古代史は面白い。なぜなら当時の出来事と現代の間には深い谷が横たわっており、なかなか本当のことが分からないからだ。もちろん分かることもあるが、それはかなり偶然の要素が強い。古代史の謎を解き明かすには、想像力は不可欠なのだが、もちろん客観的な証拠が見つかることは少ない。
古代史というと日本書紀や古事記等を思い起こす人が多いだろう。しかしあれには色々な疑問点がある。いずれにしても神話から始まっているようなものがまともな歴史のはずがない。おまけにあの歴史書は勝者によって書かれたもの。自分達に都合の悪いことは消されるか改変されているおそれがある。しかし書かれたものに拘る人にはあれらを金科玉条のように扱っている人が多いのも確かだ。
だいたい『日本書紀』は、嘘を嘘で塗り固められていながら、これまでだれも嘘を見抜けなかったのだから、嘘の宝庫といってよく(p102)
これが著者の立場だろう。まあ戦前ならともかく、今の世に神話の部分を信じ込んでいる人はそういないと思うが。
著者の推理を少し紹介すると、そもそも乙巳の変から始まる大化の改新について、討たれた蘇我氏こそが改革を進める側で、クーデターを起こした中大兄皇子と中臣鎌足こそが守旧派ではなかったのか。
この他にも、古代史に関して色々な疑問が提示されている。どこまで関さんの推測が当たっているのかは分からないが、自分の頭で色々な謎を考えてみるのも古代史ファンには面白いだろうと思う。
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