なんだか、子供のころのすり込で、お化けと聞くと、あとにQ〇郎と続けそうになるのだが、これは、半七捕物帳の中の話の一つで「お化け師匠」。
お化け師匠とは、踊りの師匠である歌女寿(かめじゅ)のことだ。姪の歌女代を娘分としたのはいいが、それはゆくゆくは、自分の食い物にしようという下心から。歌女代に中国辺りの大名の留守居役から、100両で旦那取りの話があったとき、歌女代は体の弱さを理由に首を縦に振らなかったため、その話もやがて立ち消えになった。
それからが酷い。そのことを恨みに思った歌女寿は、もともと体が弱く、歌女代が床に伏せぎみになったにも関わらず、医者にも見せずにしいたげたのだ。とうとう歌女代18歳の命を散らしてしまった。
歌女寿がお化け師匠と呼ばれるのは、歌女代の幽霊が出るという噂が広まったからだ。
そのお化け師匠が殺された。それも、首に蛇がまきついて、いかにも絞殺されたようなのだ。果たして死んだ歌女代の怨念が歌女寿に復讐をしたのか。
この事件を調べるのが我らが半七親分というわけだが、さすが、半七親分。現場を確認すると子分に池鯉鮒(ちりゅう様)のお札売りを探せと命じる。
ここで少し説明しておこう。池鯉鮒様のお札とは、知立(ちりゅう)神社のお札で、それには蝮や蛇除けなどの効果があると言われている。知立神社は今でも愛知県にあり、江戸時代は池鯉鮒は、東海道53次の39番目の宿場だった。
この話もこのシリーズの他の話と同様、最初はホラー風味で始まり、最後はミステリーとなって完結する。半七親分の名推理を楽しもう。
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※初出は、「風竜胆の書評」です。