初めの方の漁船上の荒っぽく男臭い生活の生臭いくらいのリアリズムのじっくりしたタッチと陸の上の家族と商売の両方にまたがるろくでもない生活描写を経て、中盤からの一気呵成に地獄行きになる加速度を持ったようなドライヴ感は相当なもの。
船内の鉄の壁の殺伐とした感じや、海の波、特に嵐の表現など画面の厚みもしっかりしている。
若い船員が朝鮮族の若い女と接近していくプロセスも自然で、もとは舞台劇だというが作劇がしっかりしていて、ラストの切れ味と余韻の持たせ方もいい。
中国にいる朝鮮族に対する韓国人の差別意識というのはわかりやすいものではないが、日本で働く日系ブラジル人の対する日本人のそれに近いか。
(☆☆☆★★)
海にかかる霧 - 映画.com
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