サイン会の死 (本の町の殺人2) (創元推理文庫) | |
クリエーター情報なし | |
東京創元社 |
ミステリー専門の書店「ハブント・ゴット・ア・クルー」の店主・トリシアが、殺人事件の謎に挑むというコージーミステリー。「本の町の殺人」の続編となる「サイン会の死」(ローナ・バレット/大友香奈子:創元推理文庫)だ。
物語の舞台は、ニューハンプシャー州にある田舎町ストーナム。古書と専門書の書店が集まる読書家の聖地という設定である。トリシアの店に、サイン会のために呼んだベストセラー作家・ゾウイがトイレで殺される。おかげで、保安官の許可があるまで店を開けられないはめに。ところが、トリシアは女保安官のウェンディとは馬が合わず、なかなか許可が出そうにない。このまままでは、経営の危機に。ということで、トリシアは事件を調べ始めることになるのだが、なんとゾウイに盗作疑惑が浮かんでくる。さらには、作家の姪、キンバリーが襲われ、瀕死の重症に。
そこで、トリシアが名探偵ぶりを発揮して、見事に事件を解決といきたいところだが、この人どうも詰めが甘い。なかなかいいところまで真相には迫っていたのだが、もう少しで、無実の人間を犯人にしてしまうような迷探偵ぶりだ。結局、せっかくの推理も、最後に見事にひっくり返ってしまう。
真犯人は、ちょっとサイコなところのある人物だったが、これだと、あまり動機というものが重要でなくなってくるので、犯人を意外なところから、簡単に引っ張り出せてしまう。私は、あまり好きではない。本作は一応ミステリーなのだが、事件の謎解きよりは、ストーナムの人間関係の方が面白いだろうと思う。
最後は、色々な事が大小全て片付き、なんとなくハッピーエンドになった感じだ。トリシアと姉のアンジェリカとはこれまであまり良い関係ではなかったようだが、この事件を通じて姉妹の絆が深まる。酷い目にあったキンバリーだが、結局恋人を得たうえに作家デビューもできそうだ。アンジェリカも念願の料理本が出版されるようだし、菓子職人のニッキも母親との再会を果たした。おまけに、町を悩ませていたカナダガンの糞問題も解決しそうである。
この作品では、基本的に女性が中心で、男は脇役を演じている。そのせいかストーリーはなかなか軽快でとても読みやすい。ただ、イラストは少し残念な感じがあるが。
☆☆☆☆
※本記事は、「本の宇宙」と同時掲載です。