prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「ジョン・フォード アメリカを創った男」

2023年01月03日 | 映画
フォードは騎兵隊ものを作ることが多くて、政治的に右と見られることが多かったらしいが、むしろ社会主義的民主主義者というのがこのドキュメンタリーの捉え方。
赤狩りが吹き荒れた頃に、監督たちの会合で非米活動委員会におもねようとしたセシル・B・デミルの発言に表立って異を唱えて「さあ、帰って映画を作ろう」とすかした終わらせたエピソードなど有名だし、「怒りの葡萄」など社会主義的民主主義者の作品そのものに思える。
一方で「民主主義を守るための戦い」であるところの太平洋戦争が始まると真っ先に協力する姿勢にも表れた。

実際はインテリなのだが、そういう面を見せるのを嫌った。
「駅馬車」で駅馬車の乗客たちに社会の縮図を見る構造はモーパッサンの「脂肪の塊」から得たもので、原作小説などよりはるかに多くのものを負っていると後年発言もしている。

ペキンパーを品田雄吉が「野人にしてインテリ」と評したことがあったが、アメリカのいわゆる「男性的」なマッチョと見られる映画の作り手は「気取った」面を見せたがらなかった。インテリ・リベラルは草の根レベルでは嫌われるのを知っていたというより当人が草の根から出てきたからでもあるのだろう。

「駅馬車」がトーキーとしてはフォードにとっては西部劇第一作で、西部劇のパターンを作ったのでかえって伝統の上に成り立っているように見える。
伝統はここから始まったのが本当のところ。