が現出するといった詩の作用が現れているとも思えず、タルコフスキーが父のアルセニーやチュッツェフの詩の朗読を流すように、詩そのものが刺激になっているわけでもない。
オープニングでホームレスの姿を見せたり、紛争地帯かどこかの悲惨な状況にある人々の実写映像が挟まったりするのだが、「天国の日々」の搾取的な労働に追われる季節労働者を捉えたような美的・詩的な映像と対立するような批評的な作用がないのだな。
ネイチャー・ドキュメンタリーみたいに画そのものの迫力や目新しさに走りすぎているわけではないのは良し悪し。
オリジナルのケイト・ブランシェットのではなく中谷美紀のナレーションによるものになった分、なんだか底が見えたような気分。
ボヤージュ・オブ・タイム
映画『ボヤージュ・オブ・タイム』 - シネマトゥデイ
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