文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

太陽のシズク ~大好きな君との最低で最高の12ヶ月~

2020-01-07 09:06:27 | 書評:小説(SF/ファンタジー)

 

 この物語は一つのラブストーリーだと言えるだろう。理奈と翔太の高校3年のときの1年間の物語。

 理奈は宝石病(正式名は、限局性心筋硬化症)という不治の病を患っている。これは心臓に腫瘍のようなものができる病気で、腫瘍そのものは良性なのだが、ほうっておくと、肥大化して動脈閉塞や心不全を起こして死に至るという設定だ。手術をすれば10年程度寿命を延ばすことはできるが、完治はしない。宝石病というのは、この腫瘍は、シズクと呼ばれ、真珠や琥珀のように生物由来の宝石として扱われている。

 宝石病と診断されたのが高校2年の秋のことだ。だから理奈の一家は、東京から病院に近い司浜に越してきた。理奈も3年になって、司浜西高校に転校してきたのだ。そこで運命の出会いをする。

 実は十歳のとき、理奈は火事で自分を助けようとした父を亡くしており、家は貧乏になった。シズクはものすごく高く売れる。しかし、宿主の死後にしか取り出せない。だから理奈は大好きな家族のために手術を受けないことも考えていた。

 物語は、章ごとに、理奈と翔太の視点を変えながら進んでいく。実は、作者は物語の中にある仕掛けを設定しているのだが、これを説明するとネタバレになってしまうので、これ以上は言わない。

 プロローグで理奈は「ハッピーエンド」といい翔太は「バッドエンド」だと言っている。最初は意味がよく分からなかったが、読み終わった時、確かにそうだなと思った。涙もろい人なら、このラストには、涙するに違いない。

 ただ細かいことを一つ指摘すると、理奈の誕生日は2月29日すなわちうるう年生まれという設定だ。そして物語は理奈が高校3年の時のこと。しかし、高校3年の1月頃理奈は恋人に次のように言っている。

「二月二十八日に手術して、それからしばらく入院するの。代わりに、二十九日がある来年、お祝いしてほしいな」(p209)



 普通は、高校3年生は4月1日までに18歳になる。そして次のうるう年となるのは20歳のときである。要するに来年ではなく再来年なのだ。理奈は病気などの理由により1年遅く高校に入ったと言う設定(要するに19歳で卒業させる)なら、つじつまはあうのだが、見落としたのかと思って前の方を読み直してもそれらしい記述はない。それどころか、283ページには2年生を一つ年下と書いている。もっともこれは、翔太の視点なので、理奈が一つ上だったことをひた隠しにしていた可能性はあるのだが。

 そして、これは初読時はまず気が付かない矛盾だが、翔太パートによると、翔太が理奈から宝石病のことを聞いたのは6月頃のようだ。(p74)しかし、本書の仕掛けのことを知って読み直すと、理奈パートには、病気のことを告げたのは年が変わって、1月となっている。(p209)

 まあ、今の心理学によれば、記憶とはそのままの出来事を覚えているのではなく、脳が組み立てるものなので、翔太の記憶が違っていると思えばいいのだろうが。

 ただ、どちらも本筋にはあまり影響はないだろうと思う。例えば前者は別に誕生日を他の日にしてもいいだろうし、後者は翔太パートを削除してしまえばいいと思う。

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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白銀の墟 玄の月 第二巻 十二国記

2019-11-27 09:27:01 | 書評:小説(SF/ファンタジー)
白銀の墟 玄の月 第二巻 十二国記 (新潮文庫)
小野 不由美
新潮社

 

 中国風の異世界を舞台にした十二国記。この世界では、麒麟が、天の意思に沿って王を選ぶ。麒麟と言うのは、某ビールメーカーの瓶に絵があるように、中国の霊獣としてしられているが、この作品世界では人間の姿をしている。そして選ばれた王は不老不死になるらしい。本書は、新作文庫4巻構成の第2巻。舞台は、戴国。18年ぶりの新刊だという。この国では阿選という男が、王の驍宗に反旗を翻して、覇者となっている。

 大分前にNHKでアニメを放映していたので雰囲気は分かっていた。帯にシリーズ累計1000万部突破とあるように、熱球的なファンがいることも理解できるような気がする。

 あえて言えば、「グイン・サーガ」(栗本薫:栗本の死後、五代ゆう、宵野ゆめが書き継ぎ)となんとなく似ているのだろうか。嵌る人は嵌るんだろうと思う。今回は、私がこの作品に嵌るかどうかという実験も兼ねていたのだが、どうもそこまではいかなかったようだ。

 ハイファンタジーなのだが、その世界で無双しまくる絶対強者のようなものは出てこない。どうも古代中国を舞台にした作品を読んでいるようで、この巻を読む限り、別に異世界の物語にするだけの根拠は見当たらなかった。

「しかも、地の底から妖魔が湧く。」(p130)

「これまでに三度、出たことがある。二度が妖魔で一度は妖獣だ。」(p138)

「黄海は妖魔の跋扈する人外の地で、・・」(p191)

「瑞州に妖魔が出て大変な騒ぎになったことがございますが・・」(p308)

「獣の姿も、妖魔の影もない。」(p420)

と言うような記述があるように、この世界にも魔物がいるのだが、あまり存在感がない。確かアニメでは結構出ていたような記憶があるが、この巻では、直接は出てこず、話の中に出るばかりなのだ。

 注文したいのは、登場人物が多いので、主要な登場人物だけでも、巻頭にでも簡単な紹介文をつける方がいいと思う。それと色々な官位が出てくるが、これも組織図のようなものも欲しい。そして4巻構成にするからには、前巻までの簡単なあらすじを付けるなど、途中から読みだした人へのサービスも欲しいところだ。

 熱狂的なファンなら不要なのだろうが、そうでもない人、たまたま読んだ人にとっては、あった方が親切ではないかと思う。特に今回は、前作から年数が経っているのだから、この作品の世界観を占めすなり、なにか工夫が欲しかった。

☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

 

 

 

 

 

 

 

 

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さよならの言い方なんて知らない。2

2019-11-07 10:39:05 | 書評:小説(SF/ファンタジー)
さよならの言い方なんて知らない。2 (新潮文庫nex)
河野 裕
新潮社

 

 著者の「階段島」シリーズに続く、「架見崎」シリーズの第二弾。

 舞台は、「架見崎」という架空の街。5㎞四方の土地に、1000人の住民が住んでいる。そして、永遠に8月をループしている。8月31日が終われば、次の日は9月1日ではない。8月1日なのだ。資源は、8月1日になれば、元の通りに回復する。住民たちは、この中でいくつかのチームに分かれて、陣取りゲームをしている。端的に言えば殺し合いをしてチームの領土を広げているのだ。敵を殺せば、ポイントを手に入れられる。ポイントを稼げば能力を手に入れられるのである。

 この「架見崎」には、3大と言われるチームがある。領土が最大で総ポイント数2位の「平穏の国」、「総ポイント数」および「メンバー数」が1位の「PORT」、そしてワンマンアーミーで、メンバーは月生という男一人だけだが、個人の所有ポイントが断トツである「架見崎駅南改札前」。

 この「架見崎」というのも色々と謎が多いのだが、「運営」という言葉がそこかしこに見られることから、どうも誰かの作った仮想世界のようだ。ここで死んでも現実の世界に戻るだけらしい。

ここで死んでも、現実に戻るだけだよ。なにが悲しいってんだ(p100)



 主人公は、香屋歩という高2の少年。そして冬間美咲、秋穂栞という彼の幼馴染が主な登場人物だ。香屋の望みは、「架見崎」から争いを無くすこと。しかし、この巻では、架見崎の三分の二を巻き込むような大きな争いが起こる。

 最大領土を誇る「平穏な国」は、リーダーで死者を蘇らせる力があると言われている聖女リリィへの信仰から成り立っている。しかし物事には裏があるもの。明らかになるのは、「平穏な国」の真実。また、「PORT」にも派閥争いがあるようである。人間が集まるところには派閥が生まれ、権力の亡者が生まれるということだろうか。わずか5㎞四方の土地の中で、ポイントを求めて争う。これが人間社会の縮図を表しているような気がする。

 1巻を読んでいない人で、細かいところは分からなくても、読んでいるうちに、なんとなく想像できるだろう。

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

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世界最強の魔法剣士師匠と竜殺し

2019-10-31 08:35:32 | 書評:小説(SF/ファンタジー)
世界最強の魔法剣士師匠と竜殺し (美少女文庫)
わかつき ひかる、(イラスト)西E田
フランス書院

 ジュブナイルポルノの旗手、わかつきひかるの作品。舞台は魔法や竜の存在する異世界。主人公はウォルフという25歳の青年。竜に両親と妹を殺され、その竜を退治するために伝説の魔法剣士と言われるマスター・ルディスに弟子入りする。ところが、中年男性と思っていたルディスは、見た感じ16歳くらいの美少女。しかし実年齢は200歳。

 最初は、まったく魔力のないウォルフの弟子入りを拒んでいたルディスだが、腹ペコキャラのルディスは、料理上手な、ウォルフに胃袋をわしづかみにされ、弟子入りを許すことになる。そこは、男と女。おまけにルディスは見た感じ16歳の美少女。ということで、歳の差なんと175歳のカップルが出来上がる。

 昼は剣術の稽古。夜は攻守入れ替わり、別のことに精出す。ルディスは、初めての男であり、超年下のウォルフがかわいくって仕方がない。ウォルフも、初めてをもらったルディスのことが大好きだ(なお、ウォルフもDTだった)。ちなみに、ルディスはMっ気もあるようで、色々目覚めたようである。端的には、次のルディスのセリフに現れているだろう。ウォルフは、ちょっとSっ気があるようだ。つまりいい組み合わせということだ(何が?)

そ、その、お尻くらいなら、叩いても、(中略)ししし、縛ってもいいぞ(p143)



 実は、ルディスは、魔法実験の失敗で、若化の魔法にかかっており、最近若返りの速度が速くなっている。あと4年でこの世から消滅してしまう運命なのだ。

 しかし、わかつきひかるの作品はハッピーエンドで終わるものが多い。この作品も例に漏れずハッピーエンドとなっている。その意味では安心して読むことができるだろう。美少女文庫なのでイラストも綺麗だ。

☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

 

 

 

 

 

 

 

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よるのばけもの

2019-08-16 09:22:57 | 書評:小説(SF/ファンタジー)
よるのばけもの (双葉文庫)
住野よる
双葉社

 作者は、デビュー作の「君の膵臓をたべたい」で有名な住野よる。これが3作目の作品にあたるようだ。そして私にとっては、これが初めての住野よるの作品。

 主な登場人物は安達(あっちー)と矢野さつきという中学生。内容は要するにいじめ。さつきは、緑川双葉とい同級生の少女の読んでいる本を取り上げ、雨の降っている校庭に投げ捨てたことからクラスでいじめを受けるようになる。

 あっちーは、夜になるとばけものに変身する。ある日の夜、ばけものの姿で、学校に忘れ物を取りに行くとさつきがそこにいる。彼女は「夜休み」とか訳の分からないことを言う。夜の世界で、次第に交流を深めていくあっちーとさつき。しかし、昼の世界ではあっちーはクラスで浮くことを恐れ、相変わらずさつきをいじめる側だ。この作品の二つ目のテーマは人間は二面性を持っているということかもしれない。

 しかし、どうしてみんな同じに行動するのか。人と違ったことをしてはいけないのか。作品では、井口という女生徒は、さつきの落とした消しゴムを拾っただけで、いじめのターゲットにされる。要するに未熟な者たちは誰かいじめる対象を探しているのだろうか。それはちょっとした違いを探すことで始まる。

 最後の場面は特に胸糞が悪くなる。あっちーと仲が良かった工藤という女生徒が、さつきの挨拶に応えただけで、あっちーと訣別してしまう。こいつバカかと思ってしまい、私には理解できないことだらけだが、これが最近の子供たちの姿なんだろう。でもこの胸糞の悪さはどうしようもない。

 この作品を読んで思うのは、色々な伏線が回収されてないということ。例えば野球部の部室のガラスを割ったのは誰か。中川の上靴をボロボロにしたのは誰か。なぜさつきは、双葉の本を捨てたのか。等々。さつきは何か知っているようで、なんとなく見当はつくのだが、明確には語られない。

 もしかすると、このあたりの解釈は読者がしろということで、わざと回収していないのかもわからないのだが、どうもこのような作風は苦手だ。このあたりは好みが別れるのだろうが、私にはあまり合わないかもしれない。

☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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奴隷エルフ解放戦争 姫騎士と呪いの首輪

2019-08-12 09:06:24 | 書評:小説(SF/ファンタジー)
奴隷エルフ解放戦争 姫騎士と呪いの首輪 (美少女文庫)
内田 弘樹、(イラスト)ななお
フランス書院

 主要な登場人物は、エルフの姫騎士・アイシャと帝国の将軍・マルクス。ただし二人とも「元」がつき、現在は剣闘奴隷。アイシャは帝国に侵略され、マルクスは皇帝の不興を買ったためだ。しかし二人は反乱を企てる。武器は、アイシャの力とマルクスの知略と。


 アイシャは強大な力を持つのだが、皇帝によりそれを「呪いの輪装」という6つの魔道具により封じられている。首にひとつ、手にひとつ、太腿にひとつ、足首にひとつ、両耳にひとつづつ。一見アクセサリーにしか見えないが、アイシャ本来の力を取り戻すには、それを全部外すしかない。そして、その解呪条件は、いかにも美少女文庫らしく、その条件にあったHをすること。

 この皇帝というのがとんだエロおやじで、自分からエロエロを求めないと、「呪いの輪装」をしたままだんだん強いやつと闘わせるというのだ。要するに死にたくなければ、自分からエロエロなおねだりしろと言うわけである。

 なにしろアイシャはこれまでに、そんな経験がなかったのだが、マルクスと魔道具を外すためにいろいろ試して、あんなことやこんなことや、次第に二人は、いちゃいちゃラブラブ。「昨日の敵は今日の友」、いや「友」を通り過ぎて、いちゃいちゃラブラブ。おまけにマルクスの元部下までエルフさんとカップルになりいちゃいちゃ。魔道具を全部外すことが、反乱が成功するための大きな条件なのだが、とにかくいちゃいちゃラブラブ。

 もちろんアイシャは、エルフなので超絶美少女と言う設定だ。おまけに若干ツンデレかも。エルフ萌え、美少女萌えの人にはいいと思う。

☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

 

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君待秋ラは透きとおる

2019-07-05 21:35:51 | 書評:小説(SF/ファンタジー)
君待秋ラは透きとおる
詠坂 雄二
KADOKAWA

 

 本書は、「匿技」という一種の超能力を持った人たちの物語。タイトルの君待秋ラというのは、ヒロインの名前で、何でも透明にする「匿技」を持っている。そして彼女に頭部を透明にされると、光が旨く網膜に入らないため、目が見えなくなる。彼女には君待春トという全盲の双子の弟がおり、秋ラは彼が目が見えないのは自分のせいではないかと悩んでいる。

 そんな彼女が所属することになった「日本特別技能振興会」。そこには、「匿技」を持った「匿技士」が所属しており、君待は10年ぶりの「匿技士」ということになる。この「匿技」というのは色々なものがあり、彼女の同僚となる麻楠均などは、なんと鉄筋を生成するというなんだかよく分からないものだ。このほかに、猫に変化したり、空間を切り取ったりと色々な力を持った「匿技士」が登場する。

 この振興会の設立に関わったのは、戦後の混乱期に烈女と呼ばれた汐見とき。ところが、彼女が天寿を全うし、その遺体を狙って何者かが襲撃してくる。果たしてその正体は。

 本書の特徴としては、「匿技」に対して一応の物理学的な理屈をつけているところだろうか。いろいろ突っ込もうとすれば可能なのだが、多くのこの手の作品が問答無用で超能力や異能力を出しているものよりはいいのかもしれない。

 しかし、この作品の本質は、おそらく秋ラと春トの姉弟愛にあるのではないだろうか。色々な疑問を残しながらも、結局は収まるところに収まったという感じだろう。

☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

 

 

 

 

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僕には家事妖精なメイドがいます

2019-06-21 09:15:55 | 書評:小説(SF/ファンタジー)
僕には家事妖精なメイドがいます (美少女文庫)
青橋由高
フランス書院

 主人公は臼木英太郎という男子高校生。色々事情があって、祖父の持ち物である洋館に引っ越してきた。なんとその洋館はシルキーという家事妖精付き。この家にある暖炉についてイギリスからやってきたらしい。それも超絶美女で出るところは出ておりスタイル抜群。

 シルキーとは、イングランドに伝わる家事をやってくれる妖精のことだ。絹のドレスを着ているのでシルキーと呼ばれる。

 そのシルキーの名は茶野絹葉。イギリスから来ているのにどうしてそんな名前なんだろうというツッコミはさておいて、英太郎は、「お絹さん」と呼ぶ。もう完全に、イギリスから来た感じではないような気がするが、気のせいか。

 絹葉は、家事妖精なので、家事全般はもちろん、英太郎のお世話も行う。もちろん夜のお世話まで。

 英太郎は絹葉に一目ぼれ、絹葉も英太郎のことが大好きに。2人が出会ったときは、絹葉はちょっとツンのようだったがあっという間にデレ状態になってしまう。その後は、何につけてもとにかく2人いちゃいちゃ(笑)。

 いや、こんな妖精付の家に住んでみたいという人は結構多いんじゃないかな。いくら人外でもこんなに可愛らしければ構わないんでは。

☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ダーティペアの大冒険

2019-05-26 10:05:34 | 書評:小説(SF/ファンタジー)
ダーティペアの大冒険 (角川文庫 緑 544-1)
高千穂 遥
KADOKAWA

 みなさんはダーティペアを知っているかな。昔女子プロレスで似たような名前があったことを覚えている人は多いのではないだろうか。実は作者は大のプロレスファンで、そこからインスパイアされたらしい。


 とはいっても、この作品はプロレス関係ではなく、スペースオペラ。ケイとユリという二人の美少女が宇宙を舞台に大活躍いや大暴れするというものだ。なぜかこの第一巻は、ハヤカワ版と角川版があり、私の読んだのは角川版。でも最初に読んだのは、SFマガジンに掲載されたもの。ヒロイン二人のなんともハチャメチャぶりに一遍に引き込まれた。

 そして彼女たちが所属するのがWWWA。といっても女子プロレスの団体ではない。世界福祉事業協会(Worlds Welfare Work Associatiron)という銀河連合の付属機関なのである。彼女たちはそこのトラブル・コンサルタント略してトラコン。強大な権限を持ち、人類に関するあらゆるトラブル解決のために働くのである。

 彼女たちの正式なコードネームは、「ラブリーエンジェル」。しかし、彼女たちの行くところ屍の山が築かれる(彼女たちの責任ではないが)ので、ダーティペアと呼ばれている。

 この巻で彼女たちが訪れるのが、惑星グングル(ダーティペアの大冒険)と惑星ラメール(田舎者殺人事件)。期待にたがわず、いろいろやらかした結果、なんと後者では星一つ火の海にしてしまった。そしてこの2作の間に、惑星グングルでやらかしたことを部長に怒られ、酒場でくだを巻いている様子(酒場にて)が挿入されている。

 まあ、まじめに取ればかなり悲惨なのだが、二人のおバカ加減がなんとも面白く、それほど悲惨さは感じられない。もうハチャメチャでとにかく痛快なのだ。

☆☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

 

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書評:吸血鬼メイドさんは甘やかしたい

2019-03-02 09:18:38 | 書評:小説(SF/ファンタジー)
吸血鬼メイドさんは甘やかしたい (美少女文庫)
クリエーター情報なし
フランス書院

・ちょきんぎょ。

 主人公の総士は、放浪癖のある母親の湊から手紙をもらい、ある洋館にやってくる。そこに待っていたのは、シルヴァと名乗る銀髪巨乳の美少女メイド。

 実はその美少女はタイトルから分かるように吸血鬼なのだが、別にホラー話ではない。美少女文庫の一冊であることから想像できるように、総士はシルヴァのご主人様となって二人でラブラブイチャイチャ。シルヴァは吸血鬼なので人間に比べるとはるかに寿命が長い。なんと500年も守ってきた純潔を総士に捧げて、ラブラブ度はもはや天井知らず。

 シルヴァは前の主人である吸血鬼につれられて多くの仲間と共に日本にやってきた。しかしシルヴァ以外は陰陽師に退治されて、彼女のみ屋敷に縛り付けられた。実は湊が総士を呼んだのは、シルヴァをその呪縛から解放するためだ。その方法はネタバレになるのでここには書かないが、まあ美少女文庫らしいと言えるだろう。

 シルヴァは吸血鬼という設定なのだが、とっても可愛らしい。人外美少女萌え(いるのか?)の人に薦めたい一冊。

☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

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