「市民ケーン」同様に違う人から見たゴッホ像がそれぞれかなり違っていて、死因についても色々な推論が混ざる。ただ完全にフィクションとして飛躍するわけではなくドラマ作りとするとやや中途半端。
何といっても見ものなのは映画の画面そのものがゴッホの絵を再現した油絵が動く、というところで、改めて見てみるとゴッホが身近な人々を大量に絵にしていることに気づく。
そのあたりが神や聖人を描いた宗教画から実在の王侯貴族を描くようになりさらにふつうの人々と描くようになった近代絵画の祖という所以でもあるのだろう。
また生前のゴッホがついに無名のままであり何者でもないところが職を失ってあちこちふらふらしている案内役の郵便配達の息子にだぶり、それがまたゴッホの絵に描かれた何でもないような多くの人々が画に描かれたことで世界的に有名になったというアイロニーが現れてくる。
アニメというよりしばしば実際の人間をトレースしたロートスコープの画面の感触になる。
回想でたびたび白黒になるのが絵画でのクロッキーやスケッチというより実景を白黒で撮ったのに近い感じになり、さまざまなリアリティの階層を行き来する感。
油絵が動く、というアニメはハンガリーの「英雄時代」がある(ニコ動で見られる)し、水墨画が動く中国製の「牧笛」というアニメもあった。バカみたいな感想になるが、よくやるなあ。
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