御前会議のシーンに至っては、「未来世紀ブラジル」に対するカラーによる表現主義の再現、という評が何度か頭をかすめたくらい。
ただ、予告編だとなんて臭いんだろうと思うようなセリフや芝居が出来上がった流れで見ると自然に収まっている。
豪華キャストはいいのだけれど、本当にちょっとした役に主役級の役者をばんばん使ったもので逆に、え、これだけと思うところ多し。脇を固める役者がいないのかと逆に思ったくらい。
伊丹十三で思い出したが、伊丹は会社を舞台にした映画を作ろうとも考えたことはあるが、サラリーマンというのは基本的に仮面をかぶっている存在だから役者が役として表現するのと本質的に矛盾するのでやる気にならない、という意味の発言をしていたが、これは思いきってその逆をいって役者がサラリーマン「らしさ」にあえて逆らって仮面をかぶっている観客の代わりに仮面をとって思い切ってキャラクターを発散している感もある。
偽装と隠蔽と腐敗の連鎖というのは本当になくならないだろうし、マスコミだの司法だのをあてにもしていない、それらも上意下達の論理で動いている組織に過ぎないという常識の上で、昔の社会派映画のように敗北の情緒に浸らず陥らずしぶとく最終的に一縷の正義は手放さないのが、今の社会派ないし会社映画ということになるのだろう。
グータラ社員以外の何者でもない野村萬斎が、出世コースから外れているからこそ組織の論理に絡めとられないで一種の第三者機関、外部監査に近い役割を果たす。
朝倉あきが顎のホクロとか馬鹿に若い時の南野陽子に似て見えた。
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