prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

6月21日(木)のつぶやき

2018年06月22日 | Weblog

「妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII」

2018年06月21日 | 映画
「妻よ薔薇のように」が1935年の成瀬巳喜男作品のタイトルであることがどの程度一般客に通じるかわからないが、山田洋次がこのところはっきり見せている日本映画の伝統を少しでも伝えなくてはいけないという使命感のようなものの一環であることは確かだろう。

妻夫木聡が兄の西村まさ彦に家出した義姉の夏川結衣とよりを戻す気があるのかと激しく言い合うシーンのバックで赤の他人の結婚式が展開しているという対位法は、黒澤明の「生きる」で生きたまま死んでいるようだった志村喬が自分にも何かできると目覚めるシーンのバックで女学生の誕生パーティーで「ハッピーバースデー」が歌われる演出の変奏と思われる。

寅さんの世界と通じる場所や人をちらっと見せるあたりもセルフパロディ式にやにさがった感じではなく、あの世界とはすでに距離ができているのを感じさせる。

クライマックスのまあわかりきった展開を雷まじりの豪雨を絡めながら描くタッチはさすがに手慣れたものだが、肝心の一瞬をアクションでなくセリフで先で言ってしまうというのはあまり山田洋次らしからぬ画竜点睛を欠いた感。

日本の会社人間で通してきた男がパートナーに自分の気持ちをきちんと伝えることが下手というより伝えなくてはいけないこと自体がわかっていないあたりの困ったところを繰り返し描いていて、一作ごとにラストでいったんはわかったようでもまた元に戻ってしまうあたりはシリーズものらしくもあり、実際そう簡単に進歩などしないのはそれはそうだろうとも思わせる。

「妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII」 公式ホームページ

「妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII」 - 映画.com

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6月20日(水)のつぶやき

2018年06月21日 | Weblog

「ビューティフル・デイ」

2018年06月20日 | 映画
「レオン」みたいに殺し屋が少女を救う話なのかと思ったら全然違った。(余談だが、やはり最近の「レッドスパロー」が「ニキータ」風かと思ったら全然違ってた)

何より殺しの見せ方が通常のアクション映画とまったく違っていて、直接描写を避けた事後描写であったり、監視カメラの映像で代替していたり、何やら北野武の、特に「ソナチネ」の文体を思わせる。

その文体=スタイル感を決定づけているのがこのところ「ファントム・スレッド」などでも圧倒的な存在感を放つジョニー・グリーンウッドの音楽。道を自動車が走っているところに現代音楽そのものといった厚みのある弦が響くあたり、画と音が一体になったアートを見ている気分。

終盤の場面のつながり方の省略と飛躍とツイストがどういう意味なのか当惑もさせるが刺激的。

ホアキン・フェニックスが役作りなのかどうなのかずいぶんと太目になって、殺し方もプロっぽくなくスマートでもない。
明らかにマザコンな一方で少女を助け出す(?)のがつながった不思議なキャラクター造形になっている。
(☆☆☆★★★)

「ビューティフル・デイ」 公式ホームページ

「ビューティフル・デイ」 - 映画.com

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6月19日(火)のつぶやき

2018年06月20日 | Weblog

「友罪」

2018年06月19日 | 映画
犯行時少年だったので名前が表に出ず更生して働いている殺人犯と、それと知らずに同時に同じ職場に就職して友人になった男の間の緊張感に、いったん犯された罪は法的に償われようと消えずに残り、ほとんど原罪と化したように当人だけでなく加害者家族ほか周囲の人間にもずっとつきまとう重さを執拗に追う。
薬丸岳原作らしく倫理的で簡単に割り切りない、というより本質的に解決はないモチーフ。

瑛太が初めの方で事故が起きるのをじいっと妙に落ち着いて見ていたり、暴力を振るわれてけたけた笑ったりしているあたり、どこか人間が壊れた感じをよく出した。
生田斗真の控え目な友情を感じさせる芝居と共にダブル主演ぶりは良かったけれど、周囲のキャラクターの描きこみのバランスをとるのが難しかった感あり。

「アントキノイノチ」でもそうだったが、瀬々敬久監督はピンク映画出身の割りにというか、だからからなのか一般映画でAVを見聞きする人間や出演する人を扱う時に妙に慎重になる気がする。

「友罪」 公式ホームページ

「友罪」 - 映画.com

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6月18日(月)のつぶやき

2018年06月19日 | Weblog

「ラズロ・エフェクト」

2018年06月18日 | 映画
いったん死んだ人間を無理やり科学の力でよみがえらせたら半ば死神と化して仲間を片端からあの世に送ってまわるというホラー。

主演のオリビア・ワイルドはテレビの「Dr.House」などで見ていた時からなんだか佐伯日菜子に似ているなあと思っていたが、それこそ魔女黒井ミサのように仲間を呪い殺してまわる役でした。

オリビアの回想シーンで小さい時の火遊びで起こした火事でアパートが焼けて大勢が死んだのがトラウマのようになっている描写がはさまるのだが、この回想に科学者仲間の一人の女が入り込んで子供の頃のオリビアを説得してトラウマから救うというのがまあクライマックス。
しかし、考えてみると過去のトラウマと死者をよみがえらせる方法と直接関係ないのでかなりとってつけたみたいになった。

「ラズロ・エフェクト」 - 映画.com

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6月17日(日)のつぶやき その2

2018年06月18日 | Weblog

6月17日(日)のつぶやき その1

2018年06月18日 | Weblog

「Vision」

2018年06月17日 | 映画
良くも悪くもアートフィルム。
河瀬直美監督作とあって毎度のことながら面白おかしいっていう映画ではおよそない。

自然の撮影の美しさ、甚だ抽象性の高いテーマ、森山未來が踊ると森の木に火が噴き上がるいった大胆というかかなりぶっとんだ表現、ビジョンなる「薬草」がいかなるものなのか、本当の薬草なのかある種の概念なのか具体性が薄く、想像に任せる部分が多いとも勿体ぶっているとも言える表現、などなど。

ジュリエットビノシュは出演しているのは一つの売りではあるのだけれども自然の中の一部みたいな扱いなので演技がどうこういう感じではない。
正直いうと今回はどうもいかに何でもついていきにくかった。

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6月16日(土)のつぶやき

2018年06月17日 | Weblog

「ピーターラビット」

2018年06月16日 | 映画
ウサギたちの戦いっぷりがけっこうヴァイオレントで、アニメというか「トムとジェリー」みたいなカートゥーンでやるような痛めつけ方をウサギと人間ともにばんばんやる。

カートゥーンみたいな乱暴な真似を実物の俳優とCGでやると痛さが前面に出て見ていてひきつることが多いのだけれど、そのあたりはうまく誇張と抑制を交えて、また舞台がイギリスで街も田舎もやや落ち着いた感じの風景のせいかあまりひっかからずに笑える。

アニメ「ウォーターシップダウンのうさぎたち」で首を絞める罠にかかったウサギが血の泡を吹いて死ぬのを見せた生々しさはすごかったとあまり関係ないが思い出したりした。

エンドタイトルで日本で公募されたかわいいウサちゃんの写真をえんえんと並べられたのにはちょっと参った。

「ピーターラビット」 公式ホームページ

「ピーターラビット」 - 映画.com

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6月15日(金)のつぶやき

2018年06月16日 | Weblog

「ゲティ家の身代金」

2018年06月15日 | 映画
払ってもムダだと孫の身代金の支払いを拒否するゲティ家の当主のキャラクターが、金がすべての現代的価値観の頂点をなす人物として、ほとんど中世の王のような時代錯誤的な雰囲気とともにぐるっと回って現代的になっている。
節税対策で古い美術品を抱えているあたりもそのあたりのアイロニーを画にしているよう。
しまいには身代金の支払いも節税と結びつけられるのだから、その強欲とエゴイズムにはほとんど笑ってしまう。

ストックホルム・シンドロームばりに誘拐した少年と感情的に共感するようになってしまう誘拐犯の一人のキャラクターが対照的。

本来の主演だったケビン・スペイシーがセクハラ・パワハラで馘首されクリストファー・プラマーで全面的に再撮影されたというのもすごい話で、印象が強い割りに出番の物理的な時間そのものは短いらしいが、早撮りも監督の生き残りのためのスキルに入るということだろう。

プラマー御年88歳とあってメイクでは再現しきれない老いの生々しさを見せる。

完全に誘拐業がビジネスとして展開していて債権を引き渡すように金で人質を別人に引き渡すあたり、ゲティ家とはまた別のマネー至上主義が誘拐犯側にも貫徹している。
「悪の法則」のような冷やりとした文体の凄みはないが、描いている世界の荒涼感は共通している。
(☆☆☆★★)

「ゲティ家の身代金」 公式ホームページ

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