文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

書評:東京のちいさな美術館めぐり

2018-09-29 13:03:05 | 書評:学術・教養(人文・社会他)
東京のちいさな美術館めぐり
クリエーター情報なし
ジービー

・浦島茂世


 本書を読んで最初に思ったのは、東京には、こんなに美術館があるのかということ。さすがは日本の首都である。地方にはさすがに、県立の美術館のようなものはあっても、それほどたくさんの小さな美術館のようなものは存在しないと思う。ページをめくってみると、なかなか個性的な美術館が並んでいる。肝心の入館料の方はリーズナブルで、無料のところも割とあるようだ。

 ただこれだけ美術館があっても実際に行ったところは少ない。その理由は単純明快。存在しているのを知らなかっただけだ。行ったことがあるのは太田記念美術館(p46)くらいか。これとて、歩いていてたまたま見つけただけだ。他には、相田みつを美術館(p35)を外から見たくらい。こちらは近くに用事があったときに、そこにあることに気が付いたが、時間がなくて中まで入るのは至らなかったのは、今思っても悔やまれる。

 私が会社員時代には、出張で数えきれないくらい東京に行った。美術館へ行くのも好きなので、もしそのころこういった本があれば計画的にいろいろなところに行っていたのにと思う。今となっては、ほとんど東京に行くような機会はないだろうと思うと、とても残念だ。

☆☆☆☆

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書評:オフィスハック

2018-09-27 00:45:19 | 書評:小説(その他)
オフィスハック
クリエーター情報なし
幻冬舎

・本兌有、 杉ライカ 、(イラスト) オノ・ナツメ

 この作品を一言で言えば、会社の邪魔になるやつは消してしまえというもの。要するに会社を私物化するようなやつは粛清するのである。

 主人公は、香田大介という男。所属は合併続きで肥大化したT社の第四IT事業部第七ソリューション課、通称四七ソ。第一人事部の実行部隊として、銃を片手に悪い奴らをぶっ殺す。タイトルのオフィスハックというのは四七ソの課員の持つ特殊能力。

 香田の力はテイルゲート。気配を一定時間消すというものだ。すなわち一定時間ものすごく影が薄くなるのである。この他にもショルダーサーフ(後ろからチラ見しただけで見た内容を完全に記憶する能力)やダンプスター・ダイブ(どんなに細切れにされた書類でも復元できる)というものがある。

 とんでもなくありえないような設定だが、法律よりは社内の都合を先にしがちな日本の会社を皮肉っているような気もする。次のセリフは香田が元々働いていた部署の部長のセリフ。
<「法律とか社会常識なんて守ってたら、会社は立ち行かないんだよ。法律とか、あんなのは、建前にすぎないんだよ。お前の見てるこれが、現実」>(p15)

 まあ、実際にここまで口に出す人間は珍しいだろうが、実際には労働法違反や独禁法違反などの例は掃いて捨てるほどある。会社が人間から成り立っている以上、中には部下に滅私奉公を求める上司が出てくるのは避けられない。立場が上になると、勘違いして自分が規則だと思ってしまうのだ。コンプライアンスなんて言葉を使いだしたのも、守っていない会社が多いからだろう。

 これは香田が社内の悪人たちを粛清するときのこと。
<おれたちは全方位のコンプライアンスに配慮しながら…(以下略)>(p123)
 いや、やってることは完全にコンプライアンス超えちゃってますから(笑)。

 ライバルとして第二人事部の実行部隊の第五IT事業部第六システム運用課(通常五六シス)なんてのも出てくる。いや四七ソも五六シスのどちらもIT関係ないと思うぞ。それに部が違うのになんで人事部の実行部隊やっているんだ。この会社も日本の会社によくあるように人事部門が優位なのか。でもこんなおバカな設定の作品は意外と好きである。

☆☆☆☆

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書評:起業3年目までの教科書 はじめてのキャッシュエンジン経営

2018-09-25 09:35:26 | 書評:ビジネス
起業3年目までの教科書 はじめてのキャッシュエンジン経営
クリエーター情報なし
文響社

・大竹慎太郎

 著者は、最初サイバーエージェントに入社し、いくつかの会社を経て現在はトライフォートの代表を務めている人だ。本書は、著者の経営方法についてまとめたものである。

 本書の肝は、「キャッシュエンジン経営」ということだ。要するに事業のベースとして金の成る木を持っておいて、そこから得られるキャッシュを使って新しい分野にチャレンジしていくというのである。新しい分野では当たり外れがある。成功すればリターンは大きい代わりに失敗する確率も決して低くはない。キャッシュエンジンを持っていれば、たとえ失敗しても会社に与えるダメージを抑えられるというものだ。

 確かに、金のなる木を持っていれば日銭は入る。しかしそれだけでは夢はない。新たな分野に投資してチャレンジすることが大切なのだ。日銭を稼げる事業を持つということには賛成なのだが、幾つか気になる部分がある。列挙してコメントしていこう。

 採用で、「うちの社員はやる気がない」と嘆く会社の代表者について、
<採用の時点で「やる気のありそうな人」を採ろうとしていないのだ。>(p76)
 これは、採用する側の見る目にも関わってくると思う。見る目のない人間が「やる気のありそうな人」を採用すると、体育会系の組織になってしまい、パワハラの温床に・・・。そんな会社、私は嫌だな(笑)。

<高学歴の人材は確かに暗記型の勉強に慣れ親しんでいる>(p115)
  これは著者の偏見に過ぎない。高学歴で暗記の嫌いな人はいくらでもいる。私なども世間の標準から見れば高学歴だとみなされると思うが、昔から暗記は苦手だ。学生時代に、自分の周りにも暗記力がすごいと思った人はいなかった。理系の人間は結構暗記が苦手だと思う。そもそも理系では暗記力しかない人間は周りから評価されない。

<その上司(評者注:サイバーエージェントの新人マネージャー時代の上司)はビジネス書やセミナーに影響されやすい人で、何かをインプットすると、すぐに言動ががらりと変わる人だった。>(pp155-156)
 著者の場合は、これがいい方に行ったようだが、これってダメ上司の典型やん。私も会社勤めをしていた頃に経験があるが、本社の企画部門あたりがこれをやると、やたらとくだらないことを全社に押し付ける。その被害は甚大だろう。当然何の効果もないので、初めは威勢がいいが、そのうち尻すぼみになって消えてしまう。人に影響を受けやすい人間には、「あんた、その頭はなんのために付いているのか。」と小一時間問詰めたくなってくる。

 こんな記述もある。社員の中にビジョンを浸透させることについてだ。
<トライフォートの場合の答は、「朝礼で唱和させろ」でも「高価な額縁に入れて飾れ」でも「たまに各社員がいえるかどうかの抜き打ちチェックを行え」でもなかった。そういった頭ごなしの命令形のスタイルで、人に何らかの考え方が受け入れられることは難しい。>(p104)
 この考えかたには賛成だ。とにかく上の方から何かが押し付けられてくると、意味がよく分からない現場の方ではそんな対応をしがちだろう。納得感がなければ、そしてどんなにいいビジョンでも、神棚に飾ったり、意味も分からず唱えるお経のようになってしまいかねない。

 また経営学の教科書によく出てくるPDCAサイクルについて、次のように言っている。
<だから業務は、「PDCAではなくCPDAの順番で回せ!」が正しい回答なのである。>(p392)
それはPを頭の中でウンウン考えて的外れなものとするより色々な人の知恵を借りた方がいいということのようだ。しかし、これは、Pをどう定義するかの問題だろう。そもそもPがないのにどうチェックするんだとツッコミたくなるし、まともなところなら、色々と調査したうえでPを立てるはずだ。

 本書全体を通して、著者が最初に就職したサイバーエージェントの藤田晋氏に心酔しているように思える。それではどうして転職や独立をしたのか。おそらく最初の目標が起業するということだったのだろうが、そのあたりをもっと知りたいところだ。特にトライフォートを起業して1年で多くの社員が退職したことが辛い体験(p397)だったのならなおさらだ。人が辞めるのは辛いが自分は辞めてもいいというのは説明不足だと感じてしまう。

 しかし、キャッシュエンジン経営の例として「電通」を挙げている(p58)のはかなり気になる。あれだけ世間で騒がれた会社だ。キャッシュエンジン経営をするには社員の多大な犠牲が必要なのかとつい思ってしまう。トライフォートの労働条件(賃金、勤務時間、休暇など)をちゃんと最初に示したうえでないと、どうも眉に唾をつけて話を聞くようになってしまうのだ。

 本書を読んだ感想としては総論は賛成なのだが、各論を見ると気になる点が色々あるというところか。

☆☆☆



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書評:七夕の雨闇: ―毒草師―

2018-09-23 12:51:57 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)
七夕の雨闇: ―毒草師― (新潮文庫)
クリエーター情報なし
新潮社

・高田崇史

 QEDシリーズと言えば高田崇史の人気シリーズだが、そこからのスピンオフとして始まったこのシリーズもこれが4作目。今回のテーマは七夕だ。

 七夕と言えば、牽牛と織姫が1年に1回会える日ということで、ロマンチックな響きを感じる人が多いだろう。ところが、本書によれば、七夕は不吉の象徴であり、牽牛と織姫が出会えば悪いことが起きるという。

 今回の事件の舞台は京都。能の竹川流宗家である竹川幸庵が稽古場で毒殺される。しかし、幸庵は、あらゆる毒物に耐性のある解毒斎体質だった。なぜ解毒斎の幸庵が毒殺されたのか。これが一連の連続殺人の幕開けとなった。事件の背景には、まるで糸杉柾宏の漫画、「あきそら」のような世界が」広がる。

 この事件に乗り出したのが「毒草師」の御名形史紋というわけである。史紋は助手でやはり解毒斎体質の神凪百合、そして今回の事件の依頼人の萬願寺響子と雑誌社「ファーマ・メディカ」での指導係西田真規の4人は京都に向かう。響子は事件に巻き込まれた竹川家の親戚の星祭家の娘と友人であり、そのことから御名形の協力を仰ぐことになったのである。星祭家は、「機姫神社」という神社で、独特の七夕祭りが伝わっていた。しかし、最後の方で御名形本人も言っているように、今回の事件には毒草には関係がない。

 御名形によって解き明かされる七夕についての蘊蓄はすごいと思うが、どこか眉に唾をつけて読んだ方がいいかもしれない。ましてやこれが現実の事件に結びつくとは。でもちょと信じてしまいそうになるのは著者の筆力か。

 ところで、この萬願寺響子、「私は根っからの理系」といいながらも、趣味の四柱推命を東洋の統計学だと訳の分からないことを言う。統計学というなら、いつ誰がどんな母集団からどの程度のサンプリングをして法則を抽出したのか。昔はコンピュータなんてなかったし、ビッグデータという概念すらなかった。この一件から、実は彼女が「根っからの理系」ではないということが分かる。

 またQEDシリーズのスピンオフ作品だけあって、話の中にあちらの主人公である桑原崇らしき人物が出てくる。また桑原の相方である棚旗奈々に至っては、話の中だけでなく最後の方にちょっとだけ登場している。このあたりもこの作品の魅力ではないかと思う。

☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。


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丸亀製麺で昼食

2018-09-21 23:55:53 | 旅行:広島県
 今日は、近くの書店に本を買いに行き、「史上最強の内閣」、「虐殺器官」、「チャンピオンRED11月号」を仕入れてきた。その後昼食を摂るため丸亀製麺に立ち寄った。今日は小雨も時折降っており、昼時も少し過ぎていたので、そう混んでなかった。食べたのは、うどんに、海老天とカボチャ天を足したもので合計540円。

 安いのはいいのだが、何回行っても、うどんの種類の注文方法がよくわからん。



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書評:本物の読書家

2018-09-21 09:12:54 | 書評:小説(その他)
本物の読書家
クリエーター情報なし
講談社

・乗代雄介

 「本物の読書家」では、語り手である私が、あまりなじみのない大叔父を老人ホームに送り届ける列車内でのエピソードが描かれる。大叔父は川端康成からの手紙を持っているとの噂があった。列車内で同席した関西弁の奇妙な男・田上。彼はやたらと文学に詳しかった。作中に挿入される名作の一節。そして明かされる康成の名作「片腕」のある秘密。

 「未熟な同感者」では、主人公の阿佐美が入ったゼミ。ゼミでは文学談義が行われる。ゼミ生は男1人に女3人。そこの「先生」には奇妙なクセがあった。ゼミの途中で必ずトイレに行くのだ。それは授業を円滑に進めるため、女子大生を前にして抑えきれなくなった性欲を処理しに行くのだとの噂されている。そしてゼミ生の美少女・間村季那。彼女にもある秘密があった。

 全編を通じて、色々な名作の一節が挿入され、あたかも作者が「本物の読書家」であることを主張しているかのようだ。しかしそれは本当だろうか。作中に次の一節がある。

<世間一般の言い方に当てはめるなら、私はささやかな読書家ということで間違いなかろうと思う。しかし読書家というのも所詮、一部の本を読んだ者の変名に過ぎない。>(p10)

 たしかにあれだけの数の本が毎日のように出版されているのだ。いくら長生きをしても全部を読めるわけではない。例えば私の部屋だが、まだ読んでない本が何百冊単位で積み上げてある。処分も時にはしているのだが、減るスピードよりは増えるスピードの方が圧倒的に速い。全部の本を読むことはできないという意味でこの主張には賛成である。

 しかし、世の中で「読書家」と呼ばれる人たちの間には大きな問題があると思う。それは、読む本が、文学作品や古典が中心になっており、理工系の本や専門的な本を外していることである。まさか、こういった本は読む価値がないと思っているのではないと思うが(思っているとしたら自分で世間を狭くしているだけだと思うのだが)。仮に読んだとしても、通俗的な一般書くらいである。読んでいると、読書の対象は文学だけではないということを、声を大にして主張したくなってきた。

☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

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放送大学の教材到着

2018-09-20 16:10:15 | 放送大学関係
 今日放送大学の教材が来た。そろそろ2学期の教材が届いているという情報がブログやツイッターなどに上がっていたので、システムWAKABAで調べてみた。18日に発送となっていたので、たぶん今日あたり来るだろうとおもっていたので予想通りだった。受け取った教材は「生理心理学」と「社会心理学」の2冊とそれぞれの通信指導問題。後は番組表だが、最近はネットで視ているのであまり役に立たないかな。

 いつも、試験前になってあわててテキストを読み直すような体たらくだが、とにかく人名を覚えるのが苦手だ。心理学の分野では私にとってはあまり馴染みのない人ばかり出てくるので困る。
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書評:黒の扉は秘密の印 (第二の夢の書)

2018-09-19 08:42:53 | 書評:小説(SF/ファンタジー)
黒の扉は秘密の印 (第二の夢の書)
クリエーター情報なし
東京創元社

・ケルスティン・ギア、(訳)遠山明子

 「紅玉は終わりにして始まり」の著者の新シリーズ第二巻。ジャンルはロマンティック・ファンタジーということだ。三部作なので、この巻がちょうど中間地点に当たる。ヒロインはリヴという15歳の女の子。ヘンリーという彼がいる。

 この物語では、「夢」が重要な役割を果たす。登場人物たちは、現実の世界のみならず、夢の世界でも互いに関係を持っているのだ。そして夢の世界では、彼らは魔法を使ったり変身できたりする。ところが、この夢の世界に「北の死の将軍」と名乗るななんだか訳の分からないおっさんがうろつきだした。そしてリヴの妹のミアに夢遊病の症状が出るようになり、夢うつつでリヴを窒息させようとしたり、窓から飛び出そうとしたり。

 さらには、シークレシーのブログという学校裏掲示板のような存在があり、なんだかやたらとリヴたちの行動に詳しい。彼女の母親のアンがラブラブなのがアーネストという男性なのだが、その母親のラクダー(これはあだ名で、本名は、フィリッパ・アドレード・スペンサー)がまさに因業ババアと言ってもいいような存在で、やたらとアンやリヴたちを目の敵にする。その仕返しにリヴとミアがラクダーが大事にしているミスター・ピーコック(単にツゲの木を孔雀の形に剪定しただけ)を薪にしてしまったとき、誰も知らないはずの犯人を名指しでブログに掲載するくらいなのだ。

 この巻での謎は3つだ。一つ目は「死の将軍」とは誰かということ。二つ目はリヴの妹であるミアの夢遊病の原因は何かというもの。そして三つ目は、ブログの管理人であるシークレシーの正体は何者かということである。このうち最初の2つはこの巻で答えが出るのだが、3つ目のシークレシーの正体については次巻のお楽しみということである。でもブログに書かれている内容からは割と身近な人間がその正体のような気がするのだが。

 1巻を読んでないので、話に入り込むのに時間を要した。1巻のあらすじのようなものをつけたらどうか。読者がみんな1巻から順番に読むとは限らない。途中から読んで面白かったから、遡った巻も読んでみようという読者も結構いるのではないかと思う(少なくとも私はそのタイプだ)。ちょっとしたことで、読者が離れていってはもったいないと思う。

☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。


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書評:三十一文字のパレット

2018-09-17 11:22:21 | 書評:学術・教養(人文・社会他)
三十一文字のパレット (中公文庫 (た54-1))
クリエーター情報なし
中央公論新社

・俵万智

 「サラダ記念日」で一世を風靡した俵万智によるエッセイ集。実家の本棚の隅にあった。ちょっと昔の本だが、昨年亡くなった父が退職後に短歌をやっていたので、参考に買ったのだろう。もともとは「中央公論」に、5年あまり連載したものを集めたもののようだ。その趣旨は、一つのテーマに沿って、毎月3首ほどの現代短歌を紹介するというものだが、厳密に3首に固定しているわけではない。

 2首しか紹介していない回もあるし、同じ作者の歌を紹介する場合には3首を超えて紹介している場合もある。また、現代短歌といいながらも、与謝野晶子や若山牧水などが紹介されていたりもする。それにしても、たった三十一文字の世界の広いこと。歌詠みは、このわずかな文字数の中にいろいろな思いを込めて言葉を紡ぐ。

 解説する方も、よくあの短い文字数にあのような解説を付けられるものだと感心する。私など不調法の極みのような人間なので、とてもそのような真似はできない。おそらくは自分なりのフレームワークがあり、それに照らして解釈しているのだろうと察する。だから100%作者の心とシンクロしているわけではないだろうが、作品は一度公表されるとその解釈は読み手にゆだねられるのだ。

☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。
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書評:地理2018年09月号

2018-09-15 08:26:50 | 書評:その他
地理 2018年 09 月号 [雑誌]
クリエーター情報なし
古今書院


 高校までは、地理は最も嫌いな科目の一つだったのだが、なぜか嵌ってしまったこの雑誌。今月号の特集は「都市×若者×観光」だ。本誌は、これに関する論文6編が収録されている。ここでいう都市とは東京大都市圏のことだ。本特集は、この大都市圏においての若者の行動を主として観光・レジャーやSNSの利用といった観点から分析している。

 この雑誌を読むと、東京大都市圏の若者は、遊んでばかりいるような感じがする。確かに、そこには若者を引き付けるものが沢山あるだろう。勉強どころではないのだ(ダメやん!)。勉強するよりは、テーマパークに行ったり、オタクの聖地を巡ったり、夜遊びをしたり。その方が楽しいに決まっている。でもそればかりではないような気もする。その気になれば、都会の方が学びには有利なのだ。私は、今の東京大都市圏の若者たちに一言言いたいと思う。「君たち、もっと勉強せーよ!!」(笑)

 ところで、最初に収録されている記事「第17回世界湖沼会議に向けて」という記事はなかなか興味深かった。恥ずかしながら私はこのような会議があることを知らなかったのだが、この記事の著者からして、「実際私も数年前までその存在を知らなかった。」(p4)と書いているくらいだ。門外漢の私が知らなかったのも当然である。しかし、マスコミはやれオリンピックだ、野球だ、サッカーなどはあれだけ報道するくせに、こういったことは殆ど報道されない。少なくとも私は見た記憶がない。こんなところに国民の文化度といったものが現れるのだろう。(まあ、どこの国も似たりよったりだが)


☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。


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