文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

ビタミンF

2021-09-30 19:58:20 | 書評:小説(その他)

 

 本書は悩み多き7人のアラフォー男たちを描いた短編集だ。このアラフォーというのは微妙な年齢である。会社人生では先が見えかかっているが、まだ確定はしていない。これからどう転ぶか分からないのだ。

 何も会社だけではない。家族の問題もあるのだ。子供たちは丁度思春期と言う場合も多いだろう。そして、子供は自分の見えている範囲でしか考えられない。お父さんが、どんなに会社でがんばっても、それは子供たちにとってはないものと同じなのだ。だから非行に走る子供も出てくる。万引き不純異性交遊など。

 特に女の子がいる場合は大変だろう。簡単にろくでもないチャラ男に引っかかる。収録されている作品のうち「パンドラ」はそんな家庭を描いた話である。この家には奈穂美と言う中学生の娘がいるが、万引きで捕まる。その娘が付きあっているのが高校を中退してスケボーばかりしているヒデ。

 どう考えてもろくでもない奴なのだが、彼が万引きしたのがコンドーム。奈穂美の母親の聞き込みによれば、やはりろくでもない奴で、10代のくせにジゴロ気取りで、女をとっかえひっかえしているという。しかし、僅かにしても、こういうろくでなしの好きな女の子がいるのは事実である。そして、男にもこういったろくでなしがいるので、人を見る目を養わないといけないだろう。

 どの作品からも中年真っ盛りの男たちのペーソスが感じられ、共感するおじさんも多いだろう。

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

永遠の家

2021-09-30 19:27:55 | 書評:小説(その他)

 

 私にとっては初めてのスペイン文学ということになるだろうか。昔「カルメン」を読んだことがあり、てっきりこちらが初めてのスペイン文学だと思っていたのだが、調べてみると、確かに舞台はスペインだが、作者のメリメはフランス人のようだ。

 私が、スペインで連想するのは、闘牛、フラメンコ、侵略者の国といったところか。しかし、この作品で語り手になるのは、解説や帯によれば、腹話術師らしい。

この短編集は腹話術師が語り手なのだが、(後略)(p188)



 スペインで腹話術師がどういった位置づけにあるのかは知らないが、確かに腹話術師と明記してある作品もいくつかある。しかし、この単語が出てこない作品もあるのだ。例えば「僕が願っている死に方」と言う作品は、本文がたった2ページしかないが、語り手の職業に関する記述は見られない。語り手が腹話術師だということが、テキストだけからよく判定できたなと感心する。文学読みなら行間を読めとでもいうのだろうか。それでは私は永久に文学読みにはなれそうもない。

 本書に収められているのは12編の短編。40ページを超えるものから、ショートショートといってもいいような2ページものまで、長さはまちまちだ。。読んでいて感じたのは、文学好きなら評価が高いだろうなということ。でも私には合わない。

 読んでいて、内容がすらすら頭に入ってこないし、ストーリーのヤマの様なものも感じられない。正直面白さを感じられないのだ。

 本の紹介に次のようにあったので、かなりの期待があったのだが、読むとかなり当てが外れた感じだ。あまり幻想的な感じも受けなかったし。

芸術の破壊と再創造をめざすスペイン文学の奇才が綴る〈虚空への新たな跳躍〉を試みる腹話術師の悲しくも可笑しい幻想的連作短編集。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

銭形平次捕物控 100 ガラツ八祝言

2021-09-29 08:34:27 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

 

 なんと、平次の子分のガラツ八こと八五郎が大店の酒屋・多賀屋に婿入りするという。もちろんそんな訳はない。お福という多賀屋の娘が、婿をとるというので、ガラツ八がある事情から途中まで本当の婿・錦太郎の身代わりになったのである。

 このお福、金沢町小町と言われる美人だが、評判の蓮っ葉娘。ちなみに蓮っ葉娘と言う言い方は、意味は見当がつくものの、最近はあまり使わないので、一応調べてみた。

 蓮っ葉娘とは、下品な娘、浮気娘だという意味だそうである。前の方の意味もあるのかもしれないが、おそらく後ろの方の意味が強いだろう。

 ところで、お福が匕首で切られ、錦太郎も脇差を投げつけられて怪我をする。出口は20人もの下っ引きで固められているので、怪しい人間は外に出られなかったはず。いったい犯人は誰なのか?

 この祝言には大きな裏があった。平次は、傷害を負わせた人間を捕縛せず、その原因となった連中に脅しをかける。

 もちろん事件の方は解決しているのだが、そこから一歩踏み込んで、裏の事情の方も解決する。これが平次の魅力の一つだろう。そう言えば、この話では、平次、銭を投げなかったなあ。

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

俺んちに来た女騎士と田舎暮らしすることになった件(2)

2021-09-26 09:34:53 | 書評:その他

 

 突然異世界から、32歳の脱サラ農家佐伯莞爾の所に転移してきた女騎士。彼女の名前は「エウリーデ王国 メルヴィス伯家が長女クリスティーナ・ブリュンヒルデ・フォン・メルヴィス(愛称クリス)」ととにかく長い。そして覚えきれない。ということで、今後は愛称のクリスでいこう。ちなみに、18歳の金髪美少女。

 その日から、莞爾とクリスの奇妙な同居生活が始まった。莞爾は、元カノで今は官僚をしている穂奈美に助けを求める。一方クリスははっきりとは意識していないものの莞爾のことが気になっているようだ。ただ、莞爾の方は、32歳と18歳という歳の差が気になって、今のところそんな気はないようだ。でも時間の問題かな。

 元カノの穂奈美と現カノ候補のクリス。女同士のバトルがと思いきや、穂奈美は厨二心を持ったオタク。「くッ殺」とか「オーク」とか「魔法」とかのキーワードに引き付けられ、クリスとも仲良くなっていく。

 このクリスさん、初めての異世界の食べ物に夢中。莞爾くん、クリスさんの胃袋は既に掴んでいるようだ。それにとっても可愛らしい。これなら、歳が離れていても、異世界人でもいいじゃないとおもうのだが。ただものすごくウブなところがあるので、クリスさんに手打ちにされないようにね。どうも、莞爾と穂奈美は付き合っていたときに肉体関係があったようだ。そのことを穂奈美から聞いて真っ赤になっているくらいなのだから。

 異世界人ということは、未知の病原体を持っている可能性もある。最後は防護服を着た人たちが出てきたが、その後どう展開するのだろう。莞爾とクリスの仲はそうなるのか。保奈美はクリスをいつか莞爾のお嫁さんにするため頑張ると言っているが、されさて、どうなることか。

☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

放送大学の教材到着

2021-09-24 18:14:27 | 放送大学関係

 先般、近くのコンビニから入金した放送大学2021年度2学期に登録した科目の教材が届いた。これの単位が取れれば卒業に必要な単位を半分充足することになる。最後の全科学生(これが7つめとなるため、入れるコースがもうない)なので、のんびりと在籍期間いっぱいまでやるのか、早く卒業して違う大学の通信教育を受けるのか、それとも秋田大学の通信教育を増やすのか悩みどころである。

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

半七捕物帳 64 廻り灯籠

2021-09-24 10:27:30 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

 この作品もいつものように、半七老人が岡っ引き時代の思い出話を作者に語るという形式のものだ。

 この話は、半七老人が「おかしい話」と前置きして語るのだが、確かにおかしい。

 半七老人の言によると、

石が流れりゃ木の葉が沈むと云うが、まあ、そんなお話ですよ。泥坊をつかまえる岡っ引が泥坊に追っかけられたのだからおかしい。泥坊が追っかける、岡っ引が逃げまわる。どう考えても、物が逆さまでしょう。そうなると、すべてのことが又いろいろに間違って来るものです。(後略)



 おまけに、半七が他の岡っ引きの子分にふん縛られるのである。

 今回の事件の中心となるのは二代目三河屋甚五郎(通称は三甚)。芝口の岡っ引きのようである。事件は、この三甚が本石町無宿の金蔵を捕まえたことに端を発する。酔わせて三甚は金蔵を捕まえたのだが、逆恨みされ、こんなことを言っていたらしい。

こんな駈け出しの青二才の手柄にされちゃあ、おれは死んでも浮かばれねえ。こん畜生、おぼえていろ。おれが生きていればきっと仕返しをする、死ねば化けて出る、どっちにしても唯は置かねえから覚悟しろと、おそろしい顔をして散々に呶鳴ったそうです。



 ところが、この金蔵が仲間と一緒に破浪する。つまり、追いかけるのが金蔵で、逃げ回るのが二代目三甚というわけである。

 半七は先代の三甚に世話になったことから、二代目三甚の保護を引き受ける。これを半七に依頼したのは、神明前でさつきと言う小料理屋をやっているお力。お力の娘お浜と二代目三甚はいい仲なのだ。

 ところが、二代目三甚の行き先を追っているうち、戸塚の市蔵と言う岡っ引きの子分に半七は金蔵と間違われふん縛られてしまう。どうも、金蔵の人相書が、見方次第で半七に似ていたらしい。半七の顔を知っている市蔵や古参の子分が留守だったのもあったようだ。もちろん帰ってきた市蔵は大恐縮。あわてて縄を解くように子分を叱りつけた。

 金蔵の方にも、いろいろあったようだ。半七は最後にこう言っている。

人間万事廻り燈籠というのは、こんな理窟かも知れませんね
☆☆☆☆
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

見上げると君は(3)

2021-09-22 08:23:46 | 書評:その他

 

 

 高身長女子・高峯千賀子と、低身長男子・渋木優希の二人の高校生が繰り広げるラブコメ。二人の間には、結構身長差がある。どのくらい違うかというと、優希の頭の先が、千賀子の胸の上あたりというから結構な身長差である。だから最初出会ったときに、千賀子は優希のことを小学生だと思っていた。それがラブラブになるのだから、縁は異なもの味なもの。

 昔三高ということが、けっこう言われる時期があった。高身長・高学歴・高収入の三つの高だ。もちろん優希にはどれもない。身長は千賀子の方が圧倒的に高いし、高校生の優希に高収入がある訳もない。頭だって千賀子の方がずっといい。それでも二人は魅かれあうのだ。この巻では二人は相思相愛であることを確認する。

 別に何か事件が起こる訳ではない。描かれるのは普通の高校生の日常。ただ言えるのは、千賀子にしても優希にしてもいい友達を持っていたということ。それもあって、二人の周りにはどんどん人の輪ができていく。

 それにしても、千賀子さん、なかなか男前な女子だ。かっこよく、そしてとっても優しい。こんな女子がいたら、胸キュンとする男子も多いのでは?

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

銭形平次捕物控 051 迷子札

2021-09-20 11:14:04 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

 最近、伝七捕物帳をよく読んでいるが、これは捕物帳では伝七と双璧を成す銭形平次の捕物帳。この話は、平次が子分のガラッ八こと八五郎と旗本のお家騒動に挑む話だ。

 話は八五郎が平次の家にやってくるところから始まる。

「親分、お願ひがあるんだが」



 平次は、また八五郎が小遣いをねだるものと思ったが、八五郎はそうじゃないという。

「親分、冗談ぢやない。又お静さんの着物なんか剥いぢや殺生だ。――あわてちやいけねえ、今日は金が欲しくて来たんぢやありませんよ。(以下略) 」



 しかし、平次どれだけ貧乏なんだ。まあ、あれだけお金を投げていれば貧乏になるよな。それにしても平次の恋女房のお静さん、結構苦労してたんだね。

 さて事件の方だが、左官の伊之助親方の息子乙松が行方不明になる。この事件を伊之助の娘お北の頼みで平次たちが調べ始めるという訳だ。ところが今度は、伊之助が殺される。事件の後ろにあったのは、大身の旗本のお家騒動。

 最初に、平次が御家騒動に挑むと書いたが、解決まではしていない。事件の謎解きをしただけである。この結末は、当時の身分制度から仕方が無いかもしれない。平次としてはその中で最適解を求めたという感じだ。

「親分、敵は討ったんですか」


むくれる八五郎に平次は、苦笑してこう答える。

「討ちかねたよ。見事に返り討さ、武家は苦手だ。町方の岡っ引なんか手を出すものぢやねえ」

☆☆☆

 

 

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ふたりソロキャンプ 3

2021-09-18 19:58:48 | 書評:その他

 

 この漫画を一言で表せば、樹乃倉厳と言うソロキャンプが大好きな34歳のおっさんと、草野雫という20歳のかわいらしいキャンプ初心者とのラブコメなんだろうか。

 この巻では、滝川彰人という厳の高校時代からの友人が出てくる。彰人は無二の親友と言っているが、厳に言わせれば腐れ縁らしい。

 ところで彰人君、どう見てもかなりのチャラ男に見える。これはもしかして、厳と雫の間に入ってくるお邪魔虫になるのかもと思ったのだが、人は見かけによらないもの、意外にも、厳と雫の中を応援して、深めようとする。

 雫は明らかに厳のことが好きなのだが、肝心の厳の方は14歳も歳が離れていることを気にして、雫が自分に気があるはずはない、自分はあくまで雫のキャンプの師匠であると思い込む。果ては、

「そうか!! 俺は雫を一人前のソロキャンパーに育てたかったのか!! そうに違いない!!」


と一人納得する始末。
いや、それ違うからね(笑)

 二人のすれ違い具合がなんとも面白いのだ。雫は九州弁なのだが、これがなんとも可愛らしい。方言女子っていいですなあ。されさて二人の関係はどうなっていくのか。

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

銭形平次捕物控 108 がらツ八手柄話

2021-09-16 09:07:08 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

 いつものように子分のガラツ八(八五郎)が平次親分のところに飛び込んできた。御金御用達の藤屋の3つになる息子が井戸に身を投げたというのだ。井戸側の高さは二尺位あり、子供の首位まであるので、間違って落ちたというのは考えにくい。しかし、3つの子が井戸側に梯子をかけて、自分から身を投げる訳はない。もちろん事故ではなく事件である。平次が乗り出すかと思ったが、八五郎にこの事件を任せてしまう。

「そいつは御免を蒙らう。今日は少し血の道が起きてゐるんだ」(中略)
「血の道はお静じゃない、俺だよ」
「ヘエー親分が、血の道をね?」
「眩暈がして、胸が惡くて、無闇に腹が立って――」
「そいつは二日酔ぢゃありませんか」
「男の二日酔は血の道さ。今日は一日金持の隠居のやうに、暢気な心持でゐたいよ。お前が一人で埒をあけて來るが宜い。赤ん坊が井戸に落っこったくらゐのことで、八五郎兄哥を働かせちゃ濟まねえが、満兩分限の藤屋の一と種が變な死様をしたのなら、思いのほか奥行のあることかも知れないよ」



 平次は小説版を読むと結構こんなところがあるが、実は今回は、八五郎に手柄を立てさせてやろうという親心いや親分心。ヒントを与えて八五郎を送り出す。

 事件はちゃんと解決するのだが、ステップごとに八五郎は平次に報告し、平次に指図を受ける。だがそれをバカ正直に与力の笹野に言っているのだ。八五郎は平次の親分心が分からなかったようである。

繩を打つて引つ立てて行くと、笹野の旦那が褒めましたぜ。これが八五郎の手柄か、大したことだね――つて」
「お前は何んと言つた」
「實は親分に相談をして、一々指圖をして貰ひました。と」
「馬鹿野郎。何んだつてそんな餘計な事を言ふんだ。ムズムズし乍ら、家に引込んで居たのは、せめてこれだけでも、まる/\お前の手柄にさせようと思つたからぢやないか」
「へエ、――相濟みません」
 八五郎はピヨコリとお辭儀をしました。でも、斯かう叱られ乍ら、何んとなく幸福です。



 このあたり憎めない八五郎の性格がよく出ていると思う。それとも叱られて喜ぶドMなのか?

☆☆☆

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする