文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

人形町夕暮殺人事件

2017-03-30 16:02:04 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)
耳袋秘帖 人形町夕暮殺人事件 (文春文庫)
クリエーター情報なし
文藝春秋

・風野真知雄

 本書は、元祖刺青奉行で、江戸時代の奇談・怪談集としても知られる「耳袋」の作者としても知られる根岸肥前守鎮衛が活躍するシリーズの一冊だ。

 この作品で扱われているのは、現在の人形町界隈で起こった不思議な3すくみの殺人。現在とわざわざ断ったのは、江戸時代には「人形町通り」というものはあったが、人形町という地名はなかったと書かれているからである。

 この3すくみの殺人事件というのはとても奇妙なものだ。人形屋の清兵衛が胸に杭を打ち込まれて殺され、芝居茶屋の娘のおかつが毒殺され、そして人形遣いの両吉が絞殺される。これだけなら、普通の連続殺人事件なのだが、それぞれの死体の近くには、他の被害者の死にざまを暗示するような「ひとがた」が落ちていたのだ。3すくみというのは、要するにジャンケンと同じで、お互いにひとがたの方法で他の人間を殺し合ったとすれば、三角形が閉じてしまい、誰かは死人が殺したということになってしまう。

 もちろん、死人が殺人事件を起こすはずがないので、普通は誰か第三者が犯行に及んだと考えるだろう。その謎を解き明かすのが、我らが根岸様という訳である。ところが、なぜか今回お奉行様は絶不調。還暦を過ぎても頭脳明晰。若い恋人も持って、いつもは元気いっぱいのはずなのに、今回はほとんど寝込んでいる。実はこのことも、今回の事件と大きく関連している。

 明らかになるのは、ある男の妄執。お奉行様もどこで恨みを買うか分からないから大変である。

☆☆☆☆

※初出は「風竜胆の書評」です。
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エネルギー施設工学 (土木系 大学講義シリーズ―20)

2017-03-29 19:30:53 | 書評:学術教養(科学・工学)
エネルギー施設工学 (土木系 大学講義シリーズ―20)
クリエーター情報なし
コロナ社

・狩野鍄一、石井清

 本書のタイトルは、「エネルギー施設工学」であるが、著者が二人とも東電の関係者ということもあり、内容は電力施設に関するものとなっている。しかしどちらも土木技術者であり、シリーズ名も「土木系 大学講義シリーズ」となっているように、電気工学の視点からではなく、土木的な視点から電力設備について解説したものだ。

 電気工学というと、初心者には難しい数式が並びがちなものだが、本書は電力に関連した土木設備に関する概説であるため、数式を辿るのは苦手だという人でもそれほど苦労無く読むことができるだろう。

 本書は、水力、火力・原子力、送配電設備について、必要な土木設備にはどのようなものがあり、それをどう計画して造っていくのかを分かりやすく示している。ただし、電力関係の土木技術は水力設備において占める割合が大きいため、水力に関する解説が全体の半分くらいを占めている。

 電力設備を知ろうと思ったら、電気関係の知識だけあっても不十分だ。機械や土木などの関連知識をある程度は知っておいた方が良い。電気技術者にとって土木設備に関する常識を身につけるために一読しておいて損はないだろう。ただし、初版が昭和62年なので、例えば「”もんじゅ”を建設中」(p87)といった古い記述もあるのでそこは気をつけないといけないのだが、電力土木自体は、かなり枯れた技術分野なので、それほど気にすることもないだろう。

☆☆☆☆

※初出は「風竜胆の書評」です。

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大学課程 発電水力

2017-03-26 19:27:27 | 書評:学術教養(科学・工学)
大学課程 発電水力
クリエーター情報なし
オーム社

・瀬古新助、高居富一、伊藤謙一

 水力発電所と言えば、完全に電気工学の範疇のように思えるが、もう一つ関連した工学関係の大きな分野がある。土木工学だ。水力発電所を一度でも見学した人は気づくと思うが、水力発電は、ダムをはじめとした多くの土木技術の集大成でもあるのだ。

 本書は、多くの類書のように、電気工学的な視点からではなく、土木工学的な視点から水力発電について解説したもので、3人の執筆者は、全て土木工学の専門家である。

 本書は、ダム式、ダム水路式、水路式、揚水式などの様々な水力発電方式の解説、河川流量の測定から始まる水力発電所の計画、水力発電所に付属する様々な土木設備を主体としながらも、水車、発電機などの電気、機械設備に至るまでの水力発電所を構成するすべての設備が一通り分かるようになっている。また、最終章では、水力発電以外の発電方式についても簡単に触れられているが、水力の専門家も常識的に知っておきたいような基本的なことに絞られているので、詳しく知りたい方は、それぞれの分野の専門書を読むと良いだろう。

 少し古い本だが、水力発電技術は細かい部分での改良はあるものの基本的には枯れた技術である。一度作れば、おそらく50年以上は使うようになるだろうから、決して本書の内容が現実の設備から外れたようなものではない。この分野に興味がある人、仕事で水力に関わっている人は、一度目を通しておいても損はないだろう。ただし、土木的な視点から書かれたものなので、近年最も技術的な進展が著しい、制御に関することは書かれていないので念のため。

☆☆☆☆

※初出は「風竜胆の書評」です。


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京都人は変わらない

2017-03-24 20:38:25 | 書評:その他
京都人は変わらない (光文社新書)
クリエーター情報なし
光文社

・村田吉弘

 著者は、京料理屋「菊乃井」3代目主人だという。そんな著者が描く京都人のしたたかさ。

 京都では、老舗でも時代に合わせて商売の内容を変えているらしい。決して伝統にしがみついているわけではないというのだ。著書の家も4代前は乾物屋だったようである。

 京都の老舗は、地元密着型で、末席に座っている人、子供を大事にするらしい。なぜなら、将来のお得意さん候補だから。このあたりはちゃっかりしているというのかどうか・・・。

 京都では、客が押し寄せることを良しとしないようだ。商売を企業ではなく、家業と考えており、存続することを、なにより重要視するというのがその理由だ。ということは、観光客などはなから相手にしていないということだろうか?

 京都は、端から見れば観光と学生の街以外の何者でもない。こういったことを言われると、中の論理ばかり主張されているようで違和感を感じざるを得ない。京文化の優越感のようなものが感じられるのは、果たして気のせいだろうか。

☆☆

※初出は「風竜胆の書評」です。

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ペナンブラ氏の24時間書店

2017-03-22 18:11:45 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)
ペナンブラ氏の24時間書店 (創元推理文庫)
クリエーター情報なし
東京創元社

・ロビン・スローン、(訳)島村 浩子

 失業中だった主人公のクレイ・ジャノンが働き始めたのは、<ミスターペナンブラの二十四時間書店>という不思議な書店。コンビニではないが、その名の通り、24時間営業。しかし一向に本が売れないのに、どうやって経営が成り立っているのか。クレイの給料は、どこから出ているのか。

 この書店、実は2軒の店が1軒にまとまっており、手前の方は普通の古本屋なのだが、奥の方には、暗号で記されたような不思議な本ばかり並んでいる。この本は売り物ではなく貸し出しを行っているのだが、借りに来るのは、ちょっと変わった人ばかり。いったいこの書店にはどんな秘密があるのか。

 全体としては、クレイがこの秘密を解き明かしていくものだが、本書の構成は大きく3部に分かれている。まずは、クレイが、<二十四時間書店>の秘密を発見するまでが第一部の「書店」。

 第二部「図書館」では、<二十四時間書店>のスポンサーである秘密結社との対決だ。対決といっても血なまぐさいものではなく、その組織が500年もの間アナログな手段で解き明かそうとしてきたある本の秘密を、グーグルに務めるクレイの彼女の協力を得て、グーグルの全リソースを使ってデジタルな手段で一気に解き明かそうというもの。言うなればアナログv.s.デジタルとでもいうことだろうか。

 第三部「塔」では、グーグルの全リソースを使っても解明できなかった謎が、ひょんなことから解けてしまった。しかし、それは秘密結社が500年もの間追っていた内容とは違っていたのだ。ここでは、秘密はかなりアナログな方法で解き明かされる。結局、デジタル万能ではないということなのだろう。
 しかし、本書に出てくるプログラミング言語がC言語からというのは、ジェネレーションギャップを感じてしまった。フォートランとか、アルゴルとかないのね。せめてパスカルとか・・・(笑)。

 ただ、HP社のコンピュータで「逆ポーランド記法」が出てきたところは少し懐かしかった。私は、学生時代にHPのプログラム電卓を使っていたが、これが逆ポーランド記法を使ってプラグラムを組むというもの。今やれと言われても、できないのだが、昔は結構使いこなしていた。それにしても、著者はまだ若いと思うのだが、よくこんなことを知っていたものだと思う。

☆☆☆☆

※初出は「本が好き!」です。


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電力システム工学

2017-03-20 11:14:37 | 書評:学術教養(科学・工学)
電力システム工学 (新インターユニバーシティ)
クリエーター情報なし
オーム社

・大久保仁編著

 本書は「新インターユニバーシティ」と銘打たれたシリーズの一冊であり、大学において電気工学を学ぼうとする学生たちのための教科書である。内容としては、2年次から3年次あたりの半期の授業2単位分くらいに当たるのかなといったところだ。

 内容はタイトルの通り、電力システム全般にわたる内容を網羅したものだ。ただし、電力システムには当然発電設備も含まれており、本書でも多少は触れられているのではあるが、そちらは通常「発電工学」のような科目で詳しく学ぶことになるので、この本では主として送電、変電、配電といった電力流通設備についての話が主体となっている。

 もっとも、具体的な機器の話については、送電工学、変電工学、配電工学といったような、もっと詳しい科目で学ぶことが多い。本書では、個別の機器についての常識的な話は解説されているが、一番学ばなければならないのは、電力システムが全体としてどのような特性を持っているかということだろう。例えば、電力システムの運用や制御に関する事項、事故時における電流・電圧の挙動、絶縁協調といったようなところだ。これらについても本格的に学びだすときりがないようなところもあるのだが、本書には電気技術者としては当然知っておきたいような内容がコンパクトに説明されている。

 本書において特筆すべきところを一つ挙げるとすれば、遮断機や断路器の開閉時における現象が1章を割いて解説されているところだろうか。雑誌などでは、こういった内容を読んだ覚えはあるのだが、教科書に掲載されている例はあまりないだろう。

 最初に本書を大学の教科書と書いたが、現場の電気技術者の方も、この程度の内容は知っておいた方が良いだろう。昔と違って、最近は電気工学はあまり人気がないと聞く。おそらく電気のことをあまり勉強しないまま、電気の現場に入った人も多いのではないかと思う。そのような人にもお勧めの一冊だろう。

 最後に一つ言いたいのは、電気の事をろくに知らずに、噴飯ものの議論を行っている経済学者と呼ばれる連中を見ることがあるが、ぜひ最低限の電力システムに関する知識をつけてから出直してきて欲しいと思うのだが。

☆☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。
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地理3月号 特集:青森と函館をくらべてみる

2017-03-18 14:35:20 | 書評:学術・教養(人文・社会他)
地理 2017年 03 月号 [雑誌]
クリエーター情報なし
古今書院


 今月号の特集は「青森と函館をくらべてみる」だ。青森と函館には懐かしい思い出がある。かなり前になるが、仕事がらみで行ったことがあるからだ。私の住んでいる広島から函館に行くには、飛行機だと羽田で一度乗り換えねばならないうえに料金も圧倒的に高い。そもそも飛行機は搭乗手続きが面倒臭いし、あんな鉄の塊で空を飛ぶのはなんとも落ち着かないので、できるだけ乗りたくないという気持ちもある。その時は、ちょうど差し迫った仕事がなかったため、時間はかかるが安く行ける列車で行くことにした。

 移動日は、ぎりぎりまで仕事をして、新幹線に飛び乗った。東京で一度東北新幹線に乗り換え、当事は終点だった新青森で降りる。そこから在来で青森に行き一泊。次の日は特急列車で青函トンネルを渡って函館に。当時は、車窓から工事中の新幹線駅が見えていた。それが今では無事に開通して、北海道と青森を結んでいるのだから月日の過ぎるのはなんとも速いものだ。

 この特集では、新幹線開通後の青森と函館の状況を伝えている。新幹線が北海道まで伸びたことにより、確かに青森と函館は時間的には近くなった。

 両地区はそれを活かした「まちづくり」に知恵を絞っているようだ。青森や函館には素晴らしい観光資源が沢山あることは、昔訪れた際に実感した。機会があればまた行ってみたいと思う。ところで、変な全身タイツのオジサン(お兄さん?)が新幹線の被り物を被っている表紙写真には、思わず吹き出しそうになったが、これは「函館はやぶさPR隊」といって、函館のPR活動の一環だそうだ。これは七戸十和田駅にはやぶさを停車させるために運動していた「七戸はやぶさPR隊」との交流から生まれたものらしい。うん、両地区とも色々頑張っている(笑)。

 しかしその一方では、色々な課題も顕在化しているようだ。例えば、青森県今別町は、新幹線開業により訪れる人は確かに増えた。しかしその割には経済的に潤っておらず、観光客がお金を落とす仕組みづくりがまだ整っていないという。また、青森~函館間の列車の料金が倍増し、新幹線の並行区間がJRから切り離されるようだ。将来現在の函館に新幹線が乗り入れるという約束も反故にされたということで、いいことづくめではないことも事実である。

 この特集を読むとそんな青函地区の現状とこれからの課題というものがよく分かる。地方ではどこも少子高齢化が加速している。そのような中で、新幹線の開業はその地区の希望の光でもあるだろう。ぜひ10年後くらいにもう一度検証のための同じような企画をやって欲しいと思う。

 最後に、本書の特徴として書評欄が充実していることが挙げられるだろう。興味深い本が多いのだが、値段を見ると、なかなか自分で注文というわけにもいかない。ところが今回は「活断層地震はどこまで予測できるか」というブルーバックスの一冊が取り上げられていた。これならと早速注文してみたのは余談(笑)。

☆☆☆☆

※初出は「本が好き!」です。

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「原因と結果」の経済学―――データから真実を見抜く思考法

2017-03-16 09:18:56 | 書評:学術・教養(人文・社会他)
「原因と結果」の経済学―――データから真実を見抜く思考法
クリエーター情報なし
ダイヤモンド社

・中室牧子、津川友介

 複数のデータ間に何らかの関係があるとする。例えばある数字が増えると、別の数字も増えていく。あるいはその逆で、ある数字が減っていくと、別の数字が増える。粗忽者はすぐにそれらの間に因果関係、すなわち原因と結果があるものと早合点してしまいがちだ。実際に新聞などでも結構同様の事象を目にする。

 しかし、データ間に何らかの関連性が見られるからといって、それが直ちに原因と結果である因果関係にある考えるのは早計というものだろう。確かに因果関係がある場合もあるが、実は全くの偶然だったり、互いに関連はあるが、因果関係にはないただの相関関係に過ぎない場合や、原因と結果が逆であるような場合もあるから、データの解釈は慎重に行う必要がある。本書は、そのような見かけの関連性に惑わされずに、どのようにすれば、データーから真実を見抜くことができるかを解説したものである。

 それではどうすれば因果関係があることが分かるのだろうか。本書が教えるのは現実と「反事実」を比較することだという。「反事実」とは、仮にあることをしなかったらどうなっていたかということだ。

 「反事実」と比較するために、まず思いつくのは二つグループの間で行う比較実験だろう。特定の条件のみ変えて、その他の条件は同じになるように選んだ二つのグループの間で結果がどうなるかを調べてみる。しかし実際には実験を行うことが難しいような分野もある。その場合には、「疑似実験」という方法もあるのだ。

 本書はこれらの比較を行う場合の注意事項を解説するのみならず、そこから導かれた驚くべき研究結果も併せて紹介している。

 本書を一読すれば、これまで通説だったものがいかに根拠がない物か分かると同時に、何かのデータの関連性を報道するようなニュースに接した場合でも、それは偶然か、因果関係ではなく単なる相関関係ではないのかなどと懐疑的な目で見ることができるようになるだろう。それが、人の言うことを鵜呑みにせず、自分の頭で考えることの第一歩なのだと思う。

☆☆☆☆☆

※初出は「風竜胆の書評」です。

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「認知行動療法」のテキスト到着

2017-03-15 16:13:17 | 放送大学関係
認知行動療法 (放送大学教材)
クリエーター情報なし
放送大学教育振興会


 今日、放送大学のテキスト「認知行動療法」が届いた。先学期、都合により受験できなかった「認知神経科学」と合わせて、新学期は2科目の履修だ。最初の頃は、あれこれしっかりやろうと思うのだが、忙しさに紛れて、次第にテンションが低くなっていくというのがいつものパターン。竜頭蛇尾と言われないように、新学期からがんばりたいものである(いつも同じことを言っているような気も・・・(笑))
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2050年 衝撃の未来予想

2017-03-14 10:04:13 | 書評:ビジネス
2050年 衝撃の未来予想
クリエーター情報なし
TAC出版

・苫米地英人

 本書は、苫米地氏による未来予想である。まず目を引いたのが、2050年は平均寿命が120歳になるということ。少し驚いたが、その根拠を見ると、うーんとうなってしまった。日本人の平均寿命は、1925年から2014年までの89年間で男女ともに2倍になっているからだというのだ。(p19)このような数字の使われ方をすると、私のような理系人を自認する者としては、それだけで、気分がトーンダウンしてしまう。

 ネットで平均寿命の推移を調べてみると、1925年から1960年までは、戦前と戦後に大きな不連続点がある。だから、本書のデータで計算してみると、この間では、平均すると0.66年/年とやや大きな伸びとなるものの、2014年から1960年では、0.28歳/年(いずれも男の場合)となり、明らかに鈍化していることが分かる。もっとも、医学の進歩により、どこかで平均寿命のジャンプがある可能性はあるのだが、このデータを使う限りは、2050年の平均寿命が120歳になるという根拠にはならないだろう。

 それでも頂き物なので、一応最後まで読んでみた。書かれていることをごく大雑把に言ってみれば、これからの世界は、金融資本による支配がますます進んでいくということと世界のサイバー化がどんどん進展していくということだろうか。総論的にはその方向に進むのだろうが、各論がそうなるかについては、自分の知識では確信が持てない。

 頂き物に対してこんなことを言うのは気が引けるが、読んでいて、自分はこの方面にあまり興味がないということが分かった。今が2017年だから、2050年と言うと、33年も先。自分が今〇〇歳だから、そのころは△△歳か(年齢は秘密(笑))。果たして苫米地氏の予想が当たっているかどうか、自分の目で見届けることが出来る自信がないなあ。ぜひあと30年以上生きている自信がある人は、世界がどうなっているかを見届けて欲しいものだ。

☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

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