prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「ジョジョ・ラビット」

2020年01月29日 | 映画
ヒトラーが主人公の少年のイマジナリー・フレンドになるというワンアイデアが核になるのかと思ったら、それは出だしに集中していて後半はヒトラーの影は次第に薄くなる。

孤独で不器用な少年がヒトラーを心の支えにするというのはありそうでもあるが、このアイデアに溺れず、母親や、母親を介してまったく対極にある存在であるユダヤ人の少女に接していくうちに、空想の産物であるグロテスクでも滑稽でもあるユダヤ人の絵が開陳されるところで、実質とイメージの捻れが現れると共に、友人としての愛嬌のあるヒトラー像は自然とフェイドアウトすることになる。

もともとヒトラーはカリスマといえるような人物ではなく、矮小な人格だからこそ弱くてしかも自分の弱さを認めない人間たちがより集まり祭り上げたのだと考えていたが、作者はその矮小さから目を離さず、ふさわしい処遇をしたといえる。
監督のタイカ・ワイティティ 自身がヒトラーを演じたことで、出演者が監督のコントロールを脱するアナロジーとも見える。

窓が人の目のように見える家のカットをいくつか放り込んでくるのも、モノとイメージとの混淆の変奏のようでもある。

靴の紐を結ぶ動作に自立を象徴させた脚本演出、足の先だけで切った芝居で押し通す大胆さ。

キャリアの長短に関わらず演者たちの演技はそれぞれ見事。





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