今回、国立映画アーカイブで上映されたのは 日本で劇場公開された95分版より少し長い111分のプレ・リリース版。
わざわざどのシーンが追加あるよ変更されてるかのリストが配布されてるのはさすがに 研究機関の面目躍如。
これまでテレビでしか見ていなかったのだが、冒頭とラストに海に面した見張り場にいる二人の会話を置いて、その間に何事もなかったかのように言っているところは明らかにテレビ版にはなかった。
リチャード⋅ウィドマークの口八丁手八丁のようで結局は小悪党(作中のセリフでハスラーと言っていたよう)にすぎない男の 野心と悪あがきが しかし切実に描かれる。
作中、ショーアップされたプロレスを一切否定し 本格的なグレコローマンプロレスだけが 価値があると頑固に信じ続ける老レスラーのグレゴリウスの役を実際の往年の名レスラーのスタニスラウス・ズビスコが演じる。 この体の厚み自体が圧倒的な説得力があって、クライマックスのキャッチ・アズ・キャッチキャン式の格闘シーンは 地味な関節技の応酬なのだがすこぶる迫力がある。 決め技がベアハグっていうのは今まずやらないだろう。
ズビスコは映画「王者のためのアリア」の主人公のモデルでもある。
前に見た時はすごく技巧的な演出をしていたような気がしたが、改めて見ると安定したカットを的確に積み上げていくずいぶんがっちりした演出(ジュールス・ダッシン)でした。ラストの非情な切れ味などぞくぞくします。
登場人物の名前がグレゴリアスとかとネセロスといったギリシャ系のようなのが多い気がする。ダッシン夫人がギリシャ人のメリナ・メルクーリなのと別に関係はないだろうが。
タイトルがNight and The Cityであるように多くのシーンが夜間で、カメラを低く構えて天井を入れた圧迫的な構図がさりげなく多用されている。