文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

仕掛人藤枝梅安1

2024-11-28 17:53:02 | 書評:その他

 テレビの必殺シリーズの顔といえば、故藤田まことさんの中村主水を連想する人が多いと思うが、実は故緒形拳さん、林与一さん主演による「必殺仕事人」を嚆矢とする。調べてみると1972年9月から1973年4月に放映されていたので、若い人には知らない人が多いと思うが、その後映画もつくられたので、もしかしたらそちらの方で知っているかもしれない。

 藤枝梅安とは故緒形拳さんが演じていた殺し屋である。殺し屋というのは裏の顔で表の顔は腕はいいが不愛想な針医者である。この梅安の手口というのが針で延髄を刺すというもの。ただしこの第1巻ではかならずしも延髄というわけではなく、心臓を狙ったものもいくつか見られる。

 テレビドラマの仕掛人の方はどうだったか覚えていないが、この作品では仕掛人は「蔓」と呼ばれる顔役からの依頼で殺しを行うのだ。顔役に依頼する者は「起り」という。

 仕掛人には「起り」の情報は知らされない。誰から頼まれたのかは分からないのだ。ただどこのだれを仕掛けてくれと言われるだけだ。だから仕掛ける相手が善人か悪人か分からない。確か中村主水たち仕事人は、背景を調べて相手を選らんでいたと思う。つまり隠れたテーマとして勧善懲悪があったように思う。一方この仕掛人の方は、依頼を受ければ相手かまわずという感じだ。結果として悪人が多いが、善人を手にかけることもある。それが第1話によく表れている。

 絵柄はいわゆる「劇画調」で最近の主流と比べると若い人はちょっと違和感を感じるかもしれない。しかし、そのタッチが梅安さんとよく合っていると思う。
☆☆☆☆









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鉄鉢と魚籃と――其中日記から――

2024-11-26 11:25:14 | 書評:その他

 山頭火は昭和7年から13年まで小郡(現山口市小郡)にある「其中庵」ですごした。そこで書いた日記が「其中日記」である。私は小郡(現新山口駅)にはよく行くのだが、残念ながら其中庵を訪れたことはない。地図で見ると、それほど新山口駅から離れていない。後学のために一度訪れてみたいものだ。

 さて本書であるが、本書は副題に「其中日記から」とあるが、日記に書かれたものをそのまま載せたものではない。日記を元に書き直したエッセイであり「層雲 昭和十年十月号」に掲載したものだ。層雲とは自由律俳句の俳誌で荻原井泉水の経営・編集で創刊したものだ。

 「其中日記」は青空文庫で全16巻(13巻、14巻は、(十三)と(十三の続)となっているので、「其中日記」としては十五まで)もある。この作品は「其中日記」のどれに当たるのだろう。色々調べてみるとこの作品は昭和10年に書かれた「其中日記(八)」に当たるようである。

 描かれているのは9月3日から5日の3日間。別に大きな出来事がある訳でもなく、今で言うスローライフの毎日。貧乏暮らしだが、山頭火の日常が伺えるようである。
☆☆☆







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砂の薔薇1-3

2024-11-21 18:08:47 | 書評:その他



 最近新谷かおるさんの漫画がマイブームだ。新谷さんは1951年生れで現在73歳らしい。ちなみに奥さんは漫画家の佐伯かよのさんである。なんと少女漫画家志望だったらしく、デビュー作も少女漫画である。残念なことに2017年に休筆宣言をしたというからもう新作は読めないかもしれない(一応一時休筆と言うことにはなっているようだが)。

 さて本書の方だが、主人公は真理子・ローズバンク(マリー:純粋の日本人だが、米国人の夫と結婚してローズバンクという名字になった)テロ専門の民間傭兵組織CAT(Counter Attack Terrorism Tactical Organization)のディビジョンMの美貌の指揮官である。この組織の実行部隊は女性部隊のセクションFと男性部隊のセクションMに分かれており、それぞれいくつかのディビジョンと呼ばれる部隊に分かれている。

 彼女は「薔薇のマリー」と呼ばれているが、それは左胸に薔薇を彷彿させる傷跡があることによる。この傷跡は夫と息子を亡くしたときについた。

 マリーは、最愛の夫ハロルドと息子ティミーに囲まれ幸せに暮らして居た。しかし、テロによって夫と息子を奪われる。これが彼女がCATに入った理由だ。テロを憎むのは分かるがテロ専門の傭兵部隊に入ろうというのはあまりいないだろうと思う。

 マリーの舞台は女性だけからなっており、テロ組織に立ち向かう。アマゾネスという連中もいるくらいだから、強い女性ばかりなのだろう。こういった強い女性が好きな人も結構いるのではないかと思う。

 新谷さんは少女漫画から入ったようだが、絵柄の方もそんな感じだが。松本零士さんのアシスタントをしていたこともあり、メカニックの描き方もすばらしい。こう書くと人物とメカニックがミスマッチのように思えるが、実際にはそんなことはない。一度読めばハマってしまう人も多いだろう。
☆☆☆☆☆



























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マイコン刑事【完全版】1

2024-11-17 12:22:34 | 書評:その他

 マイコン、なんとも懐かしい響きだ。昔はパソコンというのは殆ど聞かず、もっぱらマイコンと言っていた。最近はマイコンというと電化製品に組み込まれたマイクロプロセッサーを言う事が多い。

 でもこの作品に出てくるのはマイコンというよりはポケコン。そう某メーカーから出ていたポケットコンピュータである。実は私も持っている。使うのは警視庁・特捜一課に配属された矢崎大介。この矢崎刑事、なにかとポケコンでBASICのプログラムを組んで、犯罪捜査に役立てる。

 そう昔のパソコンはBASICが標準装備だった。立ち上げたら、即BASICが使えたのだ。もちろんポケコンも同様。このBASIC標準装備というのも懐かしい。私も結構仕事や遊びで使っていたものだ。ちなみに、昔はパソコンが使えると言ったら、プログラムが書けるということ。今のようにいかにアプリに詳しいかというのとは全然違うので隔世の感がある。

さてこの巻の話の方だが、一言で言えば特捜一課とテロ組織との戦い。敵はなんと、バズーカ砲やミサイル、手榴弾なんかまで持ち出してくる。もう戦争のようなものだが、これに立ち向かう特捜一課は銃と装甲車(パトカー型もある)。

 しかし、矢崎のポケコン、事件解決の原動力と言っても過言ではないのに、いざというときには投げて武器にしたり、踏みつぶしたりとちょっと扱いが雑かな。それに課長を神村(むら)さんと言っているのも気になった。課長なら課長と呼ぶのが普通じゃないかな。それともこの職場がものすごくフレンドリーなのか。
☆☆☆
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読んだら勉強したくなる東大生の学び方

2024-11-15 11:24:32 | 書評:その他


 私は生涯学習と言うことに力を入れている。専門は電気工学だが、文系一般にわたっても学ぶのは好きだ。書評も生涯学習の一環として書いている。教えるのも割と好きで、電気技術者を目指す人向けに記事を書いたりしている。そんな私の取り組みのヒントになるかもと思い、本書を読んでみた。

 本書は、著者の分身と思われる「先生」が中学生の「サチ子」と小学生の「ショウ」の二人に勉強の面白さを教えていくという形で展開していく。対象となるのは、「国語」、「英語」、「算数・数学」、「理科」、「社会」の主要5科目。そして「探求」。

 本書に述べられていることで、次のようなことには賛成である。すべてのことには理由があり、理科はそれを調べる学問であるということ。しかしまだ理由の分かっていないものも多いので、それを解明出来たらノーベル賞が貰えるかも。また、社会は決して単なる暗記課目ではなく、他の出来事の間に関連性があるという見方で学んでいけば、楽しく学ぶことができるということ。

 ただ「なんがい」と聞いただけで「3階」の事だと分かるというのは言い過ぎだと思う。「かい」ではなく「がい」というのは3階だけだというのがその理由だ。いろいろ調べると「何階」を「なんがい」と読む人はけっこういるようだ。だから「なんがい」と聞いただけでそこが3階だと判断することはいささか早計ではないだろうか。また私自身は「3階」を「さんがい」とは言わず「さんかい」という。ついでに言うと「4階」を「よんがい」と言われてもそう違和感はない(自分では使わないが)。本書には「あ行+ん+あ行」の言葉の場合、後ろのあ行の言葉には濁点がつくことが多いと言っている。それでは「反対」はどうなのか。「はんたい」とは言っても「はんだい」とは言わない。「多い」と言っているので、例外があってもいいのだが、このような例外を探してみるのも良い勉強になるのではないだろうか。(pp19-20) つまり、書かれていることを鵜呑みにせず反例になりそうなものを探してみるのも大切だろう。

 「算数・数学」の章では偏差値の事に触れていないのはどうしてだろう。今や数字だけが独り歩きしている観もある偏差値だが、あれは母集団が同じでないと比べられない。例えば偏差値が70といっても、平均値が20点の母集団の中で比べるのと平均値が80点の母集団の中で比べるのは全く違うと言うのは言うまでもないだろう。

 また、「探求」の章では大学では、答えのない問を考え続けることが求められる。ただ教授の話を聞いたり、先行研究とか論文を読んで勉強したりするだけでは、卒業すらできない(pp170-171)と言っている。本来はそうなのだが、残念ながら、世の中にはそれで卒業できる大学がほとんどだろう。おまけに先行研究とか論文を読んで勉強したりするのは少数派で、家では殆ど勉強せず講義にさえ出席していれば、自分は勉強していると勘違いする。これはアニメなどの影響もあるだろうと思う。

 ただ生徒が小中学生ということもあり、さすがに大人の学びのヒントとなりそうなものはあまり見当たらなかった。
☆☆☆
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桐谷さんちょっそれ食うんすか!? 18

2024-11-06 11:34:28 | 書評:その他

 立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花、美少女で、憧れる人も多い桐谷さんだが、ひとつ他の人とは違うところがある。とにかく雑食に目がないのだ。ここでいう雑食とは、肉食、草食と並んでよく言われる、肉も植物もどちらもいけるという意味ではない。要するに俗に言うゲテモノ食いのことである。とにかくゲテモノを食べたがる。

 この巻で食されるのは、タツノオトシゴ、血の味アイス、100話記念の人気上位雑食、ウミヘビ、パラミツ(肉の味がするというフルーツ)、ビール粕から作る世界一まずいというジャム。それにしてもよくこれだけ食べられるゲテモノを探してくるものだ。

 なんと、この作品、フランス人の副担当編集がつくとのこと。まだまだ雑食には慣れていないようだが、これからどう変わっていくかが楽しみである。

 元科学部部長(現在は大学でヤバサイエンス続行中)の妹が入学してきて芝蘭高校(桐谷さんの通う高校)はますます面白くなりそう。

 ところで巻末の次巻の予告では、桐谷さんラブの小清水くん、なんか雑食同好会の裁判にかけられているが、何をやったんだ?
☆☆☆☆
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駅弁ひとり旅1

2024-11-04 19:59:19 | 書評:その他

 主人公は鉄道に乗るのと駅弁が大好きな中原大介というおじさん。妻の優子から結婚10周年のプレゼントとして日本一周鉄道の度に出ることになる。この時点で、おじさんたちは涙にむせぶのではないだろうか。ホンマええ嫁さんや。

 大介が東京駅から乗ったのが今はなき寝台列車のブルートレイン。そういえば夜行寝台列車、昔は結構あったようだが、今は定期運行しているのはサンライズエクスプレスだけらしい。最も臨時で運行している列車もあるようなので、乗りテツの人はそちらも狙い目かも。ただ超豪華らしいので、運賃がどのような設定なっているかは自分で確かめて欲しい。

 大介君、ブルートレインの中で尾崎菜々という女性記者と知り合う。やはりむさいおじさんより若い美人の女性を主人公にした方が読者の受けがいいからか、続編の「新・駅弁ひとり旅~撮り鉄・菜々編~」では、この菜々さんちゃっかりサブキャラからメインキャラに格上げされている。

 ところでこの第1巻では九州各地を巡り、駅弁を紹介するという構成になっている。ただ20年前の漫画なので、今でもここに紹介された駅弁が売られているかどうかは分からないが、見覚えのあるものもいくつかあるので、興味のある方は確かめてみるというのも面白いのではないかと思う。
☆☆☆☆












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自分で治すゆがみと痛み ゆびで改善

2024-11-02 14:46:48 | 書評:その他

 本書は約15年間整体をしてきた著者の経験を元にしたものである。私も最近寄る年波のせいか足が少ししびれるようになった。それが少しでも改善すればとの思いから、本書を読んでみようと思った。

 体のゆがみから様々な不調が発生する。だから体のゆがみを直せば不調が改善する。このことは多くの整体師がいることから理解できるだろう。

 ただ、本書にあるような共鳴法整体とかそれを著者が発展させた共鳴ゆび整体というのはデータ不足だと思う。言っておきたいが、それらを否定するつもりはまったくない。人間の体は不思議なものだ。まだまだ分かっていないことの方が多い。

 施術を受けた母数も良く分からない。少なくともきちんと母数を確保して、片方はこの方法、もう片方は違う方法で比較し、ちゃんと統計処理をしないといけない。ブラセボ効果でなく、実際に効果があることを証明しないと私のような理系人を納得させることは無理だと思う。一番いいのは誰もが納得できるような理論でそうなるのかを示すことだろうが、今の科学ではたぶん無理だと思う。だから次善の策としてデータを積み重ねるという訳だ。

 ともあれ「鰯の頭も信心から」と言う言葉もあるように、これをやることにより不調が解消されるならそれでいいと思う。本書に掲載されていることをやるのにお金はかからないし、時間もそれだけかからないからだ。
☆☆☆















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四谷怪談異説

2024-10-31 11:21:56 | 書評:その他

 四谷怪談といえば、鶴屋南北の作品のうち有名なものの一つだろう。実は鶴屋南北というのは、歌舞伎狂言の作者で襲名するものだったようだ。だから5人の鶴屋南北がいるが、この南北は4代目。通常鶴屋南北と言えば、この4代目を指すらしい。

 四谷怪談は、怪談物として有名だ。不誠実な夫・田宮伊衛門によって殺されたお岩さんが亡霊となって伊右衛門に祟りをなし、遂には田宮の家を亡ぼしてしまうというのが一般の人が知っている話だろう。そして、そんなお岩さんを祀ったのがお岩稲荷と言われている。

 しかしこれには異説がある。下町派すなわち町人派の唱えるのは怪談なのだが、山の手派すなわち武家派によって唱えられていたのは一種の美談。この話においては、伊右衛門もお岩さんもハッピーエンドになっている。そしてお岩稲荷は、お岩さんが信心していたお稲荷さんで、この話を聞きつけて自分も拝ませて欲しいという人が増えた結果が今のお岩稲荷になったというものだ。

 怪談か美談か。今となってはまず分からないが、どんな話にも真反対の説がある。自分の立場や物の見方などを反映していることが多い。くれぐれも片方の話だけを聞いて、それを鵜呑みにすることがないようにご用心、ご用心。
☆☆☆












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神眼の勇者1,2

2024-10-21 09:33:12 | 書評:その他



 これも異世界転移ものだ。主人公は丸太真というニートの青年。なぜか突然アステナという女神に召喚され、マナステシアという異世界へ行ってしまう。ところがこの女神様とんでもないビッチ。自分で召喚したくせに、就社や英雄の素質がないとばかりに、クズ呼ばわりして異世界のどこかにポイされてしまう。でも捨てる神あれば拾う神あり。老婆に扮していた別の女神さまに新設にしたことから、使途になることを勧められ、神眼の力を与えられる。

 なんとか最初の街までたどりついたのはいいが、その街はゾンビに汚染され生き残りはわずかに5人。しかも2人は双子の胎児。そのうちのひとりはなんと大魔女の転生者。ただし、殆どの魔法は忘れているらしい。

 真の使う武器がなんとも面白い。なまえからなんと丸太なのだ。剣や槍の才能はないようだが、丸太を持てば最強。おまけにルースという丸太匠(ログマスター)に師事して丸太道をブラッシュアップしたり、神眼がレベルアップして、眼からビームを出したりともうシッチャカメッチャカ。

 ところでアステナの使途と言う勇者。さすがにビッチ女神の使途だけあり、とんでもないクズ。

 不思議なのは、真の丸太。別に女神が与えた訳ではないのに、どうしてあんなに強い。それに言葉で苦労しているシーンもないし、もしかすると異世界ものによくある転移特典か?
☆☆☆☆
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