テレビの必殺シリーズの顔といえば、故藤田まことさんの中村主水を連想する人が多いと思うが、実は故緒形拳さん、林与一さん主演による「必殺仕事人」を嚆矢とする。調べてみると1972年9月から1973年4月に放映されていたので、若い人には知らない人が多いと思うが、その後映画もつくられたので、もしかしたらそちらの方で知っているかもしれない。
藤枝梅安とは故緒形拳さんが演じていた殺し屋である。殺し屋というのは裏の顔で表の顔は腕はいいが不愛想な針医者である。この梅安の手口というのが針で延髄を刺すというもの。ただしこの第1巻ではかならずしも延髄というわけではなく、心臓を狙ったものもいくつか見られる。
テレビドラマの仕掛人の方はどうだったか覚えていないが、この作品では仕掛人は「蔓」と呼ばれる顔役からの依頼で殺しを行うのだ。顔役に依頼する者は「起り」という。
仕掛人には「起り」の情報は知らされない。誰から頼まれたのかは分からないのだ。ただどこのだれを仕掛けてくれと言われるだけだ。だから仕掛ける相手が善人か悪人か分からない。確か中村主水たち仕事人は、背景を調べて相手を選らんでいたと思う。つまり隠れたテーマとして勧善懲悪があったように思う。一方この仕掛人の方は、依頼を受ければ相手かまわずという感じだ。結果として悪人が多いが、善人を手にかけることもある。それが第1話によく表れている。
絵柄はいわゆる「劇画調」で最近の主流と比べると若い人はちょっと違和感を感じるかもしれない。しかし、そのタッチが梅安さんとよく合っていると思う。
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