全部で四つの事故物件が出てくるが、ひとつひとつの部屋の事情はそれぞれ独立しているわけで、短編集あるいはオムニバスに近い。
そこを、解散するお笑いコンビとそのファンだったメイクの助手をしている女の子との関係で女の子に霊感があって何かいるのを先に見てしまうもので、コンビを解消した一人が事故物件芸人として売れていくのと併せて巻き込まざるを得なくなるというドラマで一本の映画として筋を通しているのが工夫。
関西のローカル局という設定にしてあるのが、狭い業界でしょっちゅう顔を合わせざるを得ない感じにマッチした。
木下ほうか演じる無茶ぶりプロデューサーなど、いかにもいそう。この人前に幽霊役もやっていたことあって、少しは祟られるのかと思ったらハズレ。
物件の値段が広さに比べていかにも安いし、東京に出たらばんと上がるあたり、特に数字をアップで見せたりしないが大画面だとわかるもので、当然ながら目が行き届いている。
ところどころ論理的にはつながっていない(赤い服を着た幽霊と同じく赤い服を着た不動産屋とか)のをえいっと霊のやることだからという感じでつなげているのは乱暴といえば乱暴だが、なんとなく通ってしまう。
亀梨和也も奈緒も普段と怖がっている顔のコントラストが強烈。同じ中田秀夫監督の「リング」で恐怖でぽかっと口を思い切り開けて顔形をまったく変えて見せた死に顔演出の手だろう。
最初に原作者の事故物件住みます芸人松原タニシを知ったのは大竹まことゴールデンラジオの大竹メインディッシュのコーナーにゲストで呼ばれた時だったが、その時話したのが湯気で曇った風呂場の鏡に「シャンプー」と浮き出たというお笑い以外の何者でもないネタだったが、映画でも完全に笑いに流している。
ホラーコメディにもできた素材だけれど、かなり本格的にホラー寄り。
しかし、クライマックスに出てくる魔王みたいなの何でしょ。
派手な見せ場にしているのはいいとして、よくわからない。