文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

書評:問題解決大全

2017-12-30 09:25:50 | 書評:ビジネス
問題解決大全
クリエーター情報なし
フォレスト出版

・読書猿

 本書は、ビジネスなどで役立つ色々な問題解決のためのツールを一冊に纏めたものだ。それぞれのツールの名前が紹介された後に、やり方、サンプル、解説などが何ページかに渡って続く。全体は、直線的な因果性のある「リニアな問題解決」と因果関係がループになっているような「サーキュラーな問題解決」の二部構成になっている。

 読者は、これらをすべて覚える必要はないだろう。この中から自分と相性がよさそうなものを選んで、実際の問題に適用して使い込むという事が重要ではないかと思う。何しろ、一つ一つの手法は、それだけで一冊の本が書けるくらいなのだ。それがぎゅうっと濃縮されて、そのエッセンスだけが詰まっていると思えば良い。それらの手法の元ネタも記されているので、自分が使うためにはそちらも読んだ方が良いだろう。

 中には特性要因図やPDPCといったQCサークル活動などでおなじみの手法が入っているが、例えば線形計画法といったようなOR的な手法は入っていないし、AHPやFMEA(なぜか対のように扱われるFTAはロジック・ツリーのところで解説されている)といったものも収められてはいないが、この辺りは、著者の好みが入るのかもしれない。

 最初に似たようなことを書いているが、本当に問題解決に役立てようと思ったら、特定の手法を自家薬籠中のものにするくらい使いこなさなくてはならない。本を一冊読んだからといってとたんに問題がスイスイ解決できるようになるというような虫のいい話はどこにもないのである。

 本書の価値は、これまで問題解決のための手法というものにあまりなじみがない人に対して様々なツールをメニューのように示し、考えるためのヒントを与えてくれるということに尽きるだろう。とにかく実践あるのみである。

☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

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書評:モヤモヤが一気に解決! 親が知っておきたい教育の疑問31

2017-12-28 10:59:18 | 書評:学術・教養(人文・社会他)
モヤモヤが一気に解決! 親が知っておきたい教育の疑問31
クリエーター情報なし
集英社

・石井としろう
 
 著者は元民主党の衆議院議員で、教育行政にも関わっていたという。本書はそんな著者が、教育に関する様々な疑問にQ&A方式で答えるものだ。

 ところで、私は、我が国の教育制度については、色々な思いがある。一番言いたいのは、これまで行われた教育に関する色々な改革は、改革とは呼べず、何かやらないと自分たちの存在意義がないとヘンな考えを持っている教育官僚が、ただ制度をいじくっているだけではないかということだ。

 何かやったというアリバイを作りたいなら、制度を変えるのが一番目立つからだ。これは会社の人事制度なんかで良く見られることではないかと思う。人事の連中が、必要もないのに、他所でやっているからと、目標管理などを無批判に導入してしまったような覚えはないだろうか。あれは、変える必要もないのに、自分たちのアリバイ作りのために制度をいじくって喜んでいるだけだと思う。

 私たちの時代には、センター試験もなかったし、ノーベル賞などに輝いている世代は、それ以前に教育を受けた世代が中心だろう。別に制度を変える必要もなかったのではないかと思う。文科省など、いらないことをせずに寝ていてくれた方がどれだけましか。制度をころころ変えて翻弄される国民はたまったものではない。

 よく偏差値についての話を聞くが、私は偏差値信仰などくだらないと思っている。東京の有名私大の偏差値が高いのは、系列高校からの進学や、AO入試、推薦入試である程度の人間を確保して、残った一般枠で競争させている結果だろう。それでなくとも、受験科目数の少ない私大と多い地方の国立大を比べて、東京の有名私大の方が偏差値が高いとか言っていること自体がナンセンスだと思う。本当に偏差値の意味を理解している人間がいったいどれだけいるのだろうか。

 このように自分の立ち位置をはっきりさせたうえで、本書を読んだ後のコメントを若干記しておきたい。

 まず、<学校の先生の役割は「教科指導」と「教科外指導」、大きくこの2つに分かれます。>(p19)とある。これはその通りだろうが、今は教科外指導に重点が置かれ過ぎているのではないかと思う。本来は警察や家庭の行うべきことまで、教師に押し付けているのではないのか。本来学校に望むのは「教科指導」の方だと思う。「教科外指導」の方に時間を取られるのなら、それを可能な限り無くする方向での対策が必要ではないだろうか。

 PTAの活動(p26)についてはかなり参考になる。どこもそうだとは思うが、とにかく役員に立候補する人がいない。それは父兄に負担が大きすぎるからだろう。いかに工夫して、本当にやらなければならないものを厳選することにより、皆が参加しやすい活動にしていくことも考える必要があると思う。

 「塾に行かなくても学力は上がる」(p35)というのはまさに同感だ。私自身塾など行ったことがない(というより、高校まで田舎暮らしだったので、そんなものはなかった(笑))。自分のことを言ってなんだが、それにも関わらず、私自身は、塾に行った大多数のものよりは学歴が上だ。塾に行くのを当たり前だと思うと、何でも人から教わればいいということになり、自分でいろいろ工夫して解決するという習慣が身につかないのではないか。

 学校を国公立か私立にするのかという問い(p38)があるが、私のように田舎育ちだと、周りには公立の学校しかなかった。ただ、街では、公立だと色々な問題があり(最近はかなり改善されているようだが、私自身ある資格試験を効率の中学校で受けたことがある。荒れていると評判の学校だったが、トイレの落書きやドアの壊れ具合でなるほどと思ったものだ)、子供を私立にやりたいという父兄も多いのではないかと思う。

 部活についても触れているQがある(p42)。著者は部活大好き人間のようだが、私自身は、入りたければ入ればいいし、入りたくなければ入らなくてもいいと思っている。私自身も高校では、美術部に籍だけ置いていたような覚えがあるが、運動部は最初から選択肢にもなかった。<学力が上位の子供は、下位に位置する子たちよりも、より定期的に運動している傾向が見られました。>(p44)とある。これは図らずも著者が相関関係(著者が区別して書いているかどうかは分からないが)と書いているように、因果関係ではない。だから、運動したからと言って、成績が上がるとは限らないのである。

 また、グローバル人材に関するQもある(p74)。英語を話すことができることがグローバルではないというのはその通りなのだが、その例としてノーベル賞を受賞した益川京大名誉教授を、英語ができない例として挙げているのはどうかと思う。益川さんの場合は、論文の共著者が英語ができたのでお任せできたという事情があったようだ。そもそも物理の世界では英語で論文を書かない限り認められはしないだろう。これは例外を一つ持ってきて過度の一般化を行っているのだと思う。私自身も英語を小学校でまでやる必要はないと思うが、出来ないよりは出来た方がいいのは確かである。

 最後に2020年からの制度改正について書かれていること(p134)について若干のコメントをしてみよう。著者は、<今後はAO入試の割合も増えていきます。私はすごくいい変化だと思っています。>(p134)と書いているが、これはどうだろう。これは、学力のない学生を増やすだけのようにも思えるのだが。

☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。
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書評:地理 2017年 12 月号

2017-12-26 20:53:42 | 書評:学術・教養(人文・社会他)
地理 2017年 12 月号 [雑誌]
クリエーター情報なし
古今書院


 最初に断わっておくが、この号はかなり「テツ分」が濃い。テツとはもちろん「鉄道マニア」を表した言葉である。なにしろ特集が「車窓景観の魅力」なのだ。ここで「車窓」というのは、バスや自家用車の車窓ではなく、鉄道列車の車窓のことである。

 おっと、一言言っておきたいが、レールの上を走る車両を全て電車というのは都会人の悪い癖だ。なにしろ私の田舎などは電化などされていない。「ええジーゼルですよ。それが何か?」。

 ということで、この特集では、色々な人がそれぞれ列車の車窓から見る景観の魅力について語っている。本書を読めば、鈍行列車でゆったりと旅をしてみたい人がかなり増えるのではないかと思う。 最初に「テツ分」が濃いと言ったが、非テツの人にも十分楽しめると思う内容だろう。

 こんな一文も紹介されている。寄稿者の一人である中俣均さんが大学生になった年に発刊された本にあったらしいが、<地理学者は列車の客となった場合も、車内で本を読むような態度をとることは望ましくない。移り変わる車窓の景観に地理学者が求めなければならない多くの問題がある>。(p22) 木内信蔵という人の言葉のようだが、地理学者になると、列車でのんびり駅弁を食べながら旅を楽しむという訳にもいかないようだ(笑)。

 「アウトリーチのための接点」という記事には、ちょっと気になることが書かれていた。<「理系の生徒は地理を選択しなさい!」とは、よく聞く話です。><高等学校でも、文系の生徒はそもそも地理が選択できないカリキュラムとなっていて、理系の生徒だけがセンター試験対策用に地理Bを学ぶケースが多いと聞きます。>(どちらもp86)。私が受験をしたころは、文理に関係なく1年の時に地理を履修させられ、理系の生徒(私も含めて)は地理など受験科目としては完全にアウトオブ眼中だったと思うのだが、時代は変わったということか。

 「第14回国際地理オリンピックベオグラード大会報告」の記事もなかなか興味深かった。運動の方のオリンピックの何分の一かでも、マスコミは、頭脳に関係したものについて報道して欲しいと思うのだが。

☆☆☆☆

※初出は、「本が好き!」です。
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書評:出会ってひと突きで絶頂除霊!

2017-12-24 09:34:02 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)
【下セカコラボSS付き!電子特典版】出会ってひと突きで絶頂除霊! (ガガガ文庫)
クリエーター情報なし
小学館

・赤城大空

 これだけおバカな作品は久しぶりに読んだ。もちろんこの「おバカ」というのは、ぶっ飛んだアイディアに対する一種の褒め言葉である。秀逸なのは、このタイトル。どこかのAVに似たようなのがあったような、無かったような・・・。いやこれ、例の官能小説専門のフ〇ンス書院ではない。あの小学館から出ているガガガ文庫の一冊なのである。だからタイトルからヘンな期待をしすぎてはいけない。といってもある程度は期待してもいいかな(笑)

 作者は、深夜アニメにもなった「下ネタという概念が存在しない退屈な世界」を書いた赤城大空。なにしろ美少女が頭からパンツ被って大暴れ、「君は変態仮面か何かか?」。

 さて、この作品の紹介に移ろう。主人公は、都立退魔学園に通う高校一年生の古谷晴久という少年。退魔学園というのは、退魔師を養成する学校である。晴久は、そこのDクラスに所属する落ちこぼれなのだが、とんでもない能力を持っていた。

 それは、「絶頂除霊」という能力である。快楽媚孔というツボ(決して経絡秘孔ではない)を付くと、人間でも、霊でも一瞬にして絶頂に達するという一種の呪いだ。霊の場合は、これを喰らうと、絶頂したあげくに昇天というわけだ。

 だれですか。そんな能力欲しいという人は。相手が美女や美少女なら眼福というものだが、本書中にもあるように、これがおっさんだとおぞましいことこの上ない。誰が好き好んで、おっさんの絶頂シーンなど見たいものか。

 そんな主人公がチームを組むのは、美少女二人。しかし、ここで羨ましがってはいけない。美少女のうちの一人である烏丸葵は、女なのに女好きのドS,ド変態。相手が美女もしくは美少女の時に限り、強力な緊縛術が使えるのである。つまり、主人公と組めば、美女を縛り上げて絶頂させるという・・・。いや、相手がいくら霊でも、それは道徳的にまずいでしょう(笑)。

 もう一人のメンバーである宗谷美咲の方は、これも呪いである淫魔眼持ち。彼女には、視た相手の性癖がダダ洩れになってしまうのだ。だから、知られると恥ずかしいあんなことやこんなことが・・・。おまけに退魔の名門の家のお嬢様で、一応色々な術を器用にこなすものの、どれも威力の方はさっぱり。完全に戦力外である。

 そんな彼らが挑む怪異が、「口裂け女」ならぬ「乳避け女」改め「乳裂き女」。ある少女が貧乳のコンプレックスから怪異に落ちてしまったのである。「乳避け女」の段階では、巨乳を恐れて逃げていたものが、「乳裂き女」になってからは、敵視して襲ってくる。その強さは、プロの退魔師さえも寄せ付けない。

 この怪異に対抗する手段が、「絶頂除霊」という訳だが、なんと怪異の快楽媚孔は、断崖絶壁ながらも双丘(なんか矛盾している表現だな)の中心部。果たして、彼らは快楽媚孔をツンツンして、この怪異を退治できるのか。

 このおバカな設定は笑いの連続。この終わり方だと続編がまだまだありそうだが、たまにはこんな本を読んで大笑いするのもいいのではないかと思う。

☆☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。
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書評:ファイナルファンタジーXIV きみの傷とぼくらの絆 ~ON(THE NOVEL)LINE

2017-12-22 13:22:35 | 書評:小説(SF/ファンタジー)
ファイナルファンタジーXIV きみの傷とぼくらの絆 ~ON(THE NOVEL)LINE~ (電撃文庫)
クリエーター情報なし
KADOKAWA

・藤原祐

 本書は、あの国民的RPGであるファイナルファンタジーのノベライズ版である。対象となっているのは、「ファイナルファンタジーXIV 」。シリーズ2作目のMMORPGらしい。このシリーズ、私も昔はよくやっていたのだが、年齢のせいか、Ⅹ-2位までで止めてしまった。ちなみに、このシリーズに並ぶRPGであるドラクエの方は、絵柄があまり好きでないので、やっていない。

 通常は、ゲームのノベライズ版と言えば、その舞台たるファンタジー世界を描いたもののように思える。しかし、この作品が、他のノベライズ版と一線を隔するのは、ゲーム世界はあくまで副次的なものであり、描かれているのはリアルな世界だということだ。

 ちなみに、著者は「電撃の黒い太陽」との二つ名を持つ藤原祐。彼の作品においては、登場人物がどんどん死んでいくのが通例なのだが、この作品に限っては、珍しく誰も死んでいない。

 主人公は、梶木壱樹という大学生。コンプレックスは目つきの悪いこと。同じ大学に通う一つ上の従姉である不知火古都に言われて始めた「ファイナルファンタジーXIV 」だが、ゲームの中で瀕死の状態の時に、通りかかった少女アサカに助けてもらう。やがて壱樹は、アサカやその仲間たちとパーティを組むようになり、ゲーム世界を攻略していく。

 しかし、それはあくまでもヴァーチャルな世界でのこと。現実世界でのアサカこと嶋原朝霞は、親のこと、死んだ姉のこと、自分のことなどで色々な問題を抱えていた。しかし、最後には壱樹たちの働きで、それらの問題が解決するのである。そうこの物語は、朝霞の救済の物語でもあり、壱樹と朝霞の「ボーイミーツガール」の物語でもあるのだろう。二人の本当の物語は、ここから始まるに違いない。

☆☆☆☆

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再発防止に研修は役立たない

2017-12-21 17:04:50 | オピニオン
 テレビを視ていると、例の相撲界の横綱による暴行事件で、相撲協会は再発防止策の一環として研修を行ったことが報道されていた。

 しかし、この研修というやつは、実は殆ど役立たないと思う。どの組織でもそうだが、何か問題が起きるたびに、再発防止という名目で研修が行われる。これが純技術的なものならまだしも、こういった業界の風土に関するものは研修を一度や二度行ったからといってどうなるものでもない。

 元々そういった意識がある人間は、研修を受けなくてもああいうバカなことはやらないし、逆に意識のない人間は、その時間をやり過ごせばいいと思う人間の方が多いだろう。研修というのは、何か対策をしないといけないからという、組織側のアリバイ作りに使われることが多いものだ。私も会社勤めをしていたころは、そんなことは、お前に言われなくても、十分に理解しているよと、あまりにもくだらない研修の多さにうんざりしたものだ。

 一番効果があるのは、トップ層が、そういったことは絶対に許さないという強い姿勢を継続して示すことだ。だから、日馬富士の引退を認めたのは早計だった。身内に甘すぎると言われても仕方がないだろう。引退届を認めず、懲戒処分を課すべきだったと思う。そういうことをずっと続けていけば風土が次第に変わっていくのである。しかし、風土を変えることは一朝一夕にはできないこともまた事実である。

 
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書評:女王のジレンマ

2017-12-20 21:49:37 | 書評:小説(SF/ファンタジー)
女王のジレンマ (フェアリーテイル) (創元推理文庫)
クリエーター情報なし
東京創元社

・シャンナ・スウェンドソン、(訳)小泉敦子

 本書は、「魔法製作所」シリーズで知られるシャンナ・スウェンドソンによる新シリーズの第二弾だ。これは、人間でありながら、妖精の女王の血を引いているために、妖精界の女王になったソフィ・ドレイクの物語である。

 前作では女王の座を巡る騒動があったようだが、この巻の話も一言でいえば、女王の座を巡っての争いだ。なにしろソフィは、妖精界の女王でありながら、人間界でもバレエ教師をやっているのである。いわばパートタイマー女王なのだ。おまけに、家ではアルツハイマーの末期である祖母の介護もやっている。これでは女王業なんてとても無理。

 案の定、妖精界では不穏な動きが起る。偽女王が表れ、妖精界にいる人間や女王に忠誠を誓わない妖精を人間界に追放しているのである。

 どこかの子会社だったら、たまに社長が非常勤なんてこともあるが、さすがに女王が非常勤だと、ちょっとまずいだろう。

 おまけにソフィーは刑事のマイケルにホの字(古いか)である。実は、彼の妻のジェニファーは7年前に、ソフィの妹のエミリーと間違えられて妖精に攫われ、未だに妖精界にいるのだ。マイケルは、彼女を人間界に連れ戻したがっている。彼女をどうやって人間界に連れ戻すかというのもこの巻の大きなテーマなのだが、彼の願いをかなえれば、ソフィはもちろん失恋のブロークンハート。

 ソフィは、こういった諸々の事情を抱えている訳だが、最後にはそれらに一応のケリがついた感じだ。前作の知識があった方がより楽しめるようだが、この巻だけ読んでも、結構面白かった。

☆☆☆

※初出は、「本が好き!」です。

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書評:虚構推理 7

2017-12-18 08:24:02 | 書評:小説(その他)
虚構推理(7) (月刊少年マガジンコミックス)
クリエーター情報なし
講談社

・(原作)城平京、(漫画)片瀬茶柴

 「ひとつ目いっぽん足のおひいさま」と妖や幽霊たちから慕われる岩永琴子という少女と、妖怪くだんと人魚を食べたために、不死身で未来を見ることができる桜川九郎のコンビが活躍するシリーズの最新刊。

 前6巻までで、原作小説の内容は終わってしまっていたのだが、この巻は、漫画にすることを前提に書き下ろした短編小説を原作としているらしい。

 もちろんこのコミカライズ版の方も短編集となっており、収録されているのは以下の3話。

・よく行く店
 二人が行きつけの喫茶店の話。九郎は、元カノとよく来ていたらしいが、その事が琴子には気に食わない。

・ヌシの大蛇は聞いていた
 琴子が沼に住む大蛇からの依頼で謎を解決する話。琴子は九郎から豚汁を持たされて送り出される。

・うなぎ屋の幸運日
 琴子がたまたま昼食を食べに来たうなぎ屋で出くわした男たちの話。そこでは、かなり不穏なことが話されていた。

 収録されている話は、主に琴子が動いているエピソード集のような感じだ。一応九郎も出るには出ているのだが、前巻のラストで、「でもお前は花より綺麗だから僕はどこにも返していないだろう」と言っていた割には、琴子に対する扱いがひどい。最初の話では、琴子にアイアンクロー(ちょっと、懐かしいかもw)をかましているし、二番目の話では、昼つくった豚汁を食べないといけないからと、琴子が大蛇のところに行くのについて行かなかったのだ。

 一方、琴子の方も間違いなく良家の令嬢のはずなのだが、九郎と温泉に行きたがる目的が「秘宝館」だったり、うなぎ屋によった理由が、今夜は九郎のところに泊まるので精を付けておくためだったりとなんともぶっ飛んでいる。

 そうはいっても、二人のやり取りは、とっても面白い。正に夫婦漫才と言った感じで、案外とうまくいっているようである。この物語は、嬉しいことに、まだまだこの後も続くようなので、これからの展開がどうなるのかとても楽しみである。

 ところで、初回限定の特典として「七瀬かりんデビューCD販促用風ミニポスター」が付いていた。七瀬かりんとは、前巻までに登場した怪異「鋼人七瀬」の基になった人物である。コミックス版には、作中話もあったが、ぜひ「青春火吹き娘」をスピンオフ作品として発表して欲しいものである。

☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

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秋田大学理工学部通信教育教材到着

2017-12-17 21:01:03 | 秋田大学通信教育


 申し込んでおいた秋田大学理工学部通信教育講座の教材が到着した。申し込んだのは、「一般科学技術コース」。電気工学については自分の専門だが、その他の工学分野に関しては結構知らないことが多い。工学全体に渡り、浅くても広い知識を付けておくのも悪くないと思ってお申し込んだ次第だ。

 これは、正規の大学の教育とは違うので、終了しても学位などは関係ないが、一応レポートや試験のようなものがあるので、怠け者の自分でも結構効果があるのではないかと思う。

 教材を見ると、思ったより量が多かったのにはびっくりだ。履修期間は最低1年、上限の方はどうも3年のようだ。自分のペースでゆっくりやっていきたいと思う。

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天牌外伝 1,2

2017-12-16 10:18:04 | 書評:その他
天牌外伝 1
クリエーター情報なし
日本文芸社

・来賀友志、嶺岸信明

 昔は麻雀と言えば男子大学生の必修科目。今のようにやれデートだとか、リア充だとかは普通の大学生にはあまり関係のなかった時代、大学生の暇つぶしと言えば麻雀しかなかった。もうウン十年も昔のことだ。私も田舎の高校生だったので、麻雀の「マ」の字も知らずに育ったのだが、大学に入ると、いつの間にか覚えてしまっていた。

 何でも徹底的にやらないと気が済まない私の性格から、市販の教本を何冊か買い込んで勉強したものだ。当時は、正確な符の数え方やあまり一般的でない役までいろいろと覚えていたのだが、それも今は昔の物語。ウン十年もやっていないと、もはやかなり記憶が抜け落ちてしまう。

 しかし、今でも麻雀の世界を描いた漫画があるくらいだから、一定の人気はあるのだろうか。たまたまキンドルの無料マンガで見つけたので、なんだか懐かしくなってダウンロードしてみた。

 主人公は、一晩で億の金を動かすと言われる黒沢義明という凄腕の雀士。基本的には、彼が色々な面子と卓を囲むというのが基本的なストーリーだ。

 この黒沢、どうみても悪人面なのだが、なかなか情に厚い人物として描かれている。このギャップがなんとも面白いのだ。まあ、麻雀漫画でさわやかなイケメンが主人公を務めても、あまり流行りそうにはないのだけど。ヤクザに足抜けをさせたり、ろくでもない男に貢いでいた女性に麻雀で金を取り返させたり、弟子を取らないと言いながらも弟子を取ったり。

 ところで、昔は麻雀牌を手で積んでいたが、だいぶ前から雀荘なんかでは、全自動で機械が積んでくれるようになった。だから、本書に出てきた積み込みなどのイカサマの手口は、炬燵に入って手積みでやるのでない限りは、今では使えないと思う。こんなところにも技術革新の影響が出ているのかと思うとなんだか面白い。昔は、よくテレビにプロ雀士と言われる人たちが出ていたが、いまどうしているのだろうか。

 今は、麻雀と言えば、ギャンブルというより、お年寄りの老化防止のための娯楽といった面が強いような気がするが、麻雀人口って、果たして今どのくらいいるんだろうか。

☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

天牌外伝 2
クリエーター情報なし
日本文芸社



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