本書は林業専門月刊誌の「現代林業」に、2016年から1019年まで40回連載した「自伐林業」探求の旅シリーズを書籍として纏めたものだ。北は北海道から南は九州熊本県まで、いろいろな林業への取り組み例が紹介されている。ところで、この「自伐林業」とは、主に家族の自家労働力によって行われる小規模の林業だが、これに加えて近年「自伐「型」林業」という新しい形が各地で見られるようになってきたという。
この「自伐型林業」というのは自分で山林を所有していなくとも、私有林を借りたり、所有者から受託を受けたり請け負ったりして、小規模な林業を行うもののようで、最近は、農山村への移住・定住促進の施策として位置付けている自治体が増えているらしい。ただし、税金を考えると自伐林業の方が大分有利のようである。
日本の4分の3は山地である。それなのに安い外材に押されて日本の林業は、振るっていない。日本の家は木造が多いにも関わらずだ。私も昔、林野庁のやっている緑のオーナーになったことがあるが、満期になった時の払い戻しは、出資金の三分の一しかなかった(つまり三分の二は損をしたことになる。期間を考えるとそれ以上)。このことからも、林業経営がいかに苦しいか分かるだろう。しかし、紹介されている地区は色々な工夫をして林業に取り組んでいる。本書を読めば、林業の経営、間伐材の利用、安全対策、人づくり、木質バイオマスへの取り組みなど、参考になるものが多いと思う。
山には、昔植林された針葉樹が溢れているのをよく目にするが、スギ花粉症の増加などの問題を引き起こしている。また、林業の不振と共に手をかけてない山も増えている。しかし、山は海とも結びついているのだ。山の荒廃が海の貧困化にも繋がるのだ。しかし、本書には広葉樹による林業の例も紹介されているのである。シイタケの原木や薪、木炭としての利用など、林業の一つの方向性を示しているのではないだろうか。
私が気に入ったのは、鳥取県の智頭町編にあった「半林半X」というコンセプトだ。これは林業を仕事の中心にしながら、自分の好きな時間の「X」を大切にするというものだ。この「X」は人によって違うので、色々なことが考えられる。
雑誌に連載されていたこともあり、どこからでも読むことができる。そして現代の林業を行っていくためのヒントが沢山つまっているだろう。
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