prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「アリー スター誕生」

2019年01月14日 | 映画
初めのうちはレディー・ガガの名前も顔もほぼ忘れていた。思い出すのはものすごい歌唱力を見せるあたりからで、それと共にそれまでほぼすっぴん(少なくともそう見える)メイクもステージ用に作ったものになるが、いつものレディー・ガガの作りこんだイメージとはまた違うところにまとめている。完全にアリーという役を表現するのに徹していて、レディー・ガガを利用する部分はイメージではなく才能の方。

この物語は他にジュディ・ガーランド版しか見ていないのだが、一作目にも通じるラストの決め台詞This is Mrs.Norman Maineをどうするのか注目していた。今だとMrs.がすでに使えないのだから。しかし自分の上昇と引き換えるように退場した夫との紐帯を表明する決めの一言なのだから、なしということはありえない。
はたせるかな、I am Ally Maineになっていて、Mrs.は外していたが、しかし考えてみるとアリーはどうももともと苗字が出てこなくてビルボードに出てくる芸名もAllyだけになっている。Mainという夫の姓を名乗っていることで自然に「私はノーマンの妻です」といったニュアンスを出しているということだろう。そのセリフは決めではなく、そこから歌に移るという位置づけも適切。

冒頭からステージ前に薬を飲んでいたりして、アリーと会う前から大スターながらじりじりと転落していく予兆は出ている。その転落と引き換えにアリーを世に出すというニュアンスもある。

親子ほども歳の違う兄とのやりとりから本来父親とこういうやりとりができたのができなかった欠落感から、父親のアルコール依存症を悪いことだとわかっていながら再現してしまう心的傾向が見て取れる。

これだけ良い歌揃いというのも珍しいのではないか。その使い方のドラマ的な組み立ても見事なもの。
ステージの撮り方も観衆がほとんどボケて背景に引っ込んでいて、観衆の熱狂をはさんで歌の興奮を煽るといったことはまるでやっていない。
編集が手続き通りという感じではなく次にどういうカットが来るのかいうルーティンをうまく外して回っている。

「アリー スター誕生」 - 公式ホームページ

「アリー スター誕生」 - 映画.com

1月13日(日)のつぶやき その2

2019年01月14日 | Weblog

1月13日(日)のつぶやき その1

2019年01月14日 | Weblog

「セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣」

2019年01月13日 | 映画
極限まで鍛え上げられた身体が必ずしも健康的でなく奇妙に頽廃をまとうことがあるらしい。ロシア・バレエ団の初期のディアギレフ周辺にしてからが頽廃の塊みたいなところがあったのではないか。

バレエそのものを見せることにはそれほど主眼を置かず、背景のウクライナの、ある種明治の日本みたいに一人を出世させるために残りの家族の協力というより犠牲がむしろ主眼になっている。

「ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣」 - 公式ホームページ

「ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣」 - 映画.com

ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣(字幕版)
クリエーター情報なし
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1月12日(土)のつぶやき

2019年01月13日 | Weblog

「ダウンタウン物語」

2019年01月12日 | 映画
アラン・パーカーの監督第一作。
それまで「小さな恋のメロディ」の脚本で注目され、この出演者全員が子供のギャング映画でデビューしたから、子供専科なのかと思わせて第二作でいきなり地獄のような刑務所からの脱獄映画「ミッドナイト・エクスプレス」になったから仰天した人多かった。
今では「ミッド…」系統の過激で暴力的でグルーミーな画調の作品の方がパーカー作品のカラーになっていて、こちらの方がむしろ異色に見える。

この映画の初日のスバル座の観客のマナーがひどかったのは語り草になって、スクリーンに映ったジョディ・フォスターのアップにフラッシュをたいて写真を撮ったり(当然、真っ白なスクリーンしか映らない)、カセットテレコで録音するので電源貸してくれと事務室までコードをひっぱってきたり、といった調子だったらしい。

パーカーとすると編集を含めて音楽処理の巧さ、マイケル・セレシン撮影の光の魔術、子供の背丈に合わせてセットを細かく縮尺を変えているなどの細かいところの凝り方が見どころとなるし、それは後年の作品でも変わらない。

考えてみると「小さな恋のメロディ」というのも、小学生が結婚するというだけでなく爆弾作ってゲバルト(古語)やったりしていますからね、今だと地上波で放映できるかどうか。
マーク・レスターが父親が読んでいる新聞に火をつけるというシーン、最初見た時は意味がわからなかったが、今でいうマスゴミに対する揶揄だったのではないか。

子供子供しておらず、大人がやっていることを子供がやっているのだから大人の目から見た子供のかわいらしさといったものは薄い。ギャングごっこ映画とすると、ごっこの部分を作りこみ過ぎて子供の自由奔放な感じを削いでしまった感。

もともとパーカーはCMディレクターだし、画も音も作りこんでいくタイプではないか。
その体質は二作目以降で確立したと思しい。



1月11日(金)のつぶやき その2

2019年01月12日 | Weblog

1月11日(金)のつぶやき その1

2019年01月12日 | Weblog

「ミニー&モスコウィッツ」

2019年01月11日 | 映画
モスコウィッツが「マルタの鷹」「カサブランカ」といったハンフリー・ボガートの主演作を映画館で見ているのに対して、ミニーの方が酔って映画はウソだと悪口を言っていたりする。

この映画自体が一見してアル中やDVなど人生の「リアル」などうしようなない面を描いているようで、案外とロマンチックな、本気で愛を信じて実践しているところに着地する。
作り手は人間と俳優を、リアルとイリュージョンを同じように愛しているのだろう。
カサベテス相手だと愛ということばが割と平気で使える。

タイトルになっている二人が出会うまでが長くて、二人が対話、というより一人が一方的に喋って片方がうんざりしながらつきあわされるといった場面が組み合わせを変えて繰り返される。
それが噛み合う会話が成立するのが、M&Mが出会ってからということになる。
今気づいたのだが、イニシャルがふたりでマリリン・モンローのそれになっているのも狙ったのかもしれない。

監督脚本のカサベテスが俳優としてやっているのが出てくるなりいきなり暴力をふるう不倫男という最低な役なのが笑わせる。

ミニー&モスコウィッツ - 映画.com

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監督・脚本 ジョン・カサベテス
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1月10日(木)のつぶやき その1

2019年01月11日 | Weblog

「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」

2019年01月10日 | 映画
難病の当人のドラマであるのと同じくらいボランティアの男女二人のドラマでもあって、つまりどれだけ自分の人生を生きているのか生きたいように生きているのか、本質的なエロス(性的な意味であるより広義の生への衝動)を求めているのか、という普遍的なテーマに向う。
大泉洋の芸達者と能天気な感じが、およそ可哀そうな障碍者がけなげに生きていく泣かせる映画からむしろ対局に来た。

冒頭、砂時計のアップから始まるので、限られた命の象徴=砂時計が壊れるところで終わるのかと思うと、そこからがむしろ第二エンジン発射という感じで次の段階に入り、病状が悪化してからの闘病が悲壮ではなく

難病ものだから亡くなるところで終われば座りがいいのだが、そうはさせるかという感じでボランティア二人がどう生きていくかの話にバトンタッチする。
主役三人(大泉洋・高畑充希・三浦春馬)のアンサンブルが秀逸。

北海道の広さを生かした撮り方をしていて、風土の開放感が主人公鹿野の生き方になっている。雪に埋もれているところは出てこなかったのではないか。

生活費はどこからどう出ているのか、気になった。
しかし、障碍者ものもずいぶん進化したと思わせる。

親の世話になっていないのが、期せずしてなのかどうなのか障碍者の世話は家族がするのが当たり前という「常識」の押し付けに対するアンチテーゼになっている。

「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」 - 公式ホームページ

「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」 - 映画.com

1月9日(水)のつぶやき その2

2019年01月10日 | Weblog

1月9日(水)のつぶやき その1

2019年01月10日 | Weblog

「ワイルド・ストーム」

2019年01月09日 | 映画
原題THE HURRICANE HEIST(ハリケーン強盗)そのまんまに、物凄い嵐が接近する中の強盗計画を描くという一粒で二度おいしいを狙ったみたいな映画だが、アメリカではIMDbで50点、tomatesmeterで44点、auditence scoreで24%とひどい評判で、どんなものかと見に行ったら、前半悪くないじゃないと思いながら見たら後半どんどん崩壊してきて、それでもなんとか終わりまで持ったという感じ。

何が崩壊しているかというと色々あるが、ハリケーンの目に入ったところでカーチェイスになるのはいいけれど、ついさっきまで嵐で土砂降りだった地域を走るのに地面が乾いていて枯れ葉が舞うというのはいくらなんでもひどくないか。
嵐の中のカーチェイスを中盤で見せていて、こちらは普通に迫力があっただけに変さが目立つ。

悪者たちが初めのうち人を殺さず、先に殺すのが善玉側というのはどうもまずい。それから誰を殺して誰を殺すのかといった設定と順番がかなりムチャクチャ。意外性を狙ったのか、悪玉の凶悪さを描きたくてなのか、あっさり殺すところでハズしている。
殺した死体が次のカットでは床のどこにも写っていないなんて冗談みたいな繋ぎがあったりする。
善玉悪玉のどんでん返し的扱いも処理がまずくて混乱ぎみ。

古くなった紙幣を裁断する米連邦施設を襲うという趣向で、ヒロイン(「LOST」のマギー・グレース)の「古いお札なんかコカインとストリッパーの汗まみれ」というセリフが感じが出ている。

冒頭、1990年のハリケーンで父親を失った兄弟の確執が再び襲ったハリケーンの中で解消されるというよくあるドラマで、アメリカらしく戸棚に大量に揃えられた銃で和解した兄弟が武装してハリケーンの目に入り日が差してくる、というところで、当然二人そろって光の中を並んで歩いてくるお約束の画になるかと思ったら車の中の長々とした会話になるのはいただけない。最後に「約束しろ、こんなクサい会話は最後にすると」で締めくくったのは気がきいている。

特殊効果はさすがに手落ちなく迫力あり。
保安官役、見た顔だと思ったら「炎のランナー」のユダヤ人ランナーのエイブラハムズをやっていたベン・クロス。

「ワイルド・ストーム」 - 公式ホームページ

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