スクールカースト殺人教室 (新潮文庫nex) | |
堀内 公太郎 | |
新潮社 |
最近「スクールカースト」なる言葉を聞くことがあるが、正直私は意味がよく分からない。どうして、せいぜい3年程度の中高時代にこんなものができるのか。誰がスクールカーストを決めるのか。下位に位置付けられたものは、どうして学校にしがみついてその位置に甘んじなくてはならないのか。いくら自分が高校でカースト上位に居たといっても、大学に進学したり、社会に出たときには、まったくと言っていいほど役に立たないものだ。もしかすると、社会に出て、カースト上位にいたものが落ちぶれて、下位にいたものがそれを見て満足するという暗い喜びを満たすためではないかと思ってしまう。
本書は、このスクールカーストなるものを扱ったミステリーだ。舞台は、私立西東京学園高校。ここの1年D組には、女優の娘である和木麻耶を頂点とした序列があった。この教室で担任の羽田勝が殺される。この教師、麻耶におもねるために自分もいじめに加担する最低の教師だった。最後の方でもうひとつこの男の最低ぶりが暴露される。そしてこの事件に関連して第二、第三の死者が出る。
出てくるのは、最低の犯罪集団。なにか勘違いして、自分を偉いと思っている連中だ。自分を偉いと思うのは別に構わないし、それを皆が偉い人だと思うような行動で示せばいいと思うのだが、やることは、完全に犯罪である。そして教師もそんな犯罪集団におもねり、いじめに加担する。いやいじめという言葉では収まらない。完全に犯罪である。
最後に何人かは逮捕されるが、手ぬるい。もっと逮捕される者が出ても良かったと思う。とにかくやっていることが完全に犯罪である。そして、刑法犯は訴えがなくとも親告罪でない限り、捜査・逮捕ができるのだ。
こういうやつらは全員捕まえて重労働の刑にでもすればいいと思う。不思議なのは、どうして犯罪被害にあったものが、直ぐに警察に通報しないのか。私なら即通報するだろう。最後には、シナリオを書いた人間が分かるのだが、最後まであまりいい感情は持てなかった。これは「イヤミス」としては成功していることになるのだろうか。
☆☆
※初出は、「風竜胆の書評」です。