オープニングの飛行機場のショットから 望遠レンズ を 多用して 人物を大勢びっしり端から端まで詰め込んだ構図が多い。ただ飛行機が普通に上昇していくカットでも重量感と空気感に満ちている。
黒澤明の画作りを思わせたりもするし、フレームが固定しないで微妙に揺らいでいたり焦点をフレーム内全部には合わさずボケ味も狙っているレンズ効果も多い。
飛行機が方向を 変えた ところで 窓から夕日の光がビームになってさしているカット が美しく効果的。
宣伝文句にはなっているけれどもそれぞれの人物の決断がどっちが正しくどっちが間違ってるか一概には言えず、しかしいずれにしてもその責任を取らなくてはいけないと言う 図式あるいは倫理観は一貫している。
生きるか死ぬかになると人間も国家レベルでもエゴイズムをむき出しにするのを遠慮なく描いている一方で、 状況は刻々と変わり常に誰かがエゴイズムを発揮できる(つまり有利な)側でいられるわけでもないのを描いている。
分断と言えば言えるが、それは流動的な関係でもありうる。
ラストも危機が去ってめでたしめでたしでは済まない微妙なニュアンスがある。
日本の自衛隊がこれだけはっきり軍隊としての威嚇機能を発揮するのを描いたのは初めてではないか。本来ムチャなのだが自然と揶揄的になってる感じ。日本語のセリフに字幕がついているのはどういうことだろう。
モチーフからいってもこれが韓国映画でなければいけない理由はなく、ちょっと前だったらアメリカで作られるのは当然だったタイプの 映画なのだがそれが当たり前のように韓国で実現している。
とはいえハリウッド製だったらありがちな犯人の動機を追及する過程で社会の病理を描こうとしたり、 製薬会社の 社会悪を描くといった社会的な色づけはあまり突っ込まないで、本気で絶望しなければいけなくなるあたり実感が 出ている。「007 ネバー・トゥ―・ダイ」の展開があったりするものね。
乗客たちが当然スマホでSNSを使っていて、当局が隠しておきたい情報までばんばん漏れてパニックになってしまうあたりいかにも今風。